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6_幕間
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熱田が灯に響を託して、60分程。待ち合わせ場所にはすでに彼がいた。
「よー」
軽いノリで手を振る。すると、それに気付いた彼は苦笑した。
「相変わらずすっげー服だな。赤と白と黒と金って」
「職場が大人しカジュアルだから私服は反動かもなー。お前いつもスーツだよな、そういや」
「これマジで女ウケいいんだよ。仕事用とは別」
熱田は「だろうなー」と笑いながら、彼の隣に座る。グラスに映る彼の顔は、酔っているようには見えなかった。
「で、誠司。何が聞きたいんだっけ」
「……灯を連れてったあいつだよ。水族館でも二人でいたし」
グラスの中の氷が揺れる。中の液体の色味に、ウイスキーのロックか。そういえばこいつも、昔からべらぼうに酒が強かった。だからこそ、色々な女を持ち帰れるわけだが。
熱田が持っていた携帯が震えて、彼は「おっ」と声を出した。誠司は差し出された携帯を受け取ると、早速画面に目をやった。それは、灯と熱田とのメッセージのやりとりだった。目が、歪む。熱田も顔を寄せた。
「あ、なんだー無事付き合うことになったんだ」
「お前、やっぱりあいつと知り合いなわけ?」
「幼馴染」
誠司は「やっぱお前の差金かよ」と呟く。
「俺、お前が何をしたいのかさっぱりわからないよ」
「だろうなー、俺にもわかんねえ!あはは!やりたいようにやってるだけだし」
熱田が注文した酒が届く。真っ赤だった。
「灯が……俺の、灯が」
グラスが熱田の口へ向かう。熱田自身は、横目で誠司をみていた。その顔は、嫌味なく笑っている。
「もうお前のじゃなくなったわけだ」
「俺のだよ!あいつは……っ、俺のだ……」
「じゃあ何で浮気なんかしたわけさ」
初めて、熱田の声が冷えた。それに驚きながらも、誠司は「本当に遊びだった」と返す。熱田はそんな誠司を呆れたように見た。
「まあお前の性格クズさは俺もよく分かってるけどさあ。あくまで見せ物として楽しいだけで、それが俺の大事なもんに害がいってるならそれはそれで看過出来ないってこと」
「お前、まさかお前も」
「あー、なんか邪推してっだろ。大事っつってんじゃん、それ以上でも以下でも以外でもねえよ」
グラスが空く。それでも、表情を変えることはない。
「っ、そもそもあれも。お前が灯にバラしたんだろ。そうじゃなきゃあいつが気付くわけない」
「いや、あかりん自身が辿り着いたよ。俺はそのピアスのブランドと販売時期を一緒に調べたのと、『どう思う』って聞かれたから『あかりんの勘通りに動けばいい』って言った。それだけ」
熱田を責めたいわけではないし、責めたところでどうにもならない。それでも、感情のやり場が見付からない。それだけだ。誠司は改めてグラスを煽ると、改めて同じものを注文した。
「反省は、したんだ。まさかあんな怒るなんて思ってもみなかった」
「浅はかー」
「分かってる。でも俺は、あいつを逃したくなかった。だから、躾けてたのに」
過去を逡巡させる。それでも、もう無意味なのに。
ぐらり、と誠司の体が揺れた。そのまま、机に突っ伏する。それを見ても、熱田はとくに驚かない。いつものパターンだ。熱田は店員を捕まえ、自分の追加注文をした。
「ねえおにーさん、こいつ何杯目?」
「ああ……多分十かなあ」
「馬鹿だねー」
顔に出ないだけで、許容量は超えていたのか。熱田は誠司の髪に触れる。響とも灯とも違う、硬めの髪。流行りのマッシュスタイルは……たしか灯の好きなアイドルの模倣だったはずだ。
「見せ物としては、楽しんでるんだよ?これでも」
その呟きは、誠司には届かなかった。
「よー」
軽いノリで手を振る。すると、それに気付いた彼は苦笑した。
「相変わらずすっげー服だな。赤と白と黒と金って」
「職場が大人しカジュアルだから私服は反動かもなー。お前いつもスーツだよな、そういや」
「これマジで女ウケいいんだよ。仕事用とは別」
熱田は「だろうなー」と笑いながら、彼の隣に座る。グラスに映る彼の顔は、酔っているようには見えなかった。
「で、誠司。何が聞きたいんだっけ」
「……灯を連れてったあいつだよ。水族館でも二人でいたし」
グラスの中の氷が揺れる。中の液体の色味に、ウイスキーのロックか。そういえばこいつも、昔からべらぼうに酒が強かった。だからこそ、色々な女を持ち帰れるわけだが。
熱田が持っていた携帯が震えて、彼は「おっ」と声を出した。誠司は差し出された携帯を受け取ると、早速画面に目をやった。それは、灯と熱田とのメッセージのやりとりだった。目が、歪む。熱田も顔を寄せた。
「あ、なんだー無事付き合うことになったんだ」
「お前、やっぱりあいつと知り合いなわけ?」
「幼馴染」
誠司は「やっぱお前の差金かよ」と呟く。
「俺、お前が何をしたいのかさっぱりわからないよ」
「だろうなー、俺にもわかんねえ!あはは!やりたいようにやってるだけだし」
熱田が注文した酒が届く。真っ赤だった。
「灯が……俺の、灯が」
グラスが熱田の口へ向かう。熱田自身は、横目で誠司をみていた。その顔は、嫌味なく笑っている。
「もうお前のじゃなくなったわけだ」
「俺のだよ!あいつは……っ、俺のだ……」
「じゃあ何で浮気なんかしたわけさ」
初めて、熱田の声が冷えた。それに驚きながらも、誠司は「本当に遊びだった」と返す。熱田はそんな誠司を呆れたように見た。
「まあお前の性格クズさは俺もよく分かってるけどさあ。あくまで見せ物として楽しいだけで、それが俺の大事なもんに害がいってるならそれはそれで看過出来ないってこと」
「お前、まさかお前も」
「あー、なんか邪推してっだろ。大事っつってんじゃん、それ以上でも以下でも以外でもねえよ」
グラスが空く。それでも、表情を変えることはない。
「っ、そもそもあれも。お前が灯にバラしたんだろ。そうじゃなきゃあいつが気付くわけない」
「いや、あかりん自身が辿り着いたよ。俺はそのピアスのブランドと販売時期を一緒に調べたのと、『どう思う』って聞かれたから『あかりんの勘通りに動けばいい』って言った。それだけ」
熱田を責めたいわけではないし、責めたところでどうにもならない。それでも、感情のやり場が見付からない。それだけだ。誠司は改めてグラスを煽ると、改めて同じものを注文した。
「反省は、したんだ。まさかあんな怒るなんて思ってもみなかった」
「浅はかー」
「分かってる。でも俺は、あいつを逃したくなかった。だから、躾けてたのに」
過去を逡巡させる。それでも、もう無意味なのに。
ぐらり、と誠司の体が揺れた。そのまま、机に突っ伏する。それを見ても、熱田はとくに驚かない。いつものパターンだ。熱田は店員を捕まえ、自分の追加注文をした。
「ねえおにーさん、こいつ何杯目?」
「ああ……多分十かなあ」
「馬鹿だねー」
顔に出ないだけで、許容量は超えていたのか。熱田は誠司の髪に触れる。響とも灯とも違う、硬めの髪。流行りのマッシュスタイルは……たしか灯の好きなアイドルの模倣だったはずだ。
「見せ物としては、楽しんでるんだよ?これでも」
その呟きは、誠司には届かなかった。
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