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長内編

第九話 焦らされて火照る

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 昔々、というフレーズが好きだった。
 みんな幸せに暮らしましたとさ、で終わる物語が好きだった。

 つまり、童話のような。絵本のような。

 将来的に、絵本作家なり、児童書なりの作家になりたい夢があり、今は生活費稼ぐためにファミレスでアルバイトしながら生活していることを話した。
 雪道さんは興味深そうに、目を爛々とさせている。

「絵本は何が好き?」
「男なのにって思われるかもだけど、かぐや姫!」
「ああ、君はロマンある人なんだね。かぐや姫が好きだって堂々と言う男には確かに初めて出会った。だけど、君からはロマンや夢を感じるね」

 雪道さんはふふ、と笑ってから、僕の手にキスをまたしたりスキンシップをやめる気配がなかったが最初の頃より、苦手じゃなくなっていた。
 この人は僕が怖がると、見透かして控えてくれる自信が出てきたからだ。
 怖がる行為を決してしない人だと。

「雪道さんはどうして作家になったの?」
「書きたい物を書き続けていたら、奇跡的になれたんだ。手に入れたチャンスは逃がさないようにそこから、ずっと書き続けたり、読み続けたりしているよ」
「そうなんだ、素敵だね、やっぱり夢が叶うっていうのは!」

 すっかり油断しきって、笑いかけると雪道さんから匂いの強さを感じる――あれ、あれれ? 雪道さん?
 ラットしているのかな、雪道さんがラットすると、僕も釣られちゃうんだけど……。

「物欲しげな顔で見つめてくるね、でも、腰が痛いんだよね?」
「じゃあラットやめて、あの、っぞくぞくしてたまらなくなる……何も考えられなくなる」
「……寝室にいこうか、密くん」

 雪道さんは微苦笑を浮かべてから、僕の腰を抱き支えるようにして、寝室へ案内する。
 寝室はシンプルな作りで、寝るためだけの部屋という感じであり殺風景だった。

「大丈夫、今日は抱かないよ。ゴムも生憎切らしていてね、今度君がくるまでに用意しておくよ。君を可愛がるためのたくさんのもの」
「雪道さん、っはあ、だか、ら、ラットやめ……ちんこ、痛くなる」
「張り詰めているね」

 雪道さんがベッドに腰掛けると、もう理性が切れた。
 ゆっくりとそそり立つ雪道さんの肉棒が露わになると、僕は跪くようにして、そこへむしゃぶりついた。
 雪道さんは驚いた顔つきから、艶めいた吐息とともに扇情的な表情へと変化し、僕の頬から喉をなでる。
 むしゃぶりつき、舐めて雪道さんの精子を欲しがる僕に、雪道さんはそうっと足を伸ばして僕自身を軽く踏んだ。

「や、う、ああっ」
「勃起したことがないわりにはなれているんだね」
「椿に、慣らされた」
「そうか……そこは嘘でもいいから、あなたのために頑張ったとか言うものだよ。ベッドで他の男の話題をするのは、よくないな、虐めたくなる」
 ぐりぐりと僕の陰茎に雪道さんは、足を擦りつけてからぎゅっぎゅっと踏みつけ、僕はその衝動で達してしまった。
 ぜぃぜぃと呼吸整えていると、雪道さんは昂ぶった自身を僕の口内へ緩く出し入れしようと、僕の頭を掴んで咥えさせる。

「舐めてるだけでも気持ちいい? 私は気持ちいいよ、密くんのお口」
「ふぁ、ああ、うう」
「ああ、そうそう、歯を立ててはいけないよ。ッ、中に、出すよ」

 びゅるっと口内へ精液が注ぎ込まれると僕はぼんやりとその味を確かめてしまうほどに、色に狂っていた。
 ラットの色がますます強くなり、それだけで濡れていく、欲しくなる。
 椿のも大きくかったけど、雪道さんのこの堅いので抉られたらどうなっちゃうんだろう、とどきどきする。

「ゴムはないから、駄目だよ」
 物欲しげな顔とやらを相当していたらしく、僕に再度忠告するも、雪道さんのラットは消えないから僕は耐えきれずその場で自慰をし始めてしまった。
 はしたない、飽きられると思ったが、雪道さんは食い入るように僕を見つめた。

「ああ、なんて可愛い子なんだろう、密くん……私のラットでまたヒート起こしてしまっているんだね? 抑制剤もきかないほどに」
「あっ、雪道さん、雪道さん、おねが、い、欲しい、欲しいんだよ……」
「どうしても私とシたいかね?」
「うん、雪道さん、とぉ、えっち、したいぃ」
「えっちはできないけれど、この光景はずっと見ていたいなぁ、ほら手伝ってあげよう。私が見ていてあげるから、存分に慰めるといい」

 僕を膝の上に乗せるなり、雪道さんは僕の乳首をこりこりと弄りはじめ、そこからの刺激を受けながら僕は手で慰める速度を速くし達してしまった。

 自慰をたくさんしてから分かったのは、雪道さんの理性は鉄壁だということ。
 椿なら「面倒だから生でさせろ」とか言いそうなのに、雪道さんはひたすら、拒んだ。
 ただラットするのは絶対にやめず、僕の誘発される発情を楽しんでいる様子だった。
 かえって雪道さんとシたくてシたくて、仕方なくなっていく。

 雪道さんは指を挿れたりしてくれて、慰めるのを手伝ってくれたけれど、それだけじゃ足りない。
 また今度、会いたい。

 そう思わせるように仕組んだのかもしれない、雪道さんは心を落としたいと言っていたのだから。
 僕は帰りに送って貰い、玄関でたくさんキスをして貰い、自室で籠もるなり雪道さんがいなくなるとベッドにふらふらと近寄り死んだように眠る。ラットの名残で、艶っぽい夢を見ながら、自身を気づけば扱いていた。

 朝起きてからとんでもない醜態を見せ続けてしまったと、嘆息をつく。

 恋人でもないのに、恋人特有の甘さばかり教えて貰った気がする、雪道さんからは。
 椿からは、現段階では身体で気持ちよくなるヨさだけを教えて貰った。

 なるほど、二人で一つみたいな感覚に陥るのは納得する。

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