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第1章 アラーテ立志編
第13話:ストロングホープ
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私は思わずそう口にしていた。
レベル100を目指す、となると今からどれだけ時間がかかるか想像がつかない。
MSOは意外とレベル上げが大変なことで有名だし。
「わしもアラーテに同意じゃな。レベル100は途方もなさすぎる」
「うーん……僕はリーダーとして、皆の生存と安全を第一に考えた上で言ってるんだけど……」
リストはそう言い、顔を曇らせた。
状況を見守るコヤは何の話をしてるのか分かってないようで、ぽかーんとしていた。
まあそりゃそうだよね、MSO初心者だし。ぽかーんとしてるその顔かわいいなあ。
「リストの気持ちは分かる。じゃが、リスクを管理することと、過度に恐れて挑戦を先延ばしにすることは違うと思うのじゃ」
「まあそれも一理あるね……ジージならどうする? さすがに今は皆レベルが低すぎるから、レベル上げは避けられないと思ってるんだけど」
「ふむ……レベル30を目指すのはどうかの?」
レベル30は逆にちょっと低くない? と私は思った。
いけなくもないけど、絶対にHPをゼロに出来ない状況を考えると、レベル30でダンジョンに挑むのはちょっと怖い。
「駄目だよレベル30は。低すぎる」
リストも同意見だったようで、即座に言葉を返した。
「ふむ……ならどうすればいいかのう」
「じゃあさ、間をとってレベル50はどうかな? きりがいいから目標にしやすそうだし」
頃合いを見計らって私は発言してみた。これならどうだろう。
「レベル50……そうじゃな。レベル100よりは達成しやすい。わしはアラーテに賛成じゃ」
「レベル50だとちょっと不安だけど……まあいいか。何かあったらすぐに街や村に戻ればいいしね。コヤはどう?」
「ウチは皆に合わせるで! 初心者やから何も分からん!」
コヤは明るい口調で言った。分からない、と正直に言えるあたりがきっとコヤの魅力なんだろうなぁ。
「よし、じゃあ全員レベル50到達を目指してレベル上げをして、それが終わったらダンジョン攻略に移ろう。この辺りはメタスラの入れ食いスポットっぽいから、基本的にはこの辺りでレベル上げをしよっか」
「賛成じゃ。そして、ここがメタスラの入れ食いスポットだと他のプレイヤーにバレない立ち回りとした方がいいとわしは思う。他のプレイヤーが沢山来ると狩れるメタスラの量が減って、レベル上げの効率が落ちるからのう」
「そうだね。じゃあ立ち回りを意識しつつ、メタスラを狩ろう。あと、これからはこの4人でずっと戦っていくことになるから、戦いの際のフォーメーション決めも必要になるね」
「フォーメーションは戦いの中で自ずと形成されていくものじゃろうて。レベル上げも兼ねて、早速4人でモンスターと戦ってみるのはどうかの?」
「いいね、そうしよう」
リストとジージの話し合いで、次の行動がすぐ決まった。
うおおお、うちのパーティーの男性2人はなんかめちゃくちゃ優秀だ!
私とコヤも置いてかれないようにしないと!
「わん! わん! がるるる……!」
その時、タイミングよく、鳴き声とともに私たちの前に1体のモンスターが登場した。真っ黒の大型犬、【ブラッグドッグ】。Dランクのモンスターだ。
正直全然強くない。故に、私たち4人揃っての初陣には最適な相手と言えた。
「よし、じゃあまずはあのモンスターから行くよ!」
リストの掛け声とともに、私たち4人はブラッグドッグへ勢いよく攻撃を仕掛けた。
◆
パーティーを結成し、私たちが本格的にレベル上げを開始してから2週間が経過した。
パーティーの名前は、ジージの発案で『ストロングホープ』に決定した。強かな希望、という意味だ。
HPがゼロになったら死んでしまうという状況下でも、強かに、希望を持って戦う強い意志が込められている。
うーん、かっこいい! さっすがジージ!
この2週間、私たち4人は休憩時間以外ずっとアクティブエリアでモンスターを狩り続け、ひたすらレベルを上げる時間が続いた。
当然メタスラも狩りまくった。恐らく30体は狩ったんじゃないだろうか。
頑張ってレベル上げをした甲斐があり、ストロングホープの4人は目標のレベル50に到達した。
具体的には、私がレベル51、リストがレベル53、コヤがレベル50、ジージがレベル52。
微妙にレベルの上がり幅が違うのは、多分ジョブの違いが影響してるんだと思う。
そして、現在私たちがいるのは、『ヨルムンガルドダンジョン』というダンジョンの入り口付近だ。
この世界から脱出するための手段の1つはラスボスのインフィニティドラゴンを討伐することだが、当然おいそれと会えるわけではない。
インフィニティドラゴンが巣食うのは、『ラグナロクダンジョン』というダンジョンの最新部。
そしてラグナロクダンジョンへ侵入するためには、まず8つのダンジョンを攻略して陥落させないといけない。ヨルムンガルドダンジョンは8つのダンジョンの内の1つだ。
そしてZを見ている限り、この仕様はデータリセット後も全く変わっていないらしい。
ちなみに最初のダンジョン攻略にヨルムンガルドダンジョンを選んだのには2つ理由がある。
1つ。レベル上げをしていた場所から1番距離が近いダンジョンだったから。
2つ。私とリストがデータリセット前にヨルムンガルドダンジョンへ足を踏み入れたことがあるから。
Zを見ている限りダンジョン内の様相は大きく変わっているらしいが、とはいえ一度攻略を経験したことがあるダンジョンなら、以前の経験が役立つこともあるだろう、と私とリストは判断したのだった。
「いよいよダンジョン攻略やなぁ」
私の傍に佇むコヤがぽつりと言った。
コヤはこの2週間のレベル上げの中で、ますますMSOのバトルの感覚を鍛えていた。動きがめちゃくちゃ良い。
レベル50になって強力なスキル攻撃を幾つも習得したことだし、頼りになってくれること間違いなしだ。
「僕たちはこの2週間、ひたすらバトルをして腕を磨いてきた。必ずダンジョンを攻略出来るよ」
「意思あるところに道は開ける。ストロングホープなら、どんな困難でも乗り越えられるわい」
リストとジージが続けて言う。私は大きく頷きを返した。
レベルアップに伴い、私たち4人は防具と武器をがらっと新調し、性能を大幅に向上させた。
現在私が纏っているのはスピリットファイターシリーズ一式、装備しているのはハイパーフィストグローブ。
黒字に白いラインが入ったカンフー服のような見た目で、グローブの色は漆黒だ。
攻撃力、そして防御力は2週間前とは比べ物にならないほど上がってる。これならきっと、いける。やれる。
「よし、じゃあ行こうか」
リストが言い、私たち4人はヨルムンガルドダンジョンの入り口に向かった。
ダンジョンの入り口には見上げるほど大きい金色のゲートが佇んでいる、というのがMSOではお決まりの流れだ。
そのゲートを超えると、そこはもうダンジョンの領域。否が応にも緊張が高まる……のだが、私は様子が少しおかしいことに気付いた。
「あれ? 人がいるね」
思わず呟く。ゲートのすぐ前に、1人の男性プレイヤーが座り込んでいるのが見えた。何やら頭を抱えているようで、表情は確認出来ない。
「何やろうな?」
「分からない。ジージ、どう思う?」
「トラップかもしれん。慎重に接近するべきじゃろうな」
私、リスト、コヤはジージの言葉に頷きを返し、4人で固まってそろりそろりと男性に近づいた。
「あの……大丈夫ですか?」
「!!!」
リストが恐る恐る声をかけると、まるで弾かれたように男性は顔を上げた。
はっ、と私は思わず大きく息を呑んだ。
その男性の顔が、涙でぐしゃぐしゃになっていたからだ。
な、何この人……? よく分からないけど、様子が普通じゃないよね……?
「お前たち……まさか、今からこのダンジョンに侵入するつもりか?」
男性が口を開いた。少し声がしわがれている。
「は、はい」
「駄目だっっ!!!」
リストの返答を聞いた瞬間、男性は勢いよく立ち上がって叫んだ。
「絶対に駄目だ!! 今すぐ引き返せ!!」
「え? 駄目って、どういうことですか?」
「アサシンだよ!! 他のプレイヤーを殺すアサシンプレイヤーがこのダンジョンの中に潜んでる!! 俺の仲間は……全員そのアサシンプレイヤーに殺されたんだっ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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「わしもアラーテに同意じゃな。レベル100は途方もなさすぎる」
「うーん……僕はリーダーとして、皆の生存と安全を第一に考えた上で言ってるんだけど……」
リストはそう言い、顔を曇らせた。
状況を見守るコヤは何の話をしてるのか分かってないようで、ぽかーんとしていた。
まあそりゃそうだよね、MSO初心者だし。ぽかーんとしてるその顔かわいいなあ。
「リストの気持ちは分かる。じゃが、リスクを管理することと、過度に恐れて挑戦を先延ばしにすることは違うと思うのじゃ」
「まあそれも一理あるね……ジージならどうする? さすがに今は皆レベルが低すぎるから、レベル上げは避けられないと思ってるんだけど」
「ふむ……レベル30を目指すのはどうかの?」
レベル30は逆にちょっと低くない? と私は思った。
いけなくもないけど、絶対にHPをゼロに出来ない状況を考えると、レベル30でダンジョンに挑むのはちょっと怖い。
「駄目だよレベル30は。低すぎる」
リストも同意見だったようで、即座に言葉を返した。
「ふむ……ならどうすればいいかのう」
「じゃあさ、間をとってレベル50はどうかな? きりがいいから目標にしやすそうだし」
頃合いを見計らって私は発言してみた。これならどうだろう。
「レベル50……そうじゃな。レベル100よりは達成しやすい。わしはアラーテに賛成じゃ」
「レベル50だとちょっと不安だけど……まあいいか。何かあったらすぐに街や村に戻ればいいしね。コヤはどう?」
「ウチは皆に合わせるで! 初心者やから何も分からん!」
コヤは明るい口調で言った。分からない、と正直に言えるあたりがきっとコヤの魅力なんだろうなぁ。
「よし、じゃあ全員レベル50到達を目指してレベル上げをして、それが終わったらダンジョン攻略に移ろう。この辺りはメタスラの入れ食いスポットっぽいから、基本的にはこの辺りでレベル上げをしよっか」
「賛成じゃ。そして、ここがメタスラの入れ食いスポットだと他のプレイヤーにバレない立ち回りとした方がいいとわしは思う。他のプレイヤーが沢山来ると狩れるメタスラの量が減って、レベル上げの効率が落ちるからのう」
「そうだね。じゃあ立ち回りを意識しつつ、メタスラを狩ろう。あと、これからはこの4人でずっと戦っていくことになるから、戦いの際のフォーメーション決めも必要になるね」
「フォーメーションは戦いの中で自ずと形成されていくものじゃろうて。レベル上げも兼ねて、早速4人でモンスターと戦ってみるのはどうかの?」
「いいね、そうしよう」
リストとジージの話し合いで、次の行動がすぐ決まった。
うおおお、うちのパーティーの男性2人はなんかめちゃくちゃ優秀だ!
私とコヤも置いてかれないようにしないと!
「わん! わん! がるるる……!」
その時、タイミングよく、鳴き声とともに私たちの前に1体のモンスターが登場した。真っ黒の大型犬、【ブラッグドッグ】。Dランクのモンスターだ。
正直全然強くない。故に、私たち4人揃っての初陣には最適な相手と言えた。
「よし、じゃあまずはあのモンスターから行くよ!」
リストの掛け声とともに、私たち4人はブラッグドッグへ勢いよく攻撃を仕掛けた。
◆
パーティーを結成し、私たちが本格的にレベル上げを開始してから2週間が経過した。
パーティーの名前は、ジージの発案で『ストロングホープ』に決定した。強かな希望、という意味だ。
HPがゼロになったら死んでしまうという状況下でも、強かに、希望を持って戦う強い意志が込められている。
うーん、かっこいい! さっすがジージ!
この2週間、私たち4人は休憩時間以外ずっとアクティブエリアでモンスターを狩り続け、ひたすらレベルを上げる時間が続いた。
当然メタスラも狩りまくった。恐らく30体は狩ったんじゃないだろうか。
頑張ってレベル上げをした甲斐があり、ストロングホープの4人は目標のレベル50に到達した。
具体的には、私がレベル51、リストがレベル53、コヤがレベル50、ジージがレベル52。
微妙にレベルの上がり幅が違うのは、多分ジョブの違いが影響してるんだと思う。
そして、現在私たちがいるのは、『ヨルムンガルドダンジョン』というダンジョンの入り口付近だ。
この世界から脱出するための手段の1つはラスボスのインフィニティドラゴンを討伐することだが、当然おいそれと会えるわけではない。
インフィニティドラゴンが巣食うのは、『ラグナロクダンジョン』というダンジョンの最新部。
そしてラグナロクダンジョンへ侵入するためには、まず8つのダンジョンを攻略して陥落させないといけない。ヨルムンガルドダンジョンは8つのダンジョンの内の1つだ。
そしてZを見ている限り、この仕様はデータリセット後も全く変わっていないらしい。
ちなみに最初のダンジョン攻略にヨルムンガルドダンジョンを選んだのには2つ理由がある。
1つ。レベル上げをしていた場所から1番距離が近いダンジョンだったから。
2つ。私とリストがデータリセット前にヨルムンガルドダンジョンへ足を踏み入れたことがあるから。
Zを見ている限りダンジョン内の様相は大きく変わっているらしいが、とはいえ一度攻略を経験したことがあるダンジョンなら、以前の経験が役立つこともあるだろう、と私とリストは判断したのだった。
「いよいよダンジョン攻略やなぁ」
私の傍に佇むコヤがぽつりと言った。
コヤはこの2週間のレベル上げの中で、ますますMSOのバトルの感覚を鍛えていた。動きがめちゃくちゃ良い。
レベル50になって強力なスキル攻撃を幾つも習得したことだし、頼りになってくれること間違いなしだ。
「僕たちはこの2週間、ひたすらバトルをして腕を磨いてきた。必ずダンジョンを攻略出来るよ」
「意思あるところに道は開ける。ストロングホープなら、どんな困難でも乗り越えられるわい」
リストとジージが続けて言う。私は大きく頷きを返した。
レベルアップに伴い、私たち4人は防具と武器をがらっと新調し、性能を大幅に向上させた。
現在私が纏っているのはスピリットファイターシリーズ一式、装備しているのはハイパーフィストグローブ。
黒字に白いラインが入ったカンフー服のような見た目で、グローブの色は漆黒だ。
攻撃力、そして防御力は2週間前とは比べ物にならないほど上がってる。これならきっと、いける。やれる。
「よし、じゃあ行こうか」
リストが言い、私たち4人はヨルムンガルドダンジョンの入り口に向かった。
ダンジョンの入り口には見上げるほど大きい金色のゲートが佇んでいる、というのがMSOではお決まりの流れだ。
そのゲートを超えると、そこはもうダンジョンの領域。否が応にも緊張が高まる……のだが、私は様子が少しおかしいことに気付いた。
「あれ? 人がいるね」
思わず呟く。ゲートのすぐ前に、1人の男性プレイヤーが座り込んでいるのが見えた。何やら頭を抱えているようで、表情は確認出来ない。
「何やろうな?」
「分からない。ジージ、どう思う?」
「トラップかもしれん。慎重に接近するべきじゃろうな」
私、リスト、コヤはジージの言葉に頷きを返し、4人で固まってそろりそろりと男性に近づいた。
「あの……大丈夫ですか?」
「!!!」
リストが恐る恐る声をかけると、まるで弾かれたように男性は顔を上げた。
はっ、と私は思わず大きく息を呑んだ。
その男性の顔が、涙でぐしゃぐしゃになっていたからだ。
な、何この人……? よく分からないけど、様子が普通じゃないよね……?
「お前たち……まさか、今からこのダンジョンに侵入するつもりか?」
男性が口を開いた。少し声がしわがれている。
「は、はい」
「駄目だっっ!!!」
リストの返答を聞いた瞬間、男性は勢いよく立ち上がって叫んだ。
「絶対に駄目だ!! 今すぐ引き返せ!!」
「え? 駄目って、どういうことですか?」
「アサシンだよ!! 他のプレイヤーを殺すアサシンプレイヤーがこのダンジョンの中に潜んでる!! 俺の仲間は……全員そのアサシンプレイヤーに殺されたんだっ!!」
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