妹と元婚約者が婚約発表をするようなので、現場に乗り込んでみることにしました

カミツドリ

文字の大きさ
1 / 3

1話 妹に婚約者を奪われた

しおりを挟む

「ど、どういうことですか……?」

「聞こえなかったの、姉さま? 私とハマチ様が婚約することになったの。アールカート家としては、私がハマチ様と一緒になっても問題はないし、お父様だって許してくれるはずよ」

「そ、そういうことではなくて……」


 私の婚約者の腕に見せびらかすように、自分の腕を絡めている妹。ノア・アールカートは目の前に立っていた。そして……私の婚約者であるはずの、ハマチ・ドリル公爵はそんな妹の行為を咎める気はないようだ。おかしい……絶対に間違っている。


「ハマチ様……? これは一体、どういうことでしょうか……?」

「ん? まあ、あれだ。私はお前の妹のノアを選んだ、ということになるかな」

「そ、そんな……!」

「済まないが事実なのだ」


 ハマチ様は冷静に、淡々とした口調で話していた。嘘でしょう? そんな身勝手なことが許されるわけがない。

「ごめんなさい、姉さま。嘘のように見えるかもしれないけれど、事実なのよね。まあ、自分に魅力がなかったと思って諦めてくれる?」

「ノア……! お父様やお母様がこんなことを許すわけが……」

「どうして? 同じアールカート家での婚約には違いないんだし、文句なんて出ないはずよ?」

「それは……」

「それに、ハマチ・ドリル公爵様にお父様達が逆らえるわけないでしょ?」


 それは確かに考えられた。アールカート家は伯爵家であり、ドリル家は公爵家になる。その差だけでも相当に離れているんだから、お父様達が抗議をしてくれる可能性は低い。

 ましてや、妹のノアとの婚約は成立しそうなのだから……単なる婚約破棄とは事情が異なっていた。

「済まないな、エイシャ。お前のことが嫌いになったわけではないのだが……まあ、そういうことだ」

「は、ハマチ様……」


 彼の言葉は最後まで淡々としたものだった。ノアに完全に手籠めにされてしまったのか、それは分からないけれど、彼の表情に私への愛情は一切感じられない。

「非常に残念ですが、納得する以外の道は用意されていないようですね……私はここで失礼させていただきます」

「それならば、入口まで使用人に案内させよう」

「結構です、ハマチ様のお力を借りなくても、自分の力で歩いて行けますので」

「そうか……それではな」

「失礼致します……」

「姉さま、そんなに悲しまなくてもいいんじゃないの~~? 別の人見つければいいじゃん~~! なんてね!」


 その後、部屋からは妹のノアの大笑いが聞こえて来た。私は自然と涙が零れている……こんな形で、ハマチ様と別れることになるなんて、誰が想像しただろうか?

 きっと、ハマチ様本人とノア以外は想像すらしていない事態でしょうね。もちろん、私自身も含めてね……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?

ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。 ※複数のサイトに投稿しています。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

助かったのはこちらですわ!~正妻の座を奪われた悪役?令嬢の鮮やかなる逆襲

水無月 星璃
恋愛
【悪役?令嬢シリーズ3作目】 エルディア帝国から、隣国・ヴァロワール王国のブランシェール辺境伯家に嫁いできたイザベラ。 夫、テオドール・ド・ブランシェールとの結婚式を終え、「さあ、妻として頑張りますわよ!」──と意気込んだのも束の間、またまたトラブル発生!? 今度は皇国の皇女がテオドールに嫁いでくることに!? 正妻から側妻への降格危機にも動じず、イザベラは静かにほくそ笑む。 1作目『お礼を言うのはこちらですわ!~婚約者も財産も、すべてを奪われた悪役?令嬢の華麗なる反撃』 2作目『謝罪するのはこちらですわ!~すべてを奪ってしまった悪役?令嬢の優雅なる防衛』 も、よろしくお願いいたしますわ!

真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの でもそれは裏切られてしまったわ・・・ 夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。 ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

異母妹に婚約者を奪われ、義母に帝国方伯家に売られましたが、若き方伯閣下に溺愛されました。しかも帝国守護神の聖女にまで選ばれました。

克全
恋愛
『私を溺愛する方伯閣下は猛き英雄でした』 ネルソン子爵家の令嬢ソフィアは婚約者トラヴィスと踊るために王家主催の舞踏会にきていた。だがこの舞踏会は、ソフィアに大恥をかかせるために異母妹ロージーがしかけた罠だった。ネルソン子爵家に後妻に入ったロージーの母親ナタリアは国王の姪で王族なのだ。ネルソン子爵家に王族に血を入れたい国王は卑怯にも一旦認めたソフィアとトラヴィスの婚約を王侯貴族が集まる舞踏会の場で破棄させた。それだけではなく義母ナタリアはアストリア帝国のテンプル方伯家の侍女として働きに出させたのだった。国王、ナタリア、ロージーは同じ家格の家に侍女働きに出してソフィアを貶めて嘲笑う気だった。だがそれは方伯や辺境伯という爵位の存在しない小国の王と貴族の無知からきた誤解だった。確かに国によっては城伯や副伯と言った子爵と同格の爵位はある。だが方伯は辺境伯同様独立裁量権が強い公爵に匹敵する権限を持つ爵位だった。しかもソフィアの母系は遠い昔にアストリア帝室から別れた一族で、帝国守護神の聖女に選ばれたのだった。 「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...