いじっぱりなシークレットムーン

奏多

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  Wishing Moon 6

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「ひゃっ、や……んんっ」

 指を絡めた手はいつのまにかあたしの背中に回され、波打つ下半身を押さえつけるように、ベッドに寝そべる課長はあたしの秘部を貪った。

 敏感な花芯を、熱い舌先がぱしゃぱしゃといやらしい音をたてて小刻みに揺らされ、時折ちゅっと吸い立てられる。

「はぁ、は……ぁああっ」

 びりびりとした刺激が全身に走り、欲しかった部分へのピンポイントの快感に、足がぶるぶると震える。

 大きく開かれた内股の真ん中にいる課長の、そのさらさらとした髪が、太股を擽りながら動く度に、腰からぞくぞくとしたものが駆け上ってきた。

 有能な上司にこんなことをさせているという背徳感に、そしてあたしの身体に火を付ける媚薬効果に、あたしは身をよじりながら、叫ぶ。

「あああ、気持ち、よくて……、おかしくなる!」

 とろりとした琥珀色の目が、官能的な色を強めて、じっと乱れるあたしを見ている。

 乱れることを悦んでいるようなその優しげにも見える目が、あたしの興奮を強めていく。
 氷のように涼やかな顔が、熱に満ちた男のものであることを見せつけられて、あたし悲鳴のような声で喘いだ。

「あああっ、か、ちょ……」

 はしたないほどに足を開いて、課長を股に迎えて。

 気持ちいいと腰を揺らせば、課長は濡れた舌先をくるくると回して、蜜壷の入り口を舐めた後、蜜壷の中に舌を浅く抜き差ししてくる。

「かちょそれ駄目……」

「っ!!」

 気持ちよくて腰を浮かせた際、きゅっと締め付けてしまったらしく、慌てて舌を引き抜いた課長は、首を傾げ悩ましい顔で大きく吸い付いてくる。

「やっ、やっ、か、ちょ、駄目、ねぇ」

 課長が目だけをあたしに向け、ちろちろと舌で前にある秘粒と花弁を交互に愛し始めた。

「やぁあんっ!!」

「んん……俺の名前、ん、違う、でしょ」

 ああ、課長が。あの課長が。

 あたしのそんなところを、あんな顔で舐めているなんて。

――鹿沼主任。

「ん……凄いね、溢れてくる」

「舐めながら、喋らない、でぇぇっ」

 そんな嬉しそうに、そんな愛おしそうに、愛撫しないで。
 
「名前」

 気持ちよさにどうにかなりそう。

 課長、課長、課長。


「名前は?」


 子宮の奥がきゅんきゅんするんです。
 課長にもっと愛されたいと疼くんです。

 課長にこんなことされているのを見ているだけで――

「しゅ……う、朱羽、ああ、イク、朱羽、あたしイッちゃうっ! やっ、見ないで、恥ずかしい、朱羽っ」

 理性が顔を出したまま、あたしは泣きながら一気に上り詰めようとする。


「陽菜、見て」

 ぐっとさらにあたしを折りたたむようにして、あたしの顔の近くに課長が来た。

「っ」

 羞恥に顔が赤くなる。

「よく見て」

 課長の唇と舌の動きがあたしを挑発する。

 目の前であたしの疼いてたまらないものが音をたてて、攻め立てられているのがわかる。

 細く広く変化する舌は、確実に上り詰めるあたしを加速させる。

「あっあっ、あ……あああっ」

「可愛い」

 身体がかっと熱くなる。爆ぜたようにあたしは叫んだ。

「いやらしい、やらしいっ、朱羽、あ、あああああっ」

 忍耐の終焉に、あたしは弾け飛ぶ。

 腰から頭に突き抜ける強い刺激の後で、ビクンッ、ビクンッと足が揺れる。詰まった呼吸をするあたしに、課長はふっと笑うと、手を外した。

 片一方はあたしに腕枕をするように、あたしの横に身体を横たわらせ、あたしの足をさすってきた。

 あたしは上半身が中途半端に裸で下半身はなにもつけていないのに、課長はワイシャツとズボン姿でネクタイもまだ締めている。

 ネクタイが濡れているのはなにか。ぼんやりと想像してどうしようもない恥ずかしさに内心身悶えしていると、課長があたしの名前を呼んだ。

 そしてあたしに微笑みかけると――片手の中指を蜜で溢れきっている蜜壷に差し込み、ぐちゅぐちゅと音をたてて大きくかき乱してきたのだ。

「ひゃあああ!」

 穏やかな顔での情け容赦ない攻撃。果てている途中の、それでなくとも敏感すぎる中で一番敏感なところを攻め立てられれば、否応なし去ったはずの波が戻ってくる。

「朱羽、駄目、待って、ねぇ待ってぇぇ!!」
 
 課長の腕を掴みながら、いやいやと頭を振って課長にお願いしたが、課長は蕩けたような顔でちゅっとあたしの唇に啄むようなキスをすると――、指を二本に増やして激しく抜き差ししてきた。

「やああああ!」

 狂いそうな快感の波。

 叫べば、課長が口を塞いでくる。
 泣けば、課長が目元にキスをしてくる。
 身を捩れば、頭の下にある手があたしの頭を撫でる。

 そんなひとりだけ服を着て、ひとり余裕で。
 嬉しそうに愉快そうに、あたしが乱れる様を見て。

 それって不公平だ。

 ねぇ課長。
 あたしが今課長にして貰いたいことはこの性欲をなだめることだけじゃないんです。

「ぎゅっとして……」

 あなたの顔を見ながら、あなたに包まれたい。
 あたしを惑わすその匂いで、果てる前も後もあたしの傍にいて欲しい。

「朱羽にぎゅっとされて、イキたい……」

 なにかを訴えかけるような瞳をぎゅっと細めて、課長が身体を倒すようにして、あたしをぎゅっと強く抱きしめた。

 課長のぬくもりと熱が伝わり、課長の指が繰り出す快感に余計にゾクゾクしてくる。
 やるせなくなる課長の匂いを嗅ぎながら、あたしは自分から課長の唇を求めた。

「ん……、んぅ……」

 ビクビクしながら、課長のキスに酔いしれる。
 ぎゅっとされながら何度も何度もキスをせがんだ。

 ああ、あたしこのままイキたい。

 課長と――。

 そんな思いで縋って見ると、課長が苦笑した。

「最後まで抱きたくなるから、そんな顔しないで。……ここであなたの誘惑に負けて抱いたら、正気に戻ったあなたに嫌われる」

「嫌われ……ない」

「嫌われるよ。やっと四週間の約束を貰えたんだ。その前に手を出したら、あなたに嫌われる。俺……あなたに嫌われたら生きていけない」

 熱で掠れたような弱々しい声があたしの耳に届いた瞬間、課長の指があたしのナカでくいと動き、あたしは仰け反るようにしてイッてしまった。

 途中課長がキスをしてくれて、課長の匂いに包まれた果ては、凄く幸せなもので。外部的な起因の欲情が満たされた気がした。

 このひとと離れたくない……そう思った。
 

   ・
   ・
   ・
  
   ・

 ベッドの端で膝立ちしたあたしの下に、仰向けになった課長がいる。

 あたしの背後から顔を出した課長は、揺れるあたしの腰に両手をついて、下から執拗に秘部に吸い付きながら、舌を動かしている。

 響く粘着質な音。
 突き抜ける快感。

「朱羽、駄目、駄目、またイッちゃう、朱羽、朱羽っ」

 身体がぐらぐらして四つん這いになったあたしから、課長の口は離れるどころか、あたしの秘粒を舌で転がしながら、蜜壷に指をねじ込ませるように回転させてくる。

「イク、駄目、駄目ぇぇぇぇ」

 尻を突き出すようにしてぶるぶる震えながら果てると、今度は上体だけを起こした課長が、下から手を伸ばしてあたしの乳房を揉み込み、尖りを指の腹で捏ねながら、後ろから肉丘の深層へ舌を滑らせてくる。
 逃れられないような執拗なこの攻めに、あたしは声を上げて何度も果てる。

 触られれば触られるほど感度が上がっているのに、媚薬のせいで性欲が尽きず。それを課長に畳みかけられると、疼きを感じる前に怒濤のような快楽に身を投じる。

 薬を上回るだけのものを、課長はあたしに与えたのだ。

「そこ駄目っ、駄目ったら、ああああっ、朱羽、朱羽――っ」

 弱いところを攻め立ててくる――。

 息も絶え絶えになってベッドの上で蹲ると、服を着たままの課長があたしの背中をさすって横たわらせてくれた。

「あなたは九年前と変わってないね。あなたが教えてくれた、弱いところも……変わってない。結城さんに、開発されてなくて……よかった」

 九年前……ねぇ、まるで違う姿に変えたあなたは、九年前のあたしとの蜜事をまだ覚えていてくれてるの?
 九年、経ったのに――。

 あたしが忘れようとしていた一夜を、あなたは覚えていてくれたの?

 愛おしいと思った。

 忘れていた、とくりと揺れるこの胸の熱さ。

 あたしは、このひとを好きになり始めている――。

 だけど、そう思えば怖い。
 課長もいつかはいなくなってしまうと思えば。

 問題はなにひとつ解決していないのだ。


 結城――。


「なにを考えてる」


 課長の手が頬に添えられた。

「俺のことだけ考えて。今は……あなたは薬で変になっているだけだ」

 あたしが課長を愛おしく思うのも、薬のせいなのだろうか。

 たまたま抱き合える相手が課長だったから?
 隣に結城が居ても、残った理性で愛おしいと思ったのだろうか?

「俺を見て」

 共にベッドに転がりながら、課長が真剣な顔で言う。

「俺をあなたの余裕で捨てないで」

「余裕……なんてない」

「嘘。あなたは他のことを考えられる余裕があるじゃないか」

「それは……」

「俺はあなただけしか考えられないのに」

「……っ」

「あなたのことだけを考えている。今も、九年前も、あなたの身体に俺を刻みつけて、俺のものにしたくてたまらない」

「え……。九年前?」

 あたしは、行きずりの彼を拾っただけだ。

 課長はあたしを抱きしめ、あたしの肩に顔を埋めて呟く。

「月末の、約束の日に言う。俺の気持ち」

「………」

「言わせてね」

 課長は起き上がる。

「だから今は、その時じゃないから、俺は服を着てる。三週間後……いやあと二週間後になったか、その時のために」

 あたしの頭の上で、課長が頬をすりすりしているようだ。

 その動きであたしの下半身に堅いものがあたる。

「辛くないの?」

「辛いよ?」

 課長はあたしと目線を合わせた。

 欲情した琥珀色の瞳で。

「あなたのナカに挿れたいよ。だけどあなたを失うなら、我慢する」

「でも……」

 かなり膨らんでいるような……。

「あなたは落ち着いてきたの?」

「うん。少し」

「よかった。もっと薬盛られていたら、もっと凄いことしないと駄目だった」

 課長は目を細めて笑う。

 凄いことってなんだろう。

「残念。凄いことしたかったのに」

 だから凄いことってなに!

「ちょっと休憩しようか。俺も、あなたの可愛い姿見続けたから、本当に辛いから……」

「お手伝いします」

「え?」

 想像してしまったのだ。このズボンの中身が、課長の家のお風呂で握ったあの熱くて太いものであるのなら、また触りたいと。あの感触が思い出されて、ぞくぞくして濡れてきてしまう。

 媚薬のせいなのか、違うのか――。

「手とお口だったらどちらがいいですか?」

 口に含みたいとすら思う。
 とても愛おしいもののように思えてやまないのだ。

 理性と欲望がふわふわしている。夢心地のような中で、課長のを愛したい欲が強まっている。

「は?」

「課長に気持ちよくなって欲しいんです。課長のイク顔が無性に見たい」
 
「ちょっと待て。これは男の問題で」

「そんなになっていて我慢出来ますか? トイレ行くんですか? そっちの方があたしには困る。課長が出てきたら、なんて言えばいいんでしょう」

「鹿沼主任」

 また上司モードだ。

「はい」

「よくなってきたなら、ぐだぐだ言わずに寝なさい」

「まずは手からだけでも、やらせて下さい」

「駄目だ」

「お礼です」

「駄目……ちょ、こらっ!」

 あたしは身体を逆にして、課長のお腹の上に乗った。

「課長……、やっぱり凄いことになってませんか?」

 黒いズボンの膨らみがよくわかる。ギャザーついててよかったね。

「見なくていいから! 降り……」

「失礼します」

「ちょっ!」

 あたしは彼のベルトをカチャカチャと外した。

「やめ「あたしに触られるの、嫌ですか?」」

 振り返って見たら、課長がなんとも言えない顔をしている。

「あなたが「あたし課長の家で触っても抵抗感ありませんでしたし、課長の触りたいんです。課長だってあたしの見て触って舐めたくせに」」

 課長が真っ赤な顔になった。

「あなたが経験豊富なのは「別に誰にもこんなことしてませんけど。課長のだから触りたい」」

「……結城さんは?」

 赤い顔のまま、ぶすっとした課長の声が聞こえる。

「ないです」

 多分。

 すると課長の強ばりが解けた。

「いいですか?」

 返事がないのはいいことなのだろうと、ズボンのチャックを下ろしてみると、

「わお。課長、凄いですね。さすがは24歳!」

 下着の上から撫でて見たら、課長がビクンと反応した。

 やだ、あたし課長の顔がみたい。

 あたしは向きを変えて、課長の両足の間に入る。
 課長と目が合うと、課長は屈辱に震えたような顔をしている。

「どうしても……触りたいんですか?」

 いまだ躊躇するような課長の声が聞こえる。

「はい。どうしても!」

「ズボンを脱がなくてもいいですよね?」

「駄目です。生の課長が見たい。今直に触れられないなら、月末やめにしようかなとか思うほど」

 適当に言ったら、泣き出しそうな顔をして考え込んだ課長は枕を腰に当て、ちょっと身体を起こして片膝を立て、片足を伸ばして言った。

「……触るだけですよ?」

 可愛い。嘘を信じたか。かなりぶっきらぼうで不満そうだけど。

「ありがとうございます!!」

「……くそっ、弱みにつけ込みやがって。耐えるこっちの身になってみろってんだ」

「何か言いましたか?」

「いいえ、なにも」

「だったらちょっと腰浮かせて下さい。ズボンと下着とりたい」

「……っ」

「課長、赤くなって固まらないで」

「あなたは……、他の男にもこうなんですか?」

「課長のを早く直接触りたいと思うの、課長は迷惑なんですか?」

「……っ」

 よし、課長の質問返しの技で、課長が降参した。
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