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本章

10 あれを買うのはさすがにまずいんでは?

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「こいつらがそんなに懐くのは珍しいんだけどなあ。カーラは本当にヒト族なのかい?」

 思わずお茶を吹きそうになったカーラは、両手をぶんぶんと振り回す。シャルタンは膝が揺れて不機嫌そうにニャ、と鳴いた。それでも一向に膝から下りようとしない。

「な、なにを言っちゃってるんですか。紛れもなく人間ですよー!エルネステイルたちこそ、ホントに魔族なんですか?わたしたちが思い描いている魔族と全然違うというか」

 エルネステイルは一瞬だけびっくりしたような表情になったが、すぐにふふっと笑ってお茶を一口飲むとティーカップをソーサーに戻した。
「確かに魔族は人に何かを及ぼすスキル持ちが多いけれど、皆が皆敵対的だったり気性の荒い者ばかりじゃないよ。ね」

 いきなり当たり前のようにテーブルに乗っていたセラフィーナが、ぶっとお茶を嘴から吹き出した。
 かと思うと飛び立って自ら鳥かごに戻ってしまう。

 どういうこと?いつも優雅(?)なセラフィーナがお茶を吹いた?
 戻るまでを観察していたカーラが首を傾げると、シャルタンも膝から下りて陽の光が差し込んでいる絨毯に移動して丸くなった。毛玉ちゃんだけは肩に乗ったままでフワフワとジャンプしている。

「毛玉ちゃんはいつでも通常運転だねー」 


「それはそうと……カーラはを買う気になったのかな……?」


 ぎくぎくぅ。


「う…っ。何ていうか……めちゃくちゃ悩んでる……というよりは、というか……さすがにまずいんでは?というか……」

 チェリータルトを口に入れる姿すらも街で売られる人気俳優の絵姿のようで、カーラはエルネステイルを見つめながら言葉に詰まった。


 だってだって……

 金属の装飾が施された、傘立てにも見える置物に無造作に立て置かれているをチラリと横目で眺める。今日はまだ大人しい。


「銀貨五枚ですよ。破格だと思うのですがね」

「あー……その、お値段は確かにちょうど手持ちのお金で買えるんですがー……」

 絶対わたしの手持ち金知っててその値段にしてますよねっ!?じゃないと、そんな値段じゃ本当ならきっと買えないですよ!?まあ、欲しいと思っちゃったのは認めますけれどもっ!




 だってだって……『魔剣』じゃないですかぁ!!
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