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本章

24 ~勇者side~

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「ちょっとぉ!まだつかないのぉっ!?もういい加減こんなアウトドアいやなんだけどぉ!」

 この場にはいささか場違いな甲高い声が響いた。

 (アウトドアとは何だ?)

 同行者たちはもう一人の勇者を除いて彼女の言っている意味が分からなかったが、尋ねたりする身体的余裕はとうに失われていた。まるで召使いであるかのように雑用をこなすよう命令され、思うような速度で動けないからであった。

「今日こそはもうちょっと豪華なテントにしてよねえ!?これまで何にもないみたいなショボいテントばっかりだったじゃない!地べたに直接寝て身体中が痛いのよぉっ!」

「……ハァ。仕方ありませんね。設営班に伝達を。今日はここで野営にすると」

 護衛騎士のサザードがため息をつきながら周りの者に伝達する。
 王女ラブリに加えて、このサザードも百名余の同行者をさも用向きを処理する雑用係であるかのように命令する。先ほども王女は風呂を希望し、一同はそのわがままに辟易としていた。
 同行者は武に自信のある者たちばかりだったので、野営のための雑用ばかり申し付けられていることに当然不満が渦巻いているのだが、王女とその護衛騎士はそんな者たちの心情などどこ吹く風だった。

「おい、いいのかぁ?こんなじゃ到着するのはいつになるのやら」 

 目に見えてギスギスしている一行を横目に見ながら、道案内役である冒険者のモリストは問題点を淡々と口にした。彼からしたらどのみち行程が長くなったところで不都合はないから、まるで他人事だった。日割りで手当てが出るからだ。

 それを聞いたサザードが眉をしかめて護衛騎士にあるまじき感情を露わにした。動作も苛立ちを体現するかのような神経質な様子だったので、とばっちりを受けないよう近くにいた者たちが慌てて離れていく。この場が野営地になるのならば、テントを張る平地の確保や、全員の食事の用意など、やることは大量にあった。
 
 サザードが加虐的に行う懲罰という名の暴力に巻き込まれないためでもあった。

「仕方ないと言ったばかりではありませんか。勇者の機嫌を損なわないようにするのが私の役目なのです」
 敬語こそ使われていたが、単なる使い走り程度の冒険者如きが、とモリストへの蔑みを隠そうともしない。

 護衛騎士この男は自分のことにしか興味がないということを、既にモリストは気付いていた。自分の保身のためなら他人をいくら犠牲にしても構わない人種だということを。



「おー!今日のはまるでグランピングじゃん!これで添い寝用のメイドがいれば完璧だったんだけどなー」

 
 (グランピングとは何だ?)

 もう一人の勇者が使う言葉も全く意味が分からぬまま、野営用に切り開かれた魔物の森で勇者一行の一日は過ぎていくのだった。
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