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第一章
戦争好きな国③
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あ。
もしかして、引っ越しばかりしていたのは、居場所を知られたくなくて、それで?
何から逃げてたんだろう……
「異世界へ渡る、ということ自体が、なにぶん突拍子も無いことのように思われたのですが、ノウグスティアを連れてこられたカリンメテオール様が、彼の提案した異世界行きを信じて疑わないご様子でしたので」
そうだよね…。国の最高権力とも言うべき王族から逃げるすべなんて、そうはないだろう。どんなに低い可能性でも試してみないといけなかったことは容易に想像がつく。
「結果としてノウグスティアの行った術は成功し、カリンメテオール様は異世界に渡り、サラディーヌ様を出産なさった…のか?」
「虹色の眩い光が部屋中を満たし、ようやく目を開けられるようになると、カリンメテオール様とノウグスティアの姿は、もうそこにはありませんでした。御姿が消えたことで、我々が安堵したのは確かです。他国は帝国の脅威のせいでお逃がしする対象にはならず、頭を抱えておりましたから」
大きな国があるんだな。
帝国が国土を拡げるために、周りの国を攻めてるってことなのかな。
「帝国、ですか…戦争好き、とか?この国は大丈夫なんですか?」
ハインリヒ様に明らかに緊張が走って、私の腰を撫でる手が止まった。
エリアスとベネディクトが視線を交わし合ってる。
たくさん引っ越しを経験したせいか、新しい場所にすぐ馴染めるように、周囲への観察眼は知らず知らずのうちに鍛えられていると思う。
さっき私に王族の説明をしてくれようとした時の表情によく似ている。また、答えにくい質問をしちゃったようだ。
ふぅ、とため息をついて、ハインリヒ様が何かを決意したような表情になった。青い瞳と目が合う。
「……戦争で獲得した領土の返還要請に応じなかった帝国に対し、再度宣戦布告を行ったのは我が国だ。帝国は周辺国と次々に同盟を結び、我が国に対して連合という名のもと、戦争を起こさないよう監視している。今はこの世界が未曾有の危機に晒されているので一時休戦中だが……」
…え。
まさかの戦争好きは、この国だったのか……。
王族の話を先に聞いていたからか、あまり驚かなかった。人を人とも思わない王族なら、侵略戦争を起こすことに何の躊躇いもないだろう。
青い瞳がずっと、私の表情を観察している理由も分かる。碌でもない王族のいるこの国。しかも公爵ってことは、王族の縁戚だよねえ。それにハインリヒ様は、この国の元帥だと聞いたばかりなわけで……。元帥ってことは、戦争している直接の指揮官ってことだよね……。
私の瞳が陰ったのを、ハインリヒ様は見逃さなかった。苦しそうに息継ぎをして、私から距離を取ったのを見て、自分がどんな顔をしていたか初めて気がついた。
すごく後悔したけれど、もう遅かった――
もしかして、引っ越しばかりしていたのは、居場所を知られたくなくて、それで?
何から逃げてたんだろう……
「異世界へ渡る、ということ自体が、なにぶん突拍子も無いことのように思われたのですが、ノウグスティアを連れてこられたカリンメテオール様が、彼の提案した異世界行きを信じて疑わないご様子でしたので」
そうだよね…。国の最高権力とも言うべき王族から逃げるすべなんて、そうはないだろう。どんなに低い可能性でも試してみないといけなかったことは容易に想像がつく。
「結果としてノウグスティアの行った術は成功し、カリンメテオール様は異世界に渡り、サラディーヌ様を出産なさった…のか?」
「虹色の眩い光が部屋中を満たし、ようやく目を開けられるようになると、カリンメテオール様とノウグスティアの姿は、もうそこにはありませんでした。御姿が消えたことで、我々が安堵したのは確かです。他国は帝国の脅威のせいでお逃がしする対象にはならず、頭を抱えておりましたから」
大きな国があるんだな。
帝国が国土を拡げるために、周りの国を攻めてるってことなのかな。
「帝国、ですか…戦争好き、とか?この国は大丈夫なんですか?」
ハインリヒ様に明らかに緊張が走って、私の腰を撫でる手が止まった。
エリアスとベネディクトが視線を交わし合ってる。
たくさん引っ越しを経験したせいか、新しい場所にすぐ馴染めるように、周囲への観察眼は知らず知らずのうちに鍛えられていると思う。
さっき私に王族の説明をしてくれようとした時の表情によく似ている。また、答えにくい質問をしちゃったようだ。
ふぅ、とため息をついて、ハインリヒ様が何かを決意したような表情になった。青い瞳と目が合う。
「……戦争で獲得した領土の返還要請に応じなかった帝国に対し、再度宣戦布告を行ったのは我が国だ。帝国は周辺国と次々に同盟を結び、我が国に対して連合という名のもと、戦争を起こさないよう監視している。今はこの世界が未曾有の危機に晒されているので一時休戦中だが……」
…え。
まさかの戦争好きは、この国だったのか……。
王族の話を先に聞いていたからか、あまり驚かなかった。人を人とも思わない王族なら、侵略戦争を起こすことに何の躊躇いもないだろう。
青い瞳がずっと、私の表情を観察している理由も分かる。碌でもない王族のいるこの国。しかも公爵ってことは、王族の縁戚だよねえ。それにハインリヒ様は、この国の元帥だと聞いたばかりなわけで……。元帥ってことは、戦争している直接の指揮官ってことだよね……。
私の瞳が陰ったのを、ハインリヒ様は見逃さなかった。苦しそうに息継ぎをして、私から距離を取ったのを見て、自分がどんな顔をしていたか初めて気がついた。
すごく後悔したけれど、もう遅かった――
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