マッチングアプリ〜今日から俺は女子達と真っ直ぐに向き合う(多分)〜

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トーク1!

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「しゅん、今日はやっぱり変よ?」
「へっ!?!? べ、別にっ……」

 と言いながらも俺はかなり焦っていた。なぜお母さん!? なぜお母さん!? なぜ、お母さんと!?!? 

『マッチングゥ!』

 普通はさ! 俺と同じ高2か、高校生とかじゃないの!?

 俺はテーブルの対面にまた座ったお母さんの顔を凝視する。
 少しふっくらした顔立ちに、肩まで伸びた黒髪。目鼻立ちはわりと整っていて、改めて見ると大人の女性って感じだ。でもどことなく母親感のある雰囲気で、パッと見は優しそう。実際はそんなことないけど。

 ぐっ! 変な気分の悪さが……! お母さんを客観視するのが、すげぇつらい!! 俺はなにをやってんだ……!!
 
 目線を、再度スマホの画面へ。

名前=青木貴子《あおきたかこ》
性別=女性
年齢=45歳
身分=専業主婦
年収=0円
身長=155.2センチ
体型=普通
恋愛経験=2人
彼氏の有無=無(既婚)

 ……、合ってる。まじで、俺のお母さんの、個人情報!! 身長はハッキリ知らんけど、だいたい合ってる気がする! てか、恋愛経験!! ふ、2人!? 俺のお父さんと結婚する前に、1回だけ別の男の人と付き合ってたことあんの!? そ、そんな情報知りたくなかった!! へ、変に気まずい!! 俺がねっ!!

 ピコン!

「はうっ!?」

 突然スマホの着信音。マッチングゥ! からだった。

『マッチングゥ! した青木貴子さんとトークをしましょう』

「は、はぁっ!?」

 な、なんでそんなことしなきゃいけねぇんだ!? ふざけんなッ!! お母さんだぞ!!

「ちょっと、しゅん?」
「ひっ!? な、なに!?」
「なにじゃないわよ。どうしたの? さっきから、叫んだり、戸惑ったり……、スマホを見てるみたいだけど」
「いっ!? べ、別に何にもないしッ! だから気にしなーーー」

 ピコン!

「おふぅ!?」

 だあああああああああー!! もう!!

 イラつきながらスマホを見ると、

『共通点や質問などで話題を作ってみましょう』

 いやいやいや!? だ・か・ら!! なんでお母さんと、トークすんだよ!! 恥ずかし過ぎるだろ!!

「しゅん?」

 ガタッ。

 なっ!?

 お母さんがリビングのテーブルの席から立ち上がろうとしていた。もう雰囲気で分かった。俺の方に来るって。や、やば過ぎる!! スマホを疑っているし、見せてと言われるだろこれ!? そしたら、俺は終わる!! 『マッチングゥ!』というわけのわからんアプリを見られて、メッセージやお母さんのプロフィール内容はもちろん、お、俺のプロフィールまで
!!

 彼女ほしいか=絶対にほしい

「うぐぐっ……!」

 そんなの、し、知られたくない!!

「お、お母さん!!」
「へっ!? な、なに!?」

 椅子から中腰で、驚いた顔でこっちを見ている。い、今だ! 

 俺は恥ずかしさを抱えながら、『マッチングゥ!』に、従う!!

「は、ハンバーグ、て、手作り?」

 俺の唐突な質問に、お母さんは目を丸くした。てか、戸惑ってるように見える。ど、どうしよ……!

 するとお母さんは、上げた腰をイスに下ろしながら、「まあ……、そうだけど?」と返してくれた。う、うしっ! ひとまず危険を回避!

 だが、じーっ、と俺を見つめる青木貴子こと、俺のお母さん。怪しんでいる、怪しんでるよすごく!!

 静かなリビングがすごくつらい。不倫した夫が味わうような空気感って言えばいいのか? いや、知らんけどねっ! ってとにかく何かしゃべらないと!!

 俺は引き続き『マッチングゥ!』に従う! 

「あ、あのさ……」
「ん? なに?」
「えっと……、み、皆んな、ハンバーグ、す、好きだよな」

 青木家で思いつく数少ない共通点を、俺は何とか口にした。こ、これで、何とかなるんだろうか!?

すると、

「……、ふふっ」

 えっ? わ、笑い声?

 お母さんが、口元を緩めていた。何故かおかしそうにしていて。

「か、母さん?」
「んん? あっ、ごめんごめん。でも、ふふっ、な~に、いきなり?」
「えっ!? あ、いや、まあ……、そ、そのなに? ふと今さ、そう思って、だから、その……」
「ふふっ、そうねっ。しゅんや私、お父さんも好きよねっ」
「あっ、う、うん……」

 その後、また静かになるリビング。気まずさは変わらなかったが、嫌な雰囲気は消えていた。
 こ、これで、よ、良かったのか?

「お父さんがね、すごく好きなのよっ」

 話が続いて、「えっ? あ、う、うん」と、俺は反応する。

「デートのとき、ご飯屋さんでハンバーグを選ぶことも多くてねっ」
「えっ? あ、うん」
「ふふっ、何回か怒ったこともあるのよ。他のお店にしてっ! てね。いっときはハンバーグに恨みを持ってたくらいよ」
「へ、へぇ~……」

 ハンバーグに罪は無いのにな、可哀想に……。

「でも、ね。ハンバーグを食べてるお父さんって、すごく幸せそ~な顔するのよ」 
「は、はあ……」
「で、ふと思ったの。私が作ったのでも、そんな顔するのかなぁ~、って。そこからかなっ、ハンバーグを許せるようになったの」
「ふ、ふ~ん……」
「ふふっ、今じゃお母さんの一番の得意料理よっ」

  そしてお母さんは、楽しそうに笑った。

 お……、おいおい、何だこの話。す、すごく、む、むずがゆいんだが!! 急に親の恋バナ!! 朝から聞くもんじゃねえ!! あとハンバーグがなんか理不尽に振り回されて可哀想と思いました。

 ピコン! 

 おふっ!? ま、またかよ!?

 チラリとスマホを見ると、

『良いところを見つけて褒めてみましょう』

 なっ!? ま、まままま、マジかっ!? そんなのどうやってーーー、
 
「しゅん?」
「うっ!? あ、えっと……!」

 だあああああああああ!! もうどうにでもなれ!!

 俺は今聞いた話から、唯一思いついたことを、震える口で、お母さんに伝えた。

「は、ハンバーグ……、お、美味しかった」
「えっ?」

 お母さんは短く驚いたような声を発すると、そのまま表情が固まった。や、やばっ! お、俺なんかミスった!? 
 時間にして、数十秒か、焦っていたときだった。

 お母さんの表情が、

 にんまぁ~~~~~~~~~~~~~りぃ。

 超絶に激変した。

 めっちゃ顔がニヤけている!?!?

 口元はまるでUの字。両頬は薄っすらと色づき、

「ふふっ、うふふふっ……」

 口元から、と~っても優しげな声音が漏れている。や、やばっ!? なんか超怖い!! 怖い!!

「しゅ~ん♪」
「ひっ!? は、はい!?」
「ふふっ、ふふふっ♪」

 また嬉しそうに笑うお母さんが、こ、こえええええ!! 目元が超細い!! あっ!!

 リビングの壁掛け時計がふと目に入って、焦った。もう、家を出なきゃまずい! 遅刻する!!

「か、母さん!!」
「んん~♪ なぁに?」
「お、俺もう学校い、行くから!」
「あら? もうそんな時間ねっ。ふふふっ♪」

 超嬉しそうに笑ってるのが怖い怖い怖い!!で、でも気にしてる場合じゃない!

 俺は立ち上がり、テーブルに置いてあった弁当を持つ。そしたら、

 ピコン!

 また!?

 『感謝の気持ちも伝えれるとより良いでしょう』

 ぐ!? だああああああ!! もう!!

 学生カバンに弁当を入れつつ、俺は、母さんに小さく言った。

「お、お弁当、あ、ありがと……」

 そしたら、お母さんの…………、今まで見たことない嬉しそうな満面の笑み、笑み、笑み!! や、やばいやばい!! 早く逃げないと!!

「い、行ってきます!!」
「ふふっ、いってらっしゃい♪」

 俺は大きな声でそう言って、リビングを出た。駆け足で玄関に行き、慌てて靴を履いて外に出る。晴天の空からくる朝日が眩しい。

 そして、すぐ走る、走る、走る!

「はあ、はあ、朝から……、何やってんだ俺はあああああ!!」

 ピコン!

 スマホを見る。

『とても良いトークでしたねっ。今後もマッチングゥ! をごひいきに』

 そ、そんなわけあるか!!

 ピコン!

『青木貴子さんのプロフィールが更新されました』

 は、はあ!?

名前=青木貴子《あおきたかこ》
性別=女性
年齢=45歳
身分=専業主婦
年収=0円
身長=155.2センチ
体型=普通
恋愛経験=2人
彼氏の有無=無(既婚)
趣味=ハンバーグ作り(料理)
好きなもの=ハンバーグ、家族

 なっ!? ぐ、うぐぐぐ! 

「朝から、ほんと最悪だああああああああーーーー!!」

 俺はスマホを地面に叩きつけたい気持ちを抑えながら、慌てて高校へと向かった。
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