マッチングアプリ〜今日から俺は女子達と真っ直ぐに向き合う(多分)〜

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マッチングゥ! 2人目

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 通学路の桜並木は、青々とした新緑の葉に衣替えをしていて、陽の光を煌びやかに照り返している。とても清々しい5月の朝の風景と言えるのだろう。だが今の俺は、

 ほんと酷い目にあった……!!

 早歩きしながら、めっちゃげんなりしていた。だってそうだろ!? なんで朝から、お母さんと仲良く会話せにゃならんのだ!! しかも、親のラブコメまで聞かされてしまって、も、もうなんかむずがゆい!!

「だあーーー!! 全部、あのくそアプリ、マッチングゥ! のせいだ……!! もうこのアプリを無視……、出来たらなぁ……」

 どんだけ良いことか。だってさ、すげぇ気になるんだよ!! 俺の個人情報を勝手に握られ、さらにはお母さんの情報も握られ……、てかどうやって母さんの恋愛歴も調べたんだよ。2人、って妙に引っかかる数字だしやがって!!それに、今日母さんとしゃべったことが、新たな情報としてアプリ内に反映されてるし!!

「なんなのこれ!? 俺のスマホは盗聴器みたいになってんの!? てか暑い!!」

 まだ5月なのに、晴天の日差しが俺に容赦なく降りそそぐ。
 
「あ~っ、もう何もかもムカつく……! ほんとに、ほんとにッ……!! 今日はさッーーー」

 最悪だ!! と、声を張り上げようとしたときだった。

「おはよう」「おはよう」「今日暑いね」「そうだよね」

 ハッとした。耳に入ってくる声。

 周囲を慌てて見渡すと、ちらほら同じ制服を着た生徒がいた。

 あ……、いつのまにか、結構歩いてたんだ。

 同じ高校へ行くもの同士。顔は知らない。たぶん違うクラスとかだろう。

 チラ、チラ。

 うっ!?!? お、俺、なんか見られてる!? 

 普段は感じない、ちょっと不審がるような視線に、俺はたじろぐ。

 ま、まずい!! お、俺、気づくまで、独り言を言ってたし、ま、周りに見られてた!? さ、最悪だ! 恥ずい……。

「うぅ……」

 顔が熱い。俺、めっちゃ赤くなってるかもしれん。
 この場からいなくなりたかった。そしたら、

 あっ。

 ふと、通学路のわきにある小道が目に付いた。今まで歩いたことが無い道。

 ……、い、行こう!

 いつもの通学路からそそくさと外れた。知らない小道に入ってく。

 気持ちを整理したかった。落ち着かせたかった。

「早めに家を出たし、多少時間がかかっても遅刻はしないだろ。それに学校の方角に大きくそれるような小道では無さそうだし」

 俺は学生達から離れ、見知らぬ人気のない小道に歩みを進めていった。

         ✳︎

 物静かな小道だった。道幅は2人並んで通れるくらいの狭さで、両サイドは背の高い木製の塀がずっと続いている。右側の塀の方だけ、民家の屋根が顔をのぞかせていて、その分だけ日陰が出来ていた。

 暑さをしのげるのはありがたい。

 陽に照らされている左側の道は避けて、俺は陰のある右側へ。塀に寄り添うような形で、ゆっくりと歩いていく。

 知らない道を進むのは緊張したが、ときおり緩やかな曲がり道があるくらいの一本道って感じだった。これなら迷うこともないし、遅刻もしないだろう。

 ひんやりとした空気が、火照った体に心地良い。しんとした静けさに、自分の足音がよく響く。テンパっていた気持ちも落ち着いてきて良い感じだ。こっちに来て正解だったな。

 人の視線、特に同じ学生の目線を気にせず歩けるのが今はありがたい。

「はあ……、もうなんか学校に行きたくねぇなぁ。……、ん?」

 ふと、何かの気配を感じ、目線を上へ。塀のてっぺんに、

「あっ、ネコ」

 毛並みの良いミケ猫が、とととっ、と細い塀の上を歩いていた。

「あははっ、器用なこった。てか、カワイイ」

 めっちゃ癒されるんだけど。

 俺は視線を上げたまま、先を少し歩いていくネコについていく。道は一本道だから、迷うことないし平気だろ。はあ~、ネコの歩く後ろ姿に、こんな癒しを感じるのは生まれて初めてかもしれんな。

 ピコン!

「わわっ!?」

 な、なんだ!? 俺のスマホが勝手に鳴って!? 

 慌てて制服のポケットから取り出した。画面には、

『マッチングゥ! からメッセージ』

「なっ! ななっ……!」

 驚く俺をよそに、画面のメッセージが変わる。

『マッチングゥしました!』

「いいっ……!?!?」

 だ、誰と!? 

 こんな人気のない小道で、誰と!? ね、ネコしか会ってないんだけど!? ま、まさか、あのミケ猫は雌!? だったら、納得、できるかッ……! バカか俺は……!!

「にゃあ~♪」

 びくっ!?!? 

 猫ではない、鳴き声だった。上の塀を歩いているミケ猫はただ黙々と歩き、俺から離れいく。
 
「にゃあ~♪」

 また聞こえた、可愛い声音。俺は慌てて視線を上から、正面に戻した。そこには、

「あ~ぁ、つれないにゃぁ。ちょっとくらい振り向いてよねっ~、ふふっ、にゃん♪」

 制服を着た彼女は、頬を少し膨らましながら、でも楽しげにしゃべっていた。
 淡い栗色のキレイな艶髪がイタズラに揺れる。三毛猫の毛並みに似ていると思った俺は、彼女を猫っぽいと感じた。それくらい、可愛いらしい、彼女。いつもクラスで見かける、強気な姿からは想像しにくい。

「んっ? えっ……!?」

 彼女がこっちに気づいた。目を丸くし、驚いているのがわかった。そりゃ、そうだろ。こんなとこで、誰かと会うなんて思わなかっただろうし。しかもよりによって、同じクラスの、
普段接することのない、地味なキモ男子なんかとさ。

「なっ……!? なんで、いんのっ……!?」

 さっきまでの可愛らしい、優しい声音は引っ込み、かわりに、語気の強い、体育会系なものに変わった。やべぇ、女子って怖い……! って、そんなこと考えている場合ではない!!

「あっ、いや、あの!?」 

 ピコン!

 だあーーー!! 取り込み中にスマホ鳴るなっての!! ん? あっ、ま、まさか!?

 慌ててスマホの画面を見て、驚愕した。

『マッチングゥのお相手
名前=錦戸舞花《にしきどまいか》
性別=女性
年齢=17歳
身分=高校生。バレー部副将
身長=168センチ
体型=スリム
好きなもの=ネコ』


 な、ななななっ、まじかよ!?!?

 俺は、目の前にいる、錦戸を見る。

 シャアァァァァァァーー!!

 獲物を狙う猫のように、鋭い眼光で、俺を睨みつけていた。

 マッチングゥ! の相手間違ってないか!?!? 無理ゲー過ぎるだろー!?!?
 
 経験のないピンチに、俺は頭が真っ白だった。
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