すいませんが、この人は自分のものです

アカシア

文字の大きさ
10 / 33

第10話 黒の女神は買い物に行きたい

しおりを挟む
完璧なオフをすごし、急遽無くなった金曜も有意義に過ごしたつもりだった
――あの爆弾さえなければね

「金曜日が部活休みって珍しいですね」
「なんか、急遽休みになったらしい。詳しい事情は知らん」
「因みに、土曜日は?」
「練習試合」
「ですよね」

そう返した瞬間、澪の表情がふっと曇ったのが見えた。普段はどこまでも冷静で、感情をあまり表に出さない彼女がこんな風に見せるのは珍しいし、正直なところ驚いた。

「澪、なんでそんなに落ち込んでるんだい? 何か用事があるの?」

おれが尋ねると、澪は視線を少し泳がせてから、小さな声で呟くように言った。

「…いえ、その…実は、蒼君と一緒に、買い物に行けたらいいなと思っていたので…。久しぶりに二人で、その、少しだけでも…」

上目遣いで言っていいた
一瞬、俺の心臓が跳ね上がる。澪が、俺との買い物のために時間を取ってくれようとしていたなんて。
澪にも、一応、女子には友達がいるので特別な理由がなければこんな風に誘わず、女子と買い物に行くだろう。だからこそ、照れと驚きが混ざった感情が胸に広がった。
あいつらに自慢して―


「…そうだったんだ」

俺は思わず口元を緩めながら言った。普段の澪とは少し違う、どこか恥ずかしそうなその様子が可愛らしくて、なんだかこちらまで気恥ずかしくなってしまう。

「すみません、無理を言いましたね…蒼君、試合に集中しなければならないのに…」

澪が軽く俯き、控えめに言う姿を見て、胸が少し痛んだ。
そんなに気を遣わなくてもいいんだけどなぁ、
おれははそう思いながら、最適解だと思う答えを返した。

「いや、別に無理なんかじゃないよ。試合が終わったら…行けるよ、買い物」

その瞬間、澪が顔を上げて、驚いたように俺を見つめた。そして、少しだけ口元が柔らかく緩み、いつもの冷静な表情がほころんだような気がした。

「本当ですか? 試合が終わった後で大丈夫でしたら…ぜひ、ご一緒していただきたいです」

澪のそんな言葉を聞いて、思わず俺も照れてしまう。
平静を装いつつも、心臓の鼓動はバカほどうるさくなっている
ワンチャン聞こえてるぞこれ

「ああ、終わったら行こう。一緒に」

その言葉に、澪が微笑む。どこか照れくさそうにしながらも、少し嬉しそうに見えるその顔に、俺も自然と頬が緩んだ。

「楽しみにしています、蒼君」

彼女の一言で、なんだか土曜日が待ち遠しくなってきた。試合ももちろん全力で頑張るけれど、その後に待っている彼女との買い物を思うと、自然とやる気が湧いてきた。

◆◆◆

「今日は1年生ゲームもあるから、1年生はいつも以上にアップを積極的に参加して」
「はい」

1年生ゲーム
これを聞いて、興奮しない部活動生はいないだろう
なんせ、これでアピールに成功すれば、2、3年生の方に出れるようになるんだから

そして、2、3年生の試合が終わり、1年生ゲームになった
「じゃあ、……」

監督が出るメンバーを指名していく

心臓がずっとうるさい
途中出場も上手く行けばアピールになるが、もし、選べれたら、監督が考える現状の評価が一番高い5人の中ということになる

「久則」
「はい」

後2

「康太郎」
「はい」

後1

どのスポーツにおいても、入りたての頃はベンチ入り、を目指すそして、そこから更に活躍、努力をし、スタメンをもぎ取る
これを目標として、練習に励む者がほとんどだろう、おれだってそうだ
やっぱり、部活をしているのなら、皆スタメン入りはしたいに決まっている

しかし、バスケットボールの特性上、スタメンは5人、競争率の高さは一目瞭然

そんな競技でスタメン入を果たしたらどうなる?
アドレナリンがどばどばと出るに決まってるじゃないか
やっぱり買い物に行くのなら、嬉しい状態で買い物に行きたい

「蒼」
「はい!」

極度の緊張から解き放たれ、だんだんと胸の鼓動が収まっていくのを感じる

……調子に乗ってはいけない、ここでミスを連発したら元もこもない、ただ努力が水の泡になるだけ
落ち着いて

「川田がボールをメインで運び、蒼はサポートに回れ」
「はい」


川田かわだ義隆よしたか
久則と同じ3組で、こいつはパス、視野の広さがキモい

……もちろん褒めるほうのキモいだよ

「おれが止まった時に来てくれると助かる」
「まかせろり」
「とりあえず、ゴール下は康太郎と志歩で

国木田くにきだ志歩しほ
久則、義隆と同じ3組
身長は康太郎に劣るが、足の速さ、ジャンプ力、フィジカルを生かしたプレーが得意

「久則はガンガンアタックして、蒼はスペースが空いたなって思ったらバンバン撃って良いよ、リバウンドは康太郎と志歩がとってくれるから」
「流石に全部は取れないからな」

志歩が言い康太郎はうんうんと頷いた
それもそうだろう
もしリバウンドが全部取れたら最強すぎる

「じゃあ行こうか」

スタメンとして初めてコートなら立った7月24日
おれはこの日を忘れる事は無いと思う

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...