6 / 8
6
しおりを挟む
目が覚めると男がいた。
体は洗われていて、清潔なシーツの上にいた。
「おはよう、陸。」
男が幸せそうに目を細めて俺を見る。
咄嗟に体を引こうとしてあらぬ処の痛みに呻いた。
年齢もあって俺のヒートは回数も期間も減った。男は今までヒートの時以外は俺を抱かなかったから、久々の行為に体が悲鳴をあげている。
そう、男は正気の俺を抱かなかった。αの男なんて60過ぎても性欲が強い。けれど外で発散する事も無かった。俺と兜合わせといった方法でするだけで、俺の後を使う事は無かった。俺の第一性に配慮をしてくれていると思っていた。
「陸……」
男が俺の後に指を埋める。蹂躙され息があがる。
男が目尻にキスをしてきた。
「泣かないで…」
泣いている?俺が?
あぁ、そうか。
俺は失ったんだ。違う、得てもいなかった。
幸せな家…。
唐突に理解した。
この男が猪瀬を放置している理由が。ずっと不思議だったのだ、俺の何もかもを欲する男が、俺の初めての番となった猪瀬を生かし続けている事が。
俺を殺す役目の為に生かされている。猪瀬もそれを理解しているのだ。
番同士の結びつきが深いと、片割れと死に別れたらその喪失感で遺された方も後を追う様に衰弱死する。
浅ければ、片割れは生き残れる。
先にこの男が逝けば俺はフリーになる。番契約は亡くなり他の者とセックスする事も可能だ。年老いても最高位Ωの俺を欲しがるαは居るだろう。それに年老いてヒートが終われば俺は女性とも付き合っていける。
男は俺の全てを望む。欠片すら他にやる気はない。男は何があろうと生き残ることを考えては居るだろう、けれど、確率をゼロにする事は不可能なのだ。
猪瀬は…俺に執着している。俺の番があの男だから諦めているのだ。あの男への信奉心はあの男が死んでも残る。だから俺に手は出さないが、他の者に奪われるくらいならば殺す。
その為の要因なのだ。
…酷い人生だ。
主が狙っていたΩにレイプされて主には恨まれて、無理矢理打たれたドラッグのようなものなのに中毒のように忘れられず独身を貫き通して。そして、最愛を殺す為の要因として生かされて、最愛が産んだ息子にビッチングされかけている……。
男が俺の中に入ってくる。
「そうそう、中東の事業が滞っているから猪瀬を派遣する予定だ。アイツなら数年で軌道に乗せて帰ってくる」
猪瀬家の血は、京極から命を受けて離れる分には悪さをしない。不要と判断されて距離を取られた時、生命活動を諦めるのだ。
俺が自ら体を差し出した対価が海外赴任。
この男は俺が何に悩んでいたか知っていた。
そうして、俺の選択もわかっていた。
だから、あの場にいたのだ。架向をつれて。
もっと前に解決案を明示できるはずだったのに、そんなに猪瀬が、お前以外を受け入れた俺が憎かったのか。ずっと復讐できる機会を待っていたのか
男の肩に担がれた俺の脚が行き場もなくプラプラと揺れる。
男の振動にただただ揺れる。
天井が見える。なんの変哲もない一般的な壁紙。
俺らしい家。
笑いあいながら穏やかな時間を過ごして、年老いて架向が独り立ちして孫を得て…そうして、その頃、もし男が先に逝くとしたら、俺の夢を叶えてくれた男についていくのだろうと、どこかで思ってた。
俺を尊重して、京極家にそぐわない家を用意し、父さんの跡を継いだ俺をサポートしてくれた男。はじまり方は許せないものだったが数十年積み上げれば敬意と感謝の家族愛の鎖で、男に引き摺られるだろうと思っていた。
けれど、もう…
プラプラ揺れる脚。
反応する下半身…
誰か。
助けて。
レイプ犯の俺にそんな事を叫ぶ権利は無い……。
でも、
なぁ、いつまで贖罪を続ければいいの。
どうすれば良かったの。
猪瀬をレイプせずこの男に無理矢理番わされていれば良かったのか
過剰防衛と、いつまでもいつまでも責められている。
もう…疲れたよ
誰か……俺を殺して
自殺でなければ、猪瀬も架向も守られる。
誰か…
プラプラ揺れる脚が見える。
そして、反応するΩの下半身…
誰か………もう、疲れた……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後までお読みいただきありがとうございました
と言いたいところですが、スミマセン。
ちょっとだけ蛇足話つけます。
体は洗われていて、清潔なシーツの上にいた。
「おはよう、陸。」
男が幸せそうに目を細めて俺を見る。
咄嗟に体を引こうとしてあらぬ処の痛みに呻いた。
年齢もあって俺のヒートは回数も期間も減った。男は今までヒートの時以外は俺を抱かなかったから、久々の行為に体が悲鳴をあげている。
そう、男は正気の俺を抱かなかった。αの男なんて60過ぎても性欲が強い。けれど外で発散する事も無かった。俺と兜合わせといった方法でするだけで、俺の後を使う事は無かった。俺の第一性に配慮をしてくれていると思っていた。
「陸……」
男が俺の後に指を埋める。蹂躙され息があがる。
男が目尻にキスをしてきた。
「泣かないで…」
泣いている?俺が?
あぁ、そうか。
俺は失ったんだ。違う、得てもいなかった。
幸せな家…。
唐突に理解した。
この男が猪瀬を放置している理由が。ずっと不思議だったのだ、俺の何もかもを欲する男が、俺の初めての番となった猪瀬を生かし続けている事が。
俺を殺す役目の為に生かされている。猪瀬もそれを理解しているのだ。
番同士の結びつきが深いと、片割れと死に別れたらその喪失感で遺された方も後を追う様に衰弱死する。
浅ければ、片割れは生き残れる。
先にこの男が逝けば俺はフリーになる。番契約は亡くなり他の者とセックスする事も可能だ。年老いても最高位Ωの俺を欲しがるαは居るだろう。それに年老いてヒートが終われば俺は女性とも付き合っていける。
男は俺の全てを望む。欠片すら他にやる気はない。男は何があろうと生き残ることを考えては居るだろう、けれど、確率をゼロにする事は不可能なのだ。
猪瀬は…俺に執着している。俺の番があの男だから諦めているのだ。あの男への信奉心はあの男が死んでも残る。だから俺に手は出さないが、他の者に奪われるくらいならば殺す。
その為の要因なのだ。
…酷い人生だ。
主が狙っていたΩにレイプされて主には恨まれて、無理矢理打たれたドラッグのようなものなのに中毒のように忘れられず独身を貫き通して。そして、最愛を殺す為の要因として生かされて、最愛が産んだ息子にビッチングされかけている……。
男が俺の中に入ってくる。
「そうそう、中東の事業が滞っているから猪瀬を派遣する予定だ。アイツなら数年で軌道に乗せて帰ってくる」
猪瀬家の血は、京極から命を受けて離れる分には悪さをしない。不要と判断されて距離を取られた時、生命活動を諦めるのだ。
俺が自ら体を差し出した対価が海外赴任。
この男は俺が何に悩んでいたか知っていた。
そうして、俺の選択もわかっていた。
だから、あの場にいたのだ。架向をつれて。
もっと前に解決案を明示できるはずだったのに、そんなに猪瀬が、お前以外を受け入れた俺が憎かったのか。ずっと復讐できる機会を待っていたのか
男の肩に担がれた俺の脚が行き場もなくプラプラと揺れる。
男の振動にただただ揺れる。
天井が見える。なんの変哲もない一般的な壁紙。
俺らしい家。
笑いあいながら穏やかな時間を過ごして、年老いて架向が独り立ちして孫を得て…そうして、その頃、もし男が先に逝くとしたら、俺の夢を叶えてくれた男についていくのだろうと、どこかで思ってた。
俺を尊重して、京極家にそぐわない家を用意し、父さんの跡を継いだ俺をサポートしてくれた男。はじまり方は許せないものだったが数十年積み上げれば敬意と感謝の家族愛の鎖で、男に引き摺られるだろうと思っていた。
けれど、もう…
プラプラ揺れる脚。
反応する下半身…
誰か。
助けて。
レイプ犯の俺にそんな事を叫ぶ権利は無い……。
でも、
なぁ、いつまで贖罪を続ければいいの。
どうすれば良かったの。
猪瀬をレイプせずこの男に無理矢理番わされていれば良かったのか
過剰防衛と、いつまでもいつまでも責められている。
もう…疲れたよ
誰か……俺を殺して
自殺でなければ、猪瀬も架向も守られる。
誰か…
プラプラ揺れる脚が見える。
そして、反応するΩの下半身…
誰か………もう、疲れた……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後までお読みいただきありがとうございました
と言いたいところですが、スミマセン。
ちょっとだけ蛇足話つけます。
211
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる