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12-ヒート
「菫、今日はもう家に帰れ。……送っていく」
問答無用とばかりに、海斗が私の鞄を手にとって先をいく。
「え?ちょっと待ってよ。今日は…」
言い募る私に海斗が耳打ちした。
「おそらくヒートがくる」
「え?」
頭が真っ白になった。
何をいっているのか。中2になっても、私にはヒートが来てなかった。一部の人からは出来損ないのΩと言われていることも知っている。でも、それは私にとっては褒め言葉だった。Ωになんてなりたくない。
3ヶ月に一度、1週間程度学校を休めば周囲にもヒートと認識されてしまう。
私がΩだと言う事は知れ渡っている。今も『理想の番像』と私と海斗を見てそう言ってる声が聞こえてくる位だから。いつもなら照れくさく感じるソレも、今は受け入れ難い。
海斗は私と過ごさない……
海斗に送られ部屋に戻った途端、身体の奥から熱が込み上げてきた。
胸の鼓動が早すぎて、呼吸が合わない。
汗が噴き出して、足元がふらつく。
「……なに、これ……」
頭では分かっていた。
冊子で読んだ。
授業で習った。
それでも、実際に自分に起きてみれば、それを“生理現象”なんて受け止めようが無くて
脚の間から広がる熱が、理性を飲み込ながら手をソコに誘導していく。
嫌だ!
前世ですら、そんな事はしなかった。
「やだヤダやだ!」
私の悲鳴にダディが飛び込んできた。本来ならば研究所にいる時間だ。海斗が連絡したのだろう。
「お願い…お願いだから手を縛って…!」
「菫!そんな事をすれば余計に苦しいだけだ。ヒートを鎮めるにはどうすればいいか、習っているだろう?」
「嫌よ!嫌!そんな獣みたいな事する位なら死んだほうがマシよ!」
「菫!」
ダディが私を抱きしめた。
「菫!そんな事言わないでくれ!」
いきが止まる程強く抱かれる。前にもあった。そうだ、あれは…
『死なないで!戻ってきて!』
「ちがう……私は……ただ、生きたいだけだったのに……まま…」
視界が滲む。
過去の記憶が、勝手に浮かんでくる。
酸素マスク越しに見た天井。
点滴の冷たさ。
苦しさの中呼吸を求めた。
その時の私は、健康を、自由を、命を、渇望していた。
なのに今の私は――それを与えられてなお、拒んでいる。
獣になる位なら…と。あれほど渇望した命を。
『生きて、生きて!戻ってきて!』
ママが私を抱きしめて泣いていた。
「……怒られるよね……」
涙と共に笑いが漏れる。
愚かだ。
わがままだ。
それでも――
この熱に支配されて、「自分」という存在が書き換えられていく感覚は、どうしても受け入れられなかった。
ヒートには波がある。
僅かに熱が引いた時に、ダディに後ろ手に縛って貰った。
Ωの自分を受け入れてくれ、と泣いているダディに頼んだ。私を産んでくれた人に酷な事を強いているのは分かっている。それでも…
『生きられるなら何でもいい』と願った過去の私と、『獣になりたくない』と叫ぶ今の私。
二つの“私”が、互いを責め合いながら胸の中でぶつかり合う。
これは、罰なのだろうか。親より先に死んだ前世の私の業か
やがて熱が引いたとき、シーツは汗と涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。
私が獣に堕ちた日、その日の夕焼けは美しかった……憎たらしいほどに。
~~~~~~~~~~
泣きたくなる程、じゃなくて、憎たらしい、これが、コンちゃんなのだ。
自分の事を脆いと思っているけれど、そんな事はないんです
問答無用とばかりに、海斗が私の鞄を手にとって先をいく。
「え?ちょっと待ってよ。今日は…」
言い募る私に海斗が耳打ちした。
「おそらくヒートがくる」
「え?」
頭が真っ白になった。
何をいっているのか。中2になっても、私にはヒートが来てなかった。一部の人からは出来損ないのΩと言われていることも知っている。でも、それは私にとっては褒め言葉だった。Ωになんてなりたくない。
3ヶ月に一度、1週間程度学校を休めば周囲にもヒートと認識されてしまう。
私がΩだと言う事は知れ渡っている。今も『理想の番像』と私と海斗を見てそう言ってる声が聞こえてくる位だから。いつもなら照れくさく感じるソレも、今は受け入れ難い。
海斗は私と過ごさない……
海斗に送られ部屋に戻った途端、身体の奥から熱が込み上げてきた。
胸の鼓動が早すぎて、呼吸が合わない。
汗が噴き出して、足元がふらつく。
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嫌だ!
前世ですら、そんな事はしなかった。
「やだヤダやだ!」
私の悲鳴にダディが飛び込んできた。本来ならば研究所にいる時間だ。海斗が連絡したのだろう。
「お願い…お願いだから手を縛って…!」
「菫!そんな事をすれば余計に苦しいだけだ。ヒートを鎮めるにはどうすればいいか、習っているだろう?」
「嫌よ!嫌!そんな獣みたいな事する位なら死んだほうがマシよ!」
「菫!」
ダディが私を抱きしめた。
「菫!そんな事言わないでくれ!」
いきが止まる程強く抱かれる。前にもあった。そうだ、あれは…
『死なないで!戻ってきて!』
「ちがう……私は……ただ、生きたいだけだったのに……まま…」
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酸素マスク越しに見た天井。
点滴の冷たさ。
苦しさの中呼吸を求めた。
その時の私は、健康を、自由を、命を、渇望していた。
なのに今の私は――それを与えられてなお、拒んでいる。
獣になる位なら…と。あれほど渇望した命を。
『生きて、生きて!戻ってきて!』
ママが私を抱きしめて泣いていた。
「……怒られるよね……」
涙と共に笑いが漏れる。
愚かだ。
わがままだ。
それでも――
この熱に支配されて、「自分」という存在が書き換えられていく感覚は、どうしても受け入れられなかった。
ヒートには波がある。
僅かに熱が引いた時に、ダディに後ろ手に縛って貰った。
Ωの自分を受け入れてくれ、と泣いているダディに頼んだ。私を産んでくれた人に酷な事を強いているのは分かっている。それでも…
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これは、罰なのだろうか。親より先に死んだ前世の私の業か
やがて熱が引いたとき、シーツは汗と涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。
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