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「三蔵、やっていいんだな?」
日本語のわからない悟空が、やり取りが物別れに終わったことを察して嬉しそうな顔で聞いた。
「構わねぇ、やっちまえ!」
先ほどの丁寧な口調をかなぐり捨てて三蔵が仲間に合図する。
「――おっちゃんの仇(かたき)!」
まず、案内役の男になついていた紅孩児が動いた。
両腿の双刀を抜き放つや、迅影(はやかげ)と化して突進する――二本の短兵器が目まぐるしく動き、腿の裏、脛(すね)、籠手(こて)裏など甲冑の防備の及ばない箇所を裂いた。
いくつもの悲鳴があがった――が、すぐにそれは鈍い音とともに途切れる。二番手の悟空が鉄棍でもって喉を打ち砕いたのだ。さらに、悟浄が月牙鏟で喉笛を切り裂く。
――この段になってやっと、士卒たちは我に返った。
なれど、体勢を立て直そうとする彼らの目玉や喉を、三蔵が続けざまに放った脱手鏢がつらぬく。
それでも、難を逃れた者が薙刀(なぎなた)をふりかざして三蔵に襲いかかる――寸前で、八戒の鉄耙が刃の山の間で押さえる。次の瞬間、得物はひるがえって対手の横面を強打、朦朧(もうろう)となった対手を前に出てきた銀角の双戟の刺突が奈落に突き落とす。
「こちらが多勢、気を落ちつけて各々、狼藉者にあたれ!」「くそ、腿の太い血の管を切られた――俺はもう終わりだ!」「子供対手には、差料(さしりょう)で――!」「手が燃えるように痛(いて)ぇ!」
士卒たちは恐慌状態におちいった。
そんな彼らを、人数で劣る三蔵たちが下草でも刈り取るように易々と殺(あや)めていく。斬人音が絶え間なく響き、血煙が鯨の吹く潮のようにあたりに飛び散った。
「紅孩児、突出しすぎだ!」「悟空、あの餓鬼(がき)の援護を頼む」「金角銀角、そいつらを追い込め」「よし、そこだ八戒!」「悟浄、撃ちもらしを頼む」
剣戟からやや距離を置きながら、自身飛び道具を遣(つか)いつつ仲間に指示を飛ばす――
日本語のわからない悟空が、やり取りが物別れに終わったことを察して嬉しそうな顔で聞いた。
「構わねぇ、やっちまえ!」
先ほどの丁寧な口調をかなぐり捨てて三蔵が仲間に合図する。
「――おっちゃんの仇(かたき)!」
まず、案内役の男になついていた紅孩児が動いた。
両腿の双刀を抜き放つや、迅影(はやかげ)と化して突進する――二本の短兵器が目まぐるしく動き、腿の裏、脛(すね)、籠手(こて)裏など甲冑の防備の及ばない箇所を裂いた。
いくつもの悲鳴があがった――が、すぐにそれは鈍い音とともに途切れる。二番手の悟空が鉄棍でもって喉を打ち砕いたのだ。さらに、悟浄が月牙鏟で喉笛を切り裂く。
――この段になってやっと、士卒たちは我に返った。
なれど、体勢を立て直そうとする彼らの目玉や喉を、三蔵が続けざまに放った脱手鏢がつらぬく。
それでも、難を逃れた者が薙刀(なぎなた)をふりかざして三蔵に襲いかかる――寸前で、八戒の鉄耙が刃の山の間で押さえる。次の瞬間、得物はひるがえって対手の横面を強打、朦朧(もうろう)となった対手を前に出てきた銀角の双戟の刺突が奈落に突き落とす。
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「紅孩児、突出しすぎだ!」「悟空、あの餓鬼(がき)の援護を頼む」「金角銀角、そいつらを追い込め」「よし、そこだ八戒!」「悟浄、撃ちもらしを頼む」
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