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しかし、これが実戦、という感慨は抑えようもなく湧いてきた。家中の改易のせいで実戦らしい実戦を経験していない小平次は、今更になって全身が寒いような熱いような相反する異様な感覚に襲われた。
渡り忍びの仕事――決して容易にはいかないようだ、そんな思いを強く抱く。
それから半刻ほどののち。
塩飽を間近にする讃岐の海辺の土地の一角にある、廃寺で開かれている賭場に異様な男が現れた。
海を泳いだ上で着替えたように、乾いた着物を着ながらも頭から潮の匂いをさせた凡庸な顔つきをした男が、賭場に現れるや大きな声で言い放ったのだ。
「よい、儲け話がある」
なんだなんだ、と一部には一応は堅気と呼べる者も混じるが大半は破落戸(ごろつき)、無宿の連中がいぶかしげな目を向ける。
「おめえさん、賭場を荒らすようなら容赦しねえぜ」
壺振りがやくざ者の貫禄を示して凄むが、
「博奕で小金を巻き上げるより、いい話があるんだよ」
と男はみじんもひるむことなく応じた。身なりからすると士分だが、主持ちの者にしては妙な翳りを感じさせる相手だ。その奇妙な気配に、かすかにだが賭場を開いている一家の者たちは呑まれる。
渡り忍びの仕事――決して容易にはいかないようだ、そんな思いを強く抱く。
それから半刻ほどののち。
塩飽を間近にする讃岐の海辺の土地の一角にある、廃寺で開かれている賭場に異様な男が現れた。
海を泳いだ上で着替えたように、乾いた着物を着ながらも頭から潮の匂いをさせた凡庸な顔つきをした男が、賭場に現れるや大きな声で言い放ったのだ。
「よい、儲け話がある」
なんだなんだ、と一部には一応は堅気と呼べる者も混じるが大半は破落戸(ごろつき)、無宿の連中がいぶかしげな目を向ける。
「おめえさん、賭場を荒らすようなら容赦しねえぜ」
壺振りがやくざ者の貫禄を示して凄むが、
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と男はみじんもひるむことなく応じた。身なりからすると士分だが、主持ちの者にしては妙な翳りを感じさせる相手だ。その奇妙な気配に、かすかにだが賭場を開いている一家の者たちは呑まれる。
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作家 蔵屋日唱
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