BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
12 / 228

12話 謎の少年

しおりを挟む
 両親に抱きしめられてから数日。今日もアレクシスとミゲルが私の所に遊びに来ては見栄の張り合いを始めました。最近はこの光景もただのじゃれ合いに感じ、仲が良いって素敵だなどと思う様になりました。思えば彼らはまだまだ少年。自分が一番だと誇示したい年頃なんです。ここは精神だけでも大人な私が優しく見守ろうじゃない。そんな毎日が続いたある日の夜。

 セシルも自室に戻ってしまうほどの時間。私は何かを感じ、部屋の窓を開けました。夜空に浮かぶ月は綺麗で、それ以外何も視界に入らない。

 でも、窓の向こうに感じた違和感の正体はわかりませんでした。実はこの違和感。これで三日目なのです。三日間も似たような違和感に襲われていますが、その違和感の正体が何もわかりません。

「月…………確かこの世界の名前は…………」

衛星レティシア。夜の女神の名前だね。こんばんは美しい姫様」

 不意に後ろから聞こえる声。私はがばっと振り返ると、そこには同じくらいの大きさの男の子が黒いローブを着て立っていた。顔は見えないけど、なんとなく男の子と断定してしまった。ただの直感である。

「ここがどこかご存じかしら?」

 私が探るように尋ねると、彼はおどけるように答える。

「おいおい、迷い込んでこれる場所ではないだろう?」

「それもそうね」

 つまり彼は、わざとこの場にいると言うことになるわね。それって結構な危険人物じゃない?

 隙を見て助けを呼ぶべきか。それともこんな子供に大げさだろうか。さてどうしたものか。

「今日は君に協力を求めに来たんだ」

 どうするか悩んでいたところで、彼が私に話しかける。目的があってきたと考えるのであれば当然でしょう。

「協力? 何をどう? てゆうかなんで私?」

 完全に怪しいが、子供のすることだ。無謀な計画かもしれないし、ただの夢物語かもしれない。そんな幼稚なものではないと言うことは、薄々感じてはいても、どこかでそういう風に期待してしまう。危険なことじゃないと良いのだけれど。

「そう、僕は君に協力を求めている。具体的にはもう少し先、君が魔法学園に通う頃だ。なぜ君かという根拠は君に話しても理解してもらえないかもしれなけど、君が異質だからかな」

 私が異質? 確かに私は転生者ですし、何かしら異質なものを持っているのかもしれませんけど、それって外から見てわかるものなのかしら。

「それじゃ」

「ちょっと待って!」

 私が呼び止めると、彼は足を止める。

「まだ協力する内容まで聞いていないわ」

「…………おっと、そうだったね。君にして欲しいことはワンダーオーブを手に入れて欲しい」

「ワンダーオーブ!?」

「それじゃ」

 彼は黒靄に囲まれたと思ったら、その場から跡形もなく消えた。一体何者だったのだろうか。それよりも、目的が私と一致している。場合によっては邪魔者と言うことになる。

 それからもう一つ、ゲーム設定では、ワンダーオーブって存在が不明なもので、存在どころか何個あるかも不明な上に、王族貴族もその存在を知らないのが当然の代物。

 ジェラールルートバッドエンドエンディング後で、ワンダーオーブの存在を知っているとしたらジェラールとヒロインのみ。もちろん、この世界の一部の人間がその存在を知っていてもおかしくはないけど、彼は私の部屋まで出入りが自在な魔術師だ。

「魔術師? となると大賢者レイモン・デ・ベルニエの息子? いえ、あまりレイモンらしさを感じなかったわね。息子さんだから? 違うわよね。多分違う。なら明日は何としてもレイモンにあって確かめなければ」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...