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17話 現状の再確認
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今日はやけに宮殿の外が騒がしく感じた。宮殿の中で慌ただしく右往左往する人も少ない。
こういう落ち着いた日こそ、現状を振り返るのにちょうどいい。
私の父と母は乙女ゲームのメインヒーローと悪役令嬢で、父ジェラールと母エリザベートが結ばれるのはジェラールルートのバッドエンドのみ。
つまり、今私はバッドエンドが成立した世界にいる。そしてバッドエンドのエピローグは、最強の魔術師となって帰ってきた主人公が王国を滅ぼすこと。彼女は【赤】のワンダーオーブの力を行使して人知を超えた魔術師になっている。その上、数十年かけて修行をしてから復讐に来る。誰も止めることができないだろう。
そんな彼女に対抗するには、全部で七つ存在するワンダーオーブを一つでも多く所有することで、修業期間がほぼない状態で彼女を凌駕するしかない。残り六つのワンダーオーブを手に入れる方法は乙女ゲームで学習済みだけど、パートナーになる人間がもうすでに大人になってしまったことだ。
そこで私が目をつけたのは彼らの子供たち。元攻略対象たち六人の子供を最有力候補としてワンダーオーブを手に入れる。
【橙】【黄】【青】のワンダーオーブを手に入れるルートの攻略対象の子供たち、ミゲル、ビルジニ、アレクシスとお友達になることまでは成功した。パートナーが女の子のビルジニでも大丈夫かはわからないけど、私は乙女ゲームの主人公じゃないし、パートナーと恋愛する必要はないでしょう。
残るは、【緑】【藍】【紫】のワンダーオーブを手に入れるための最有力候補たちと接触すること。なんですけど…………一つだけ懸念点がある。
以前、私の部屋に侵入してきた黒ずくめの少年。彼は私に協力を求めてきた。それも彼の目的もワンダーオーブの入手。実際、私はヒロインから国を護れればいいのだけど、黒ずくめの少年の目的は不明。しかも私の目の前から一瞬で消える魔術。さりげなくセシルやビルジニ、魔術省の方々に聞いてみたのだけど、おそらく幻惑魔法に分類されるが、そういった魔法は確認されていないと言われました。
私は頭の中でこれまでの出来事や目的を整理して、やはり今はまず残りのパートナー候補者と接点を持つことしかできないという結論に至りました。それからできれば黒ずくめの少年ともう一度だけあって目的を再確認したいところなのよね。
さすがに私の部屋に無断で入ってこれる人間がいることを言ってしまえば、警戒されてもう会えないかもしれない。あるいは、護衛に来てくださった方々が無事ではすまないかもしれない。あの少年がどれほどすごいかは実際の所わかりもしませんが、そういう嫌な予感がする。
そんなことを考えていると、自室にくすんだ茶髪のメイド服を着た女性セシルが入ってきました。
「クリスティーン様、お茶の時間です」
「ありがとうございますセシル」
彼女の淹れてくれるお茶は日課にして毎日の楽しみの一つだ。そんなことを考えながら紅茶を口にする。お茶を口にしながら、今日感じた違和感である宮殿の外の雰囲気と宮殿内部の人の少なさをセシルに尋ねた。
「ああ、本日は建国祭なんですよ」
「建国祭? お祭りしてるの? 行ってもいい?」
「クリスティーン様は…………ダメですよ」
やはりそうなのだろう。そもそも連れて行ってもらえるなら事前にジェラールが教えにくるだろうし、姫として公務があればエリザベートが教えないはずがない。私はお留守番しかないのだろう。わかってはいたけど、やはり興味はある。それに、私の世話があるせいでここに縛られているセシルも可哀そうだ。
「クリスティーン様は偉いですよね。ダメですって一言いえばすぐに聞き入れてくださるんですもの。私の弟妹はダダをこねて大変でした」
「あっ……お母様の娘ですから」
上手い返しが思いつかなかった。元アラサーですだなんて口が裂けても言えない。それにしても建国祭ですか。確か乙女ゲームでもデートイベントして登場しましたね。王子であるジェラールはほとんど自由がなくて執事たちから逃げてお忍びデートするんですよね。そこで初めて城下町を歩くジェラールはなにもかもが新鮮で子供のようにはしゃぎ始める。…………初めて? ジェラールでも学園に通うまで城下町を歩く経験がなかったってことよね。
もしかして私、学園に通い始めるまで宮殿から出られないってことかしら? そして学園も全寮制で敷地からは出られない。まじか。やはり簡単に出入りすることができないのであれば他の候補者たちにはなんとか学園で親密になるしかないのか。いいえ、まだ出会う機会はあるはず。
こういう落ち着いた日こそ、現状を振り返るのにちょうどいい。
私の父と母は乙女ゲームのメインヒーローと悪役令嬢で、父ジェラールと母エリザベートが結ばれるのはジェラールルートのバッドエンドのみ。
つまり、今私はバッドエンドが成立した世界にいる。そしてバッドエンドのエピローグは、最強の魔術師となって帰ってきた主人公が王国を滅ぼすこと。彼女は【赤】のワンダーオーブの力を行使して人知を超えた魔術師になっている。その上、数十年かけて修行をしてから復讐に来る。誰も止めることができないだろう。
そんな彼女に対抗するには、全部で七つ存在するワンダーオーブを一つでも多く所有することで、修業期間がほぼない状態で彼女を凌駕するしかない。残り六つのワンダーオーブを手に入れる方法は乙女ゲームで学習済みだけど、パートナーになる人間がもうすでに大人になってしまったことだ。
そこで私が目をつけたのは彼らの子供たち。元攻略対象たち六人の子供を最有力候補としてワンダーオーブを手に入れる。
【橙】【黄】【青】のワンダーオーブを手に入れるルートの攻略対象の子供たち、ミゲル、ビルジニ、アレクシスとお友達になることまでは成功した。パートナーが女の子のビルジニでも大丈夫かはわからないけど、私は乙女ゲームの主人公じゃないし、パートナーと恋愛する必要はないでしょう。
残るは、【緑】【藍】【紫】のワンダーオーブを手に入れるための最有力候補たちと接触すること。なんですけど…………一つだけ懸念点がある。
以前、私の部屋に侵入してきた黒ずくめの少年。彼は私に協力を求めてきた。それも彼の目的もワンダーオーブの入手。実際、私はヒロインから国を護れればいいのだけど、黒ずくめの少年の目的は不明。しかも私の目の前から一瞬で消える魔術。さりげなくセシルやビルジニ、魔術省の方々に聞いてみたのだけど、おそらく幻惑魔法に分類されるが、そういった魔法は確認されていないと言われました。
私は頭の中でこれまでの出来事や目的を整理して、やはり今はまず残りのパートナー候補者と接点を持つことしかできないという結論に至りました。それからできれば黒ずくめの少年ともう一度だけあって目的を再確認したいところなのよね。
さすがに私の部屋に無断で入ってこれる人間がいることを言ってしまえば、警戒されてもう会えないかもしれない。あるいは、護衛に来てくださった方々が無事ではすまないかもしれない。あの少年がどれほどすごいかは実際の所わかりもしませんが、そういう嫌な予感がする。
そんなことを考えていると、自室にくすんだ茶髪のメイド服を着た女性セシルが入ってきました。
「クリスティーン様、お茶の時間です」
「ありがとうございますセシル」
彼女の淹れてくれるお茶は日課にして毎日の楽しみの一つだ。そんなことを考えながら紅茶を口にする。お茶を口にしながら、今日感じた違和感である宮殿の外の雰囲気と宮殿内部の人の少なさをセシルに尋ねた。
「ああ、本日は建国祭なんですよ」
「建国祭? お祭りしてるの? 行ってもいい?」
「クリスティーン様は…………ダメですよ」
やはりそうなのだろう。そもそも連れて行ってもらえるなら事前にジェラールが教えにくるだろうし、姫として公務があればエリザベートが教えないはずがない。私はお留守番しかないのだろう。わかってはいたけど、やはり興味はある。それに、私の世話があるせいでここに縛られているセシルも可哀そうだ。
「クリスティーン様は偉いですよね。ダメですって一言いえばすぐに聞き入れてくださるんですもの。私の弟妹はダダをこねて大変でした」
「あっ……お母様の娘ですから」
上手い返しが思いつかなかった。元アラサーですだなんて口が裂けても言えない。それにしても建国祭ですか。確か乙女ゲームでもデートイベントして登場しましたね。王子であるジェラールはほとんど自由がなくて執事たちから逃げてお忍びデートするんですよね。そこで初めて城下町を歩くジェラールはなにもかもが新鮮で子供のようにはしゃぎ始める。…………初めて? ジェラールでも学園に通うまで城下町を歩く経験がなかったってことよね。
もしかして私、学園に通い始めるまで宮殿から出られないってことかしら? そして学園も全寮制で敷地からは出られない。まじか。やはり簡単に出入りすることができないのであれば他の候補者たちにはなんとか学園で親密になるしかないのか。いいえ、まだ出会う機会はあるはず。
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