76 / 228
75話 【藍】のワンダーオーブ
しおりを挟む
魔狼の子供が元気になるにはどうすればよいかジョアサンと二人で話し合ったり、スザンヌに餌になるお肉を用意してもらったり、まあそのおかげで魔狼はどんどん元気になり、やっと四つ足で立ち上がることまで回復致しました。
「ウィルフリード!」
「ガウ!」
魔狼の子供には親愛を込めてウィルフリードと名付け、すっかりウィルフリードも私に懐いています。血塗れだった赤い毛並みは、止血し、綺麗にあらってあげたことでその白く雪のような体毛を顕わにしました。
「ウィルフリード、ご飯よ。たくさん食べてね」
「肉ばかり与えすぎじゃないか?」
「え? でも肉食でしょ?」
私がたくさんお肉をウィルフリードに与えながら、ジョアサンに視線を向ける。ジョアサンは魔狼が雑食であることを記された本のページを私に見せつける。なるほど、野菜も食べれたりするのね。そういえば犬とかでも野菜は食べれるのよね。でもダメな物とかもあるし、下手な知識で与えるのは難しいわね。
二人で試行錯誤しながら、ウィルフリードのご飯を用意してあげたり、体を綺麗にしてあげたり、歩く練習を手伝ったりとしてあげて、数日。
ついにウィルフリードはよろめくことなく歩けるところまで回復していました。
「ジョアサンはよくウィルフリードのこと助けてくれたわね。最初は魔狼だから殺そうとしていたでしょ?」
「まあ、最初はね。いまでも何かあれば殺すべきだと思っているよ」
私はウィルフリードを護るように両腕で抱きかかえた。ウィルフリードは嬉しそうに甘え始めるが、今はそうじゃないのごめんね。
「安心してくれクリスティーン姫。今のウィルフリードならそんな事しないよ。魔狼がこんなに人懐っこいだなんて知らなかった」
いえ、多分これは私達が甲斐甲斐しくお世話をしたおかげな気がしますよ。魔狼が懐かないなんて常識。
「僕が魔狼を助けようと思ったのは、クリスティーン姫が、王族であるにも関わらずに魔物の血で汚れることにためらうことなく看病し始めたからだ。僕は自分が恥ずかしくなった。制服を汚してまで助ける命じゃないと勝手に切り捨てていたんだ」
ああ、そんなこと。そうね、言われてみれば姫らしくはないわね。それでも、きっとこれがクリスティーンらしさであると思います。確かにマッチポンプでしたが、私はグロい血塗れの現場で自分の制服が汚れることは躊躇いませんでした。
「貴女の慈悲深さが、僕を動かしたんだ」
私が慈悲深さを体現してどうするのよ。貴方の役目よジョアサン。しかし、私達の目の前で聖水の噴水は藍色の光を放ち始めた。
『よくぞ最後まで見捨てることなく命を助けました』
「え?」
目の前には紫紺の瞳に金髪の女神が現れていた。間違いないこの人は【藍】のワンダーオーブを授けてくれる神様の一人。名前なんだっけ?
『我が名はヨランド。汝ら二人は、我が魂を授かるのにふさわしい。より魔力が強い方は…………女子の方だな』
そういって女神ヨランドは私の目の前にビー玉ほどの大きさの宝珠を浮かせる。
『手に取りなさいな』
「え? は、はい」
これがワンダーオーブ? 思ったより小さいのね。
『その力は、二人の人間からの魔力供給を有します。決して一人で使おうとしてはいけません』
「一人で使うとどうなるのかしら?」
『浄化のフィードバック。とだけ伝えておこうかしら』
女神はこれ以降の登場はないはず。時代ごとにワンダーオーブを授けられる人間を待って眠る。…………でもそもそも女神って何? ワンダーオーブってどうして授けるの? ゲームではろくに語られていない裏設定。あるいは続編とかで保管するつもりだったのでしょうね。いまはわからないけど、今私の手の平には、間違いなくワンダーオーブがある。これが憤怒を浄化する【藍】のワンダーオーブ。
片腕で抱きかかえられたウィルフリードは私の体に自身体をこすりつけ、ジョアサンはさきほど現れた女神に対して状況が理解できていないのか目を白黒させていた。
「ジョアサン、女神って信じます?」
「信じなきゃアレの説明ができないよ……それに一応教会の人間だよ僕」
教会……もしかして女神やワンダーオーブのことがわかるかも。どちらにせよ、ワンダーオーブ入手の件はブランクに伝えなきゃね。
「ウィルフリード!」
「ガウ!」
魔狼の子供には親愛を込めてウィルフリードと名付け、すっかりウィルフリードも私に懐いています。血塗れだった赤い毛並みは、止血し、綺麗にあらってあげたことでその白く雪のような体毛を顕わにしました。
「ウィルフリード、ご飯よ。たくさん食べてね」
「肉ばかり与えすぎじゃないか?」
「え? でも肉食でしょ?」
私がたくさんお肉をウィルフリードに与えながら、ジョアサンに視線を向ける。ジョアサンは魔狼が雑食であることを記された本のページを私に見せつける。なるほど、野菜も食べれたりするのね。そういえば犬とかでも野菜は食べれるのよね。でもダメな物とかもあるし、下手な知識で与えるのは難しいわね。
二人で試行錯誤しながら、ウィルフリードのご飯を用意してあげたり、体を綺麗にしてあげたり、歩く練習を手伝ったりとしてあげて、数日。
ついにウィルフリードはよろめくことなく歩けるところまで回復していました。
「ジョアサンはよくウィルフリードのこと助けてくれたわね。最初は魔狼だから殺そうとしていたでしょ?」
「まあ、最初はね。いまでも何かあれば殺すべきだと思っているよ」
私はウィルフリードを護るように両腕で抱きかかえた。ウィルフリードは嬉しそうに甘え始めるが、今はそうじゃないのごめんね。
「安心してくれクリスティーン姫。今のウィルフリードならそんな事しないよ。魔狼がこんなに人懐っこいだなんて知らなかった」
いえ、多分これは私達が甲斐甲斐しくお世話をしたおかげな気がしますよ。魔狼が懐かないなんて常識。
「僕が魔狼を助けようと思ったのは、クリスティーン姫が、王族であるにも関わらずに魔物の血で汚れることにためらうことなく看病し始めたからだ。僕は自分が恥ずかしくなった。制服を汚してまで助ける命じゃないと勝手に切り捨てていたんだ」
ああ、そんなこと。そうね、言われてみれば姫らしくはないわね。それでも、きっとこれがクリスティーンらしさであると思います。確かにマッチポンプでしたが、私はグロい血塗れの現場で自分の制服が汚れることは躊躇いませんでした。
「貴女の慈悲深さが、僕を動かしたんだ」
私が慈悲深さを体現してどうするのよ。貴方の役目よジョアサン。しかし、私達の目の前で聖水の噴水は藍色の光を放ち始めた。
『よくぞ最後まで見捨てることなく命を助けました』
「え?」
目の前には紫紺の瞳に金髪の女神が現れていた。間違いないこの人は【藍】のワンダーオーブを授けてくれる神様の一人。名前なんだっけ?
『我が名はヨランド。汝ら二人は、我が魂を授かるのにふさわしい。より魔力が強い方は…………女子の方だな』
そういって女神ヨランドは私の目の前にビー玉ほどの大きさの宝珠を浮かせる。
『手に取りなさいな』
「え? は、はい」
これがワンダーオーブ? 思ったより小さいのね。
『その力は、二人の人間からの魔力供給を有します。決して一人で使おうとしてはいけません』
「一人で使うとどうなるのかしら?」
『浄化のフィードバック。とだけ伝えておこうかしら』
女神はこれ以降の登場はないはず。時代ごとにワンダーオーブを授けられる人間を待って眠る。…………でもそもそも女神って何? ワンダーオーブってどうして授けるの? ゲームではろくに語られていない裏設定。あるいは続編とかで保管するつもりだったのでしょうね。いまはわからないけど、今私の手の平には、間違いなくワンダーオーブがある。これが憤怒を浄化する【藍】のワンダーオーブ。
片腕で抱きかかえられたウィルフリードは私の体に自身体をこすりつけ、ジョアサンはさきほど現れた女神に対して状況が理解できていないのか目を白黒させていた。
「ジョアサン、女神って信じます?」
「信じなきゃアレの説明ができないよ……それに一応教会の人間だよ僕」
教会……もしかして女神やワンダーオーブのことがわかるかも。どちらにせよ、ワンダーオーブ入手の件はブランクに伝えなきゃね。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる