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番外編・クリスティーン六歳 ジェラールの照れ隠し
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これは私がまだ六歳の時の話。母の妊娠が発覚してから私達の身の回りは激変しました。私付の侍女だったセシルは主に母とともに行動するようになり、私の元には小さな小さなメイドがやってきました。
茶髪にツインテール。緑眼の幼女。年も私と同じ六歳。幼女サイズのメイド服はこないだセシルが作っていたものに見えます。
「初めまして。スザンヌと申します」
「よろしくスザンヌ。知っていると思いますが、私はクリスティーンです」
「ええ、存じています」
緊張しているのかな? カチンコチンにも見える彼女を見て微笑ましくも、どこかあれ? もしかしてわざとかなと言いたくなる冷たい態度。それでも、まだ幼い彼女に厳しくしようとも思わないし、なんなら今くらいの距離間の方がちょっと新鮮で楽しいと思えました。
まだ幼い彼女って人から見たら私も六歳だったわね。
「お母様のところに行きましょう? 付いて来て頂戴」
「畏まりました」
ロボットかな? まあ、これから仲良くやっていけますよね? あのジェラールやエリザベートとも仲良くなれた私ですし、不可能ではないはず。
両親の住む宮殿に向かうと、お腹を大きくしたエリザベートが少し疲れた表情でベッドに横になっていました。
「お母様!」
私の入室に気付いた彼女は、少しだけ微笑むも、まだ無理していることが伝わります。別に私は構いませんが、エリザベートが辛そうなのは頂けないわね。
「おいで」
エリザベートはいつもの睨みつけるような表情ではなく、じーっと弱々しく私を見つめて私に向けて両手を伸ばしてきました。可愛いなおい。
私は小さい体でトテトテと歩き、ベッドによじ登ろうとすると、母の傍に控えていたセシルに抱き上げられてベッドに乗せて貰いました。
「お母様、私にできることはありますか?」
「貴女は隣にいてくれるだけでいいわ」
辛そうにしているエリザベートが、ベッドに座る私の体に手を伸ばし、手が触れたとこから適当に撫で始めます。大体腕ですけど。
「そういえば陛下も時期に戻られますよ」
セシルがそういうと、エリザベートは突然飛び起きようとする。慌てて私やセシル、周囲のメイド達がエリザベートを抑え込みます。
「落ち着いてください王妃様!」
「嫌! ちょっとすぐに髪とメイクをなんとかして!」
「いつもご一緒に眠っているじゃないですか!!」
「夜間と昼間は違うのよ!!」
突然暴れだす母をなんとかなだめ、慌ててメイクと髪を整え直しています。私とスザンヌは特にできることもなくジェラールが部屋に早く入ってこない様に部屋の外で見張っていました。
「王妃様はなぜあそこまで?」
「貴女にもわかる時が来るわスザンヌ」
「姫様は同い年ですよね?」
…………やめてくれ。その発言はアラサーに効く。まあ、恋愛経験ないけどね。
しばらくしてものすごい速足でジェラールがこちらに接近してきましたが、私に気付いた途端、いきなり普通の歩き方に戻りました。うちの両親可愛すぎないか?
「どうされましたお父様?」
「クリスティーンか? 今日の執務がかなり、とても、結構前に終わったからゆったりと歩いて自室に戻ってきたところだ。ついでに妊娠しているエリザベートの様子も見に来た」
なるほど、今日の執務はめちゃくちゃ早く終わらせて、走り出したいところを我慢して速足で自室に戻ってエリザベートとの時間を確保しようとしていたのね。しっかし、そんなツンデレみたいな発言をするのなら、もう少し照れた表情で言いなさいよね。まあ、その無表情に近いところがジェラールらしいんですけどね。
私とスザンヌとジェラールの三人で適当に会話をしていたところで、部屋の扉が開きセシルが顔を覗き込んできました。
「あらあらお騒がしいと思いましたら、陛下、姫様どうぞお部屋に」
どうやら母のメイクが終わったようです。なんの断りもなく私を抱きかかえたジェラールは、そのまま入室し、セシルとスザンヌもあとに続きました。
「エリザベート。調子はどうだ? クリスティーンがものすごく気にしていたぞ」
「え? クリスティーンがですか?」
エリザベートは、私を見て、貴女さっきまでいたじゃないと言いたげな目で私を見つめます。いえ、お母様。お父様は恥ずかしいから私が気にしていたことにしたいのですよ?
「ええ、大丈夫よクリスティーン」
エリザベートはジェラールに抱きかかえられた私の頭を優しく撫でます。いや、だから気にしているのは貴女の夫で私の父です。
だめだ、想い合っているのに、まるでお互いの気持ちを理解できていない。でもそんな両親を見ていて、温かい気持ちになる私は、それでもいいかと思いました。
いつか互いが素直になれる日が来てしまうと、きっと私は無糖の紅茶しか飲めなくなります。そんな甘々な二人も見てみたいなと思いつつも、今の二人の関係性もなんだか楽しいと思えました。ああ、私も早くお姉ちゃんにならないかな。そしたら家族四人で…………もっと色々な場所に出かけたいな。
茶髪にツインテール。緑眼の幼女。年も私と同じ六歳。幼女サイズのメイド服はこないだセシルが作っていたものに見えます。
「初めまして。スザンヌと申します」
「よろしくスザンヌ。知っていると思いますが、私はクリスティーンです」
「ええ、存じています」
緊張しているのかな? カチンコチンにも見える彼女を見て微笑ましくも、どこかあれ? もしかしてわざとかなと言いたくなる冷たい態度。それでも、まだ幼い彼女に厳しくしようとも思わないし、なんなら今くらいの距離間の方がちょっと新鮮で楽しいと思えました。
まだ幼い彼女って人から見たら私も六歳だったわね。
「お母様のところに行きましょう? 付いて来て頂戴」
「畏まりました」
ロボットかな? まあ、これから仲良くやっていけますよね? あのジェラールやエリザベートとも仲良くなれた私ですし、不可能ではないはず。
両親の住む宮殿に向かうと、お腹を大きくしたエリザベートが少し疲れた表情でベッドに横になっていました。
「お母様!」
私の入室に気付いた彼女は、少しだけ微笑むも、まだ無理していることが伝わります。別に私は構いませんが、エリザベートが辛そうなのは頂けないわね。
「おいで」
エリザベートはいつもの睨みつけるような表情ではなく、じーっと弱々しく私を見つめて私に向けて両手を伸ばしてきました。可愛いなおい。
私は小さい体でトテトテと歩き、ベッドによじ登ろうとすると、母の傍に控えていたセシルに抱き上げられてベッドに乗せて貰いました。
「お母様、私にできることはありますか?」
「貴女は隣にいてくれるだけでいいわ」
辛そうにしているエリザベートが、ベッドに座る私の体に手を伸ばし、手が触れたとこから適当に撫で始めます。大体腕ですけど。
「そういえば陛下も時期に戻られますよ」
セシルがそういうと、エリザベートは突然飛び起きようとする。慌てて私やセシル、周囲のメイド達がエリザベートを抑え込みます。
「落ち着いてください王妃様!」
「嫌! ちょっとすぐに髪とメイクをなんとかして!」
「いつもご一緒に眠っているじゃないですか!!」
「夜間と昼間は違うのよ!!」
突然暴れだす母をなんとかなだめ、慌ててメイクと髪を整え直しています。私とスザンヌは特にできることもなくジェラールが部屋に早く入ってこない様に部屋の外で見張っていました。
「王妃様はなぜあそこまで?」
「貴女にもわかる時が来るわスザンヌ」
「姫様は同い年ですよね?」
…………やめてくれ。その発言はアラサーに効く。まあ、恋愛経験ないけどね。
しばらくしてものすごい速足でジェラールがこちらに接近してきましたが、私に気付いた途端、いきなり普通の歩き方に戻りました。うちの両親可愛すぎないか?
「どうされましたお父様?」
「クリスティーンか? 今日の執務がかなり、とても、結構前に終わったからゆったりと歩いて自室に戻ってきたところだ。ついでに妊娠しているエリザベートの様子も見に来た」
なるほど、今日の執務はめちゃくちゃ早く終わらせて、走り出したいところを我慢して速足で自室に戻ってエリザベートとの時間を確保しようとしていたのね。しっかし、そんなツンデレみたいな発言をするのなら、もう少し照れた表情で言いなさいよね。まあ、その無表情に近いところがジェラールらしいんですけどね。
私とスザンヌとジェラールの三人で適当に会話をしていたところで、部屋の扉が開きセシルが顔を覗き込んできました。
「あらあらお騒がしいと思いましたら、陛下、姫様どうぞお部屋に」
どうやら母のメイクが終わったようです。なんの断りもなく私を抱きかかえたジェラールは、そのまま入室し、セシルとスザンヌもあとに続きました。
「エリザベート。調子はどうだ? クリスティーンがものすごく気にしていたぞ」
「え? クリスティーンがですか?」
エリザベートは、私を見て、貴女さっきまでいたじゃないと言いたげな目で私を見つめます。いえ、お母様。お父様は恥ずかしいから私が気にしていたことにしたいのですよ?
「ええ、大丈夫よクリスティーン」
エリザベートはジェラールに抱きかかえられた私の頭を優しく撫でます。いや、だから気にしているのは貴女の夫で私の父です。
だめだ、想い合っているのに、まるでお互いの気持ちを理解できていない。でもそんな両親を見ていて、温かい気持ちになる私は、それでもいいかと思いました。
いつか互いが素直になれる日が来てしまうと、きっと私は無糖の紅茶しか飲めなくなります。そんな甘々な二人も見てみたいなと思いつつも、今の二人の関係性もなんだか楽しいと思えました。ああ、私も早くお姉ちゃんにならないかな。そしたら家族四人で…………もっと色々な場所に出かけたいな。
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