BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
82 / 228

80話 諦めないものと欲しいものと今は手が出せないもの

しおりを挟む
 放課後、ジャンヌさんには先に図書館に行ってもらい、私はカトリーヌさんと二人でどこか二人きりになれる場所に向かうことにしました。

 横顔を見れば見るほど、彼女の顔はエリザベートに似ているように見える。むしろその紅い瞳はエリザベートのものそのものと疑うほどだ。

 もしや私達は意外と親戚関係だったりするのだろうか。エリザベートの実家もカトリーヌさんの実家も公爵家ですし、あり得ないこともないですよね。紅い眼は遺伝なのね。

「何かしら?」

「いいえ、貴女の瞳って綺麗な赤なのね」

「…………? それが何か?」

「母も同じ目なのよ」

「エリザベート王妃殿下が?」

「あったことないの?」

「遠目で見たことならあるわ。瞳の色までわかる距離まで近づいたことないもの」

 なるほど、確かに瞳の色なんてある程度近づかないとわからないものよね。カトリーヌさんも自分の瞳の色とエリザベートの瞳の色が一緒だとは思っていなかったみたいですが、それ以上は彼女も考えることはありませんでした。

「貴女って普通に話してくれるのね」

「公爵令嬢ごときが姫を無視できる訳ないでしょ?」

「……貴女って割と最初のころから私に反発的でしたし、もう少し好きにしても今更としか思いまいませんよ?」

「え? 私がですか? 姫様の勘違いでは?」

 えー? 挑発してきたり、ライバル意識バリバリで絡んで来たりしたあれ無自覚なんですか? まあ、もうそんなことなんて関係ないんですけどね。

 階段を登り切り、教室のある南棟の校舎の屋上に私とカトリーヌさん二人が向かいある。

「誰もいませんね」

「ではここで宜しいかしら? 話して頂戴。カトリーヌさん、私が負けた時の貴方のお願いを」

 私がそういうと、カトリーヌさんはどこか遠くを見つめる。言い出しにくいことなのでしょうか。私もジャンヌさんを待たせている以上、そこまで時間を取りたくないんですけど。

「私、一目ぼれでしたの」

「…………?」

「入学式の日、貴女はリビオ様と二人で登校されていましたよね?」

 …………あー、全てが繋がりましたわ。つまりカトリーヌさんが私に対抗意識を持っていたのは、入学式の日にリビオと登校してしまったせいなのね。

「つまりカトリーヌさんはリビオに一目ぼれして、私に嫉妬しているのね」

「…………まあ、そう捕らえても問題ありませんわ」

「私とリビオの間に恋愛関係なんて…………」

 ないのか? 少なくとも私にはない。でもリビオは? まあ、当人の気持ちの問題ですし私が深く突っ込むことではありませんよね。

「リビオ様は姫様のことをお慕いしています。ですから私が勝った時は金輪際、リビオ様と関わらないでくださりますか?」

「え? …………え?」

 それはマズイ。私はまだ【緑】のワンダーオーブを手に入れていない。それにリビオが私のことを好きですって? 何かの勘違いとかではなくて?

 これもし負けることを想定したら、レポート期間中に【緑】のワンダーオーブを手に入れる必要がありますよね? …………いえ、そんな簡単な話じゃないですよ。

 カトリーヌさんの気持ちはわからないこともありません。幼馴染の姫様がいる男に一目ぼれなんてしてしまったからこそ、私に勝って自信が欲しいんだ。私だってあの人に恋をしていいって。なんだ、かなり乙女じゃん。

 別に恋する資格なんて誰でも平等にあるべきですが、彼女は自信が欲しいのね。

 本当はこんなばかばかしい勝負なんて受けたくないのだけれど、彼女は私に明かすつもりのない恋心まで明かした以上、私も正々堂々と受けて、正面からぶつかってあげるべきよね。

「ではこちらが勝った場合の条件も受けて頂きますよね?」

「…………構わないわ」

 でもね、カトリーヌさん。私は【緑】のワンダーオーブも、友人と過ごす時間も諦められないのよね!!

「私が勝ったら、貴女の一番の親友は私。私の末席の友人は貴女。どう?」

「はぁ!? なによその差。そこは互いに大親友にしてよ」

「私は負けたら友人を失うのに、なんで貴女が勝って姫である私の一番の親友にしなければいけないのですか?」

「…………まあ、いいわ。勝つのは私。その条件でも関係ない」

 カトリーヌさんはさっさと屋上から出ていってしまう。私はその背中を眺めながらふと思った。

 リビオが私のことを好きね。あまり考えたことなんてありませんでしたが、幼馴染として九年も過ごしたのですから、そういう風に思う人が現れてもおかしくはないのよね。どうしましょう。急に告白なんてされてしまったら、なんて答えれば?

 もしかしたらミゲルやアレクシスもなんてことになっていたらどうしましょう。姫の浮気疑惑発覚とか、イケメンハーレムを作っていたとかそういう噂話嫌よ。

 やっぱり地位のある女の友人って必要よね。

 恋か。私が今はまだなんて思っていても、誰かの中ではもう始まっている物なのね。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

処理中です...