BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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117話 盗賊団からの脱走

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 冷たい土を撫でながら、現状の確認をします。手足は拘束されていません。

 しかし、私の目の前には頑丈そうな鉄格子がありました。

 魔法は制限されていますが、器具の質が悪いのか微弱ですが扱うことができます。

 灯りは松明のみ。薄暗く牢の中を見渡すにはギリギリかもしれない。

 よく見れば牢屋の端に、誰かが横たわっていました。

 恐る恐るそれに近づくと、ココアのような色の茶髪の女性。そこには昨日の服のままのメラニーさんが苦しそうに眠っていました。

「え? メラニーさん? なんで昨日の服を?」

「ん? …………んー?」

 メラニーさんを揺さぶると、彼女はゆっくりと目を覚まします。

「え? 姫様? じゃああれは夢!? …………じゃない」

 どうやらメラニーさんは一度目を覚ましているみたいね。私を見て実は捕まったことを夢だと思った。けど違った。彼女の表情が落胆していることから、そうだろうとうかがえる。

「そんなことより、なぜ貴女は昨日と同じ服を着ているの?」

「ということは…………一日経過したのですね」

 まって、それってつまり私達が今日見ていたメラニーさんは…………幻惑魔法!?

 メラニーさんの話に寄りますと、昨日の移動中の昼食時に意識を失ってからそこから先の記憶がないそうです。

 つまり、それ以降の彼女はずっと偽物だった。

 幻惑魔法の使い手となるとあの場にいたのオリバーとそれからラクダリレーでリビオを魅了した彼女かしら。

 幻惑魔法の適正が高い魔法使いは、自分よりレベルの低い幻惑魔法に違和感を感じます。

 それでこないだの地図の違和感を気付くことができるのです。

 つまりあの場にいて一番幻惑魔法の扱いが上手い人間がメラニーさんの偽物を作り出した。あるいは装った術者です。

 いえ、待って。私は詳しく知りませんけど、波動魔法と守護魔法の適性が高いクラスを束ねるクラス担任のアンヌ先生の適正も波動魔法と守護魔法でした。

「メラニーさん。Cクラス担任の先生は幻惑魔法を使えるのかしら?」

「ナタリー先生ですか? はい、幻惑魔法と時空魔法を使えます」

 Cクラス担任ナタリー・オブ・ラダニューは、ロポポロ公国出身のピンクブロンドの髪の女性だ。

 人当たりがよくフワフワした印象の女性で、優しい魔女だと生徒たちに慕われていた。

 つまり、私に石化をかけた人間は別人。あるいはメラニーさんを装うために用意された…………いえ、私を捕獲する為に選ばれた術者だ。

 ナタリー先生が術者なら、おそらくこのラクダリレーも、はじめから仕組まれたものなのでしょう。

 一瞬でも変な競技だけど、アンヌ先生ならやりそうだなって思って受け入れていた私が馬鹿でした。

 いえ、どんなに変な競技でも、疑う余地なんてそもそもないんですけどね。

 改めて確認しましたが、メラニーさんの魔法適正は幻惑魔法のみらしい。

 偽物があの大きな岩の後ろで状態魔法を使ったのは、みんなから隠れて私を攫うだけが目的じゃなく、状態魔法を使った段階で偽物とばれるからということね。

「拘束具で魔法は封印されていますか?」

「はい、今は何も使えそうにないです。姫様もですよね?」

「私は微弱だけど扱えそうね。だから一緒に抜け出しましょう?」

 私は自分の拘束具に対して時空魔法を行使する。

「時空魔法、経年劣化エイジング

 私の腕にまとわりついていた拘束具をボロボロにしたところで波動魔法でぶち壊す。そして完全に拘束具から解放された私は、同じ時空魔法を行使し、メラニーさんの拘束具を一瞬で風化させた。

「あら? 拘束から解除されたら魔力の威力が」

「え? 経年劣化ってもう少しゆっくり? え?」

 Cクラスで普段から時空魔法を見る機会があるメラニーさんは、目の前で起きたことを理解できていない様子。

 いつの間にか私の魔力が…………そうか。私はもしもを想定して、馬上服の内ポケットにしまい込んだ二つのワンダーオーブのことを思い出しました。

 確か【緑】のワンダーオーブは所持者の魔力を高めるんでしたよね。なんだ、装備の力か。急に力に目覚めたのかと思いました。

 所持者の魔力を高めるワンダーオーブね。もしかして私が拘束具をつけていても微弱ながら魔法が使えたのはワンダーオーブのおかげということ? まあ、ラッキーってことで。

「逃げ出すわよメラニーさん。広範囲で幻惑魔法をお願いできるかしら」

「はい、幻惑魔法、消音《ミュート》」

 幸いまだここに牢番は来ていない。私達周辺の音が、幻惑魔法によってかき消されます。その間に鉄格子も時空魔法と波動魔法の合わせ技で破壊。

 その後、脱出方法がバレない様に牢屋を時空魔法で再生し、私達は左右に別れた通路の右に向かって走り始めました。

 しかし、順調だったのもここまで広い空洞の手前で足を止めると、そこには松明を持った男たちが数人で鍋を囲んでいました。

 ここを通れば間違いなくバレる。

 メラニーさんの幻惑魔法で姿を消すことにしましたが、この盗賊団にはメラニーさん以上に幻惑魔法の使い手がいてもおかしくない。

 極力視界に揺らぎが出ないように、私達はゆっくり移動します。そんな時でした。

「おい! 姫と小娘がいねぇぞ!!」

 どうやら私達が向かった通路と反対側から来た見張りに私たちがいないことがバレたみたいだ。

 鍋を囲んでいた男たちが周囲をきょろきょろと首を動かして探し始めます。

 その中の一人、私達に背を向けていた男が、私達のいる場所を見て、首を動かすことを辞めました。

 バレた!?

「時空魔法、加速《アクセル》」

 私はメラニーさんの腕を引っ張って超加速を試みます。

「守護魔法、監獄《プリズン》」

 別の男による牢獄の結界。走り出した私はその結界に正面衝突してしまい、メラニーさんごと転んでしまいました。

 これを守護魔法とはよくいえたものね。こんなのシャークウォッチングでしか守護してくれないじゃない。

「姫様大丈夫ですか!?」

「ええ」

 しかし、私達を閉じ込めた魔法の結界の周囲には、合計七名の男たちが取り囲んでいました。

 これはマズイわね。
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