BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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121話 光の魔術師と動き出す影

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 ジャンヌさんの手から放たれた波動ウェーブは、誰の視界に留まることなく、斧を貫き、柄が折れた斧の刃が地面にごとりと落ちる。

 誰も何が起きているか説明ができない。そして、彼女から放たれた魔力量は明らかに少ない。

 彼女から感じる魔力から、莫大な量の魔力なんて微塵も感じない。いつもの誰も怪我しない程度の威力の波動ウェーブとなんら変わりない魔力の流れでした。

「光か」

 ブランクがぽつりとつぶやく。そしてなるほどと呟くアンヌ先生。

「ジャンヌさんはぁ~、波動を光に変換する才能があったみたいと言うことですねぇ~」

 光。彼女の波動の速度はアンヌ先生の音速を超えて、光速の域に到達した。

 聞いたことがあるわ。豆腐の角に頭をぶつけて死ぬには、音速の速度が必要だということ。誰かが試したわけではありませんけど。

 つまり、どれだけ柔らかいジャンヌさんの波動だとしても、光速で射出されれば別と言うこと。

 それは、斧の柄をいともたやすく貫く光の矢になる。そして光には熱量もあり、ジャンヌさんができることは私達のような普通の波動魔法使いの域を超えた。

 彼女はクラス最下位からクラスでもトップクラスの魔術師になったのよ。私、下剋上されてる?

 そして斧を持って突進してきた男は、折れた斧を見てその場に膝を落としました。こちらは四人。向こうは一人。彼はもう諦めたのでしょう。

 行動不能になった面々は。全員がブランクの陰に取り込まれる。

「連れていくんだろ? この方が楽だ」

「貴方…………いえ、ありがとうございます」

 アンヌ先生は、目の前にいるブランクが、私達と違う理の魔法を使っていることに気付いていました。

「姫殿下? あとで報告してくださいね」

「…………はい」

 いつもより低く、そしてはっきりとした声でアンヌ先生に言われ、私は一気に背筋が伸びて、少し高い声で返事をしてしまいました。

 さて、アンヌ先生にブランクのことはなんて説明しましょうか。そう考えていましたが、ブランクはあまり気にしていない様子。

 一度、彼と相談しましょうか。

 移動も魔法陣を使い、騎士団に賊を叩きだす時もブランクは陰から雪崩のように放出し、事情の知らない衛兵から悲鳴が上がりました。

「貴方、こんなに表立って動いて良いの?」

「ああ、問題ない。誰も俺の事なんて信じねーよ」

 いえ、でも現に見ている人はいますし、アンヌ先生なんてめちゃくちゃ睨んできていますよ。

 そして私たち四人は宿に戻る前に先生と一緒に広場に向かいました。誰も歩いていない大通りの、噴水の淵に私とジャンヌさん、それからブランクが座らされます。

「まずは皆さま、ありがとうございました」

 アンヌ先生が深々と頭を下げ、そして次にブランクに視線を向ける。

「貴方は何者ですか?」

「俺の正体か? 残念だが言えないね。しいて言うなら、いてはいけない存在だ。ちなみに、クリスティーンを尋問しても拷問しても俺の正体は割れないぜ?」

「姫に拷問はしませんよ」

 尋問はするのですね。

「あの魔法は?」

「…………そうだな。あえてネーミングするなら古代魔法か? この星が今の形になる前に使われていた魔法だ」

 何を言っているのでしょうか。アンヌ先生もジャンヌさんもピンと来ていない様子。そしてブランクは呟く。

「…………大地というべきだったか。まあ、どっちでもいい」

 星から大地と言い換えたブランク。私の中で、彼に対する一つの疑問がどんどん繋がっていった。

「ああ、そうそう。このことは自由に言いふらしてくれてもいいぜ? 誰も信じやしないからな」

 そう言ったブランクは私達の前で黒い靄になって消える。消えた後にアンヌ先生は一度私の方を見ますが、大きなため息をついただけでした。

 やっと解放されるのね。

 そう思ったのですが、次に明け方まで、私とジャンヌさんは危険地帯に不審者と共に訪れたことでお説教されました。

 長い長い魔法遠征でしたが、不測の事態と教員の裏切り。

 その他にも色々考慮され、中断という形で、私達はA班D班共に強制送還されることになりました。

 何も知らなかったA班の他の面々は、アンヌ先生が一人で帰ってきたと信じています。

 みんなでアンヌ先生を褒めちぎっている中、私とジャンヌさんは二人、顔を合わせて笑ってしまいました。

 後日、捕らえられた賊の証言より、一部のメンバーと、私達を襲う様に指示したものたちがまだ捕まっていないことが証言され、彼らの似顔絵による指名手配書が配られるのでした。

 王宮の自室で、なんとなく手配書を眺めると、明らかに人相悪く描かれていて、これでは見つけられないでしょうね。そう思ってしまいました。

 わかった特徴は大雑把な容姿と名前と適性魔法だけ。

 リーダーのフレデリック・ド・デュラン。ブロンドの髪で長さは肩まで伸ばしている様子。適正魔法は波動魔法と付与魔法。

 イザベル・オブ・ブラッスール。アイボリーの髪の女性。片側だけ髪の毛が多めに隠れていて、左目を隠すようにしているみたい。適性魔法は状態魔法と幻惑魔法。

 ロマン・エル・ルグラン。ワインレッドの髪をモヒカンにしているイカツイ男性。適正魔法は守護魔法と時空魔法。

 このイザベルって女。状態魔法と幻惑魔法が使えるのね。…………となると、あの時私を石化させたのは…………いえ、考えるだけ無駄ね。

 私は手配書を適当に机の上に投げ捨て、ベッドに飛び込んで眠りについた。

 その時、三枚目の手配書に張り付いていた四枚目の紙がぺらりと落ちる。

 四枚目の手配書は偶然部屋に吹き込んだ風に攫われ、窓の外へと飛んでいく。
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