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129話 学園再び
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魔法学園が長い休校をやめ、本日は登校日となりました。
久しぶりの学園に心を躍らせつつも、皆が今まで通り私に接してくれるのか一抹の不安を抱えていた。
「姫様? そろそろ狼車に乗ってください」
スザンヌに声をかけられ、私は尻尾を振って待っていた巨大な魔狼ウィルフリードが引く狼車に、スザンヌと護衛の騎士三人で乗り込みました。
今日は用事があると言って、母のエリザベートは朝食前にどこかにでかけてしまいますし、ジェラールはエリザベートを見つめて何か考え事をしていました。
どうかしたのですかと尋ねると、時期にわかると言われてしまいました。何が? 私は貴方がエリザベートを見つめていた理由を知りたいのですが、それは彼女が外出したことに関係があると言うことなのでしょうか。
私は揺れの少ない狼車に乗りながら、誰よりも目立って登校しました。
停留所で降りるころ、すぐ目の前にミゲルがやってきます。
「クリスティーン姫、行きましょうか」
どうやらミゲルは私を待って停留所で待機していたようです。いつもとは少し違う少し温かみのある優しい少年ではない。
周囲を警戒している一人の騎士の姿がそこにありました。護衛のつもりかしら。背伸びしちゃって可愛いわね。
「ミゲル、私達味方同士なんですよね?」
「正直、わかりません。貴女が護るべきものに貴女はいますか?」
「その言葉、そっくりそのまま返すわよ」
「騎士なら、王族の為に命を懸けてでも!」
「姫である前に、私は貴方の友だと思っていましたし、貴方はまだ騎士ではないわ。形式ばかり拘らなくてもいいじゃない」
「…………。俺は騎士です。騎士になる男です。幼い日、臆病だった俺の夢を素敵だと言ってくれた人がいました。泣き虫で臆病で誰に言っても悪い意味で笑われた夢を、これ以上にない笑顔で応援してくれた人がいました。騎士団に入団していなくても、騎士道は持ち合わせたいのです」
ミゲルの言葉を聞いた私は、今ほど自分が姫であることを煩わしいと思ってしまいました。
姫じゃなければ、彼は肩を並べてくれたでしょうか。
「もういいわ。護りたいなら勝手に護りなさい。でも、私は貴方より強いわ」
私がそういいながら、自身の魔力を集中して、週にの人間にも視認できるくらいまで色濃く放出します。
緋色の魔力が私の周囲に漂い始め、ミゲルは一瞬魔力の吸いすぎで過呼吸のような状態に陥ります。
「これだけの力をいつの間に? ワンダーオーブですか?」
「【緑】のワンダーオーブなんて使わなくても、私と貴方にはもうこれだけの差があるの。わかって? アリゼを倒すのに、私が一番確実なのよ?」
私は異質だ。それは幼い日にブランクに言われた言葉。七種類すべての魔法適正を持ち、人よりも魔力量の成長が一段と早い。
確かに異質に違いない。でも、ブランクが欲しいのはあくまでワンダーオーブであって、強い魔術師ではない。
だから光の波動魔法に目覚めたジャンヌさんに鞍替えしたのは、何か他に特別な理由があると考えられる。
いえ、あの男だから気まぐれということも考えられますよね。
どちらにせよ、アリゼとの闘いは絶対に参加する。戦力が増えることは大歓迎ですが、護られるという理由で、戦力が削れるなんて猛反対に決まっているじゃない。
教室に向かいますと、大きな張り紙が教卓の後ろにある壁に貼り付けられ、そこにはアンヌ先生の字で、講堂に集合とだけ記載されていました。
「あら? 行きましょミゲル」
「ええ」
例え、互いの意見がぶつかり合っていても、仲違いをしているわけでもない私達は二人並んで講堂に向かいます。するとしばらくしない内にいつものメンバーが集まってきました。
「クリスティーン姫、俺も一緒に行きます」
最初に現れたのは金髪の男子生徒。従兄のアレクシスだ。どうやら、一学年だけではなく、全校生徒が招集されているみたいでした。
いつの間にかカトリーヌさんにビルジニ、リビオとジョアサンもいる。私達の集団に気付いたジャンヌさんもこちらにやってきました。
本当にいつも通り。変わったことがあるとすれば、みんながみんな。私を見てすぐに近寄ってきたこと。
いつも通りに見えて、さりげなく傍にいることで護衛と監視の役割を持っていることです。
少しだけ息苦しくも、寂しい学園生活にならなそうで、少しだけ安心しました。
「みなさぁ~ん! 聞こえますかぁ~」
波動魔法により拡張した声で講堂中に声を轟かせているのは、我が担任でもあるアンヌ先生でした。
「えぇ~。しばらくの休校、大変申し訳ありませんでしたぁ~。事前に説明した通り、職員の経歴の洗い直しと新規の職員の補充にかなり時間をかけてしまいましたがぁ~、無事、授業を再開できたことをぉ~、喜ばしく思っておりますぅ~。それでは皆様に新規の教員職員をご紹介させていただきまぁ~すぅ~」
アンヌ先生のねっとりとした声で紹介なんてされたら、何時間かかるのかしら。そう思っていましたが、一人目の教員からアンヌ先生の波動魔法、拡声器を通して、自己紹介を初めてホッとしました。
一人ずつ自己紹介が始まります。灰色の髪に空色の瞳の女性で、黄色いワンピースタイプのドレスを来て、いかにも貴族と言った感じの女性です。
「全学年の守護魔法を担当するフランソワーズ・オブ・ジェランです。」
あら? 少なくとも一学年の守護魔法は、担任であるアンヌ先生の仕事のハズ。もしかして、今後は方針まで変わってしまったと言うことでしょうか。
フランソワーズ先生の挨拶が終わり、次々と新たな教員が挨拶を始めました。これはもはや教師陣を再編したと言ってもいいでしょう。
そして四人目の教員が壇上に上がります。長い金髪に深紅の瞳の女性は、まさしく貴族…………いえ、と違いますね。あれはまさしく…………
「エリザベート・ジョルジュ・フォレスティエです。全学年の時空魔法を担当させて頂きます」
あれはまさしく王妃様でした。
久しぶりの学園に心を躍らせつつも、皆が今まで通り私に接してくれるのか一抹の不安を抱えていた。
「姫様? そろそろ狼車に乗ってください」
スザンヌに声をかけられ、私は尻尾を振って待っていた巨大な魔狼ウィルフリードが引く狼車に、スザンヌと護衛の騎士三人で乗り込みました。
今日は用事があると言って、母のエリザベートは朝食前にどこかにでかけてしまいますし、ジェラールはエリザベートを見つめて何か考え事をしていました。
どうかしたのですかと尋ねると、時期にわかると言われてしまいました。何が? 私は貴方がエリザベートを見つめていた理由を知りたいのですが、それは彼女が外出したことに関係があると言うことなのでしょうか。
私は揺れの少ない狼車に乗りながら、誰よりも目立って登校しました。
停留所で降りるころ、すぐ目の前にミゲルがやってきます。
「クリスティーン姫、行きましょうか」
どうやらミゲルは私を待って停留所で待機していたようです。いつもとは少し違う少し温かみのある優しい少年ではない。
周囲を警戒している一人の騎士の姿がそこにありました。護衛のつもりかしら。背伸びしちゃって可愛いわね。
「ミゲル、私達味方同士なんですよね?」
「正直、わかりません。貴女が護るべきものに貴女はいますか?」
「その言葉、そっくりそのまま返すわよ」
「騎士なら、王族の為に命を懸けてでも!」
「姫である前に、私は貴方の友だと思っていましたし、貴方はまだ騎士ではないわ。形式ばかり拘らなくてもいいじゃない」
「…………。俺は騎士です。騎士になる男です。幼い日、臆病だった俺の夢を素敵だと言ってくれた人がいました。泣き虫で臆病で誰に言っても悪い意味で笑われた夢を、これ以上にない笑顔で応援してくれた人がいました。騎士団に入団していなくても、騎士道は持ち合わせたいのです」
ミゲルの言葉を聞いた私は、今ほど自分が姫であることを煩わしいと思ってしまいました。
姫じゃなければ、彼は肩を並べてくれたでしょうか。
「もういいわ。護りたいなら勝手に護りなさい。でも、私は貴方より強いわ」
私がそういいながら、自身の魔力を集中して、週にの人間にも視認できるくらいまで色濃く放出します。
緋色の魔力が私の周囲に漂い始め、ミゲルは一瞬魔力の吸いすぎで過呼吸のような状態に陥ります。
「これだけの力をいつの間に? ワンダーオーブですか?」
「【緑】のワンダーオーブなんて使わなくても、私と貴方にはもうこれだけの差があるの。わかって? アリゼを倒すのに、私が一番確実なのよ?」
私は異質だ。それは幼い日にブランクに言われた言葉。七種類すべての魔法適正を持ち、人よりも魔力量の成長が一段と早い。
確かに異質に違いない。でも、ブランクが欲しいのはあくまでワンダーオーブであって、強い魔術師ではない。
だから光の波動魔法に目覚めたジャンヌさんに鞍替えしたのは、何か他に特別な理由があると考えられる。
いえ、あの男だから気まぐれということも考えられますよね。
どちらにせよ、アリゼとの闘いは絶対に参加する。戦力が増えることは大歓迎ですが、護られるという理由で、戦力が削れるなんて猛反対に決まっているじゃない。
教室に向かいますと、大きな張り紙が教卓の後ろにある壁に貼り付けられ、そこにはアンヌ先生の字で、講堂に集合とだけ記載されていました。
「あら? 行きましょミゲル」
「ええ」
例え、互いの意見がぶつかり合っていても、仲違いをしているわけでもない私達は二人並んで講堂に向かいます。するとしばらくしない内にいつものメンバーが集まってきました。
「クリスティーン姫、俺も一緒に行きます」
最初に現れたのは金髪の男子生徒。従兄のアレクシスだ。どうやら、一学年だけではなく、全校生徒が招集されているみたいでした。
いつの間にかカトリーヌさんにビルジニ、リビオとジョアサンもいる。私達の集団に気付いたジャンヌさんもこちらにやってきました。
本当にいつも通り。変わったことがあるとすれば、みんながみんな。私を見てすぐに近寄ってきたこと。
いつも通りに見えて、さりげなく傍にいることで護衛と監視の役割を持っていることです。
少しだけ息苦しくも、寂しい学園生活にならなそうで、少しだけ安心しました。
「みなさぁ~ん! 聞こえますかぁ~」
波動魔法により拡張した声で講堂中に声を轟かせているのは、我が担任でもあるアンヌ先生でした。
「えぇ~。しばらくの休校、大変申し訳ありませんでしたぁ~。事前に説明した通り、職員の経歴の洗い直しと新規の職員の補充にかなり時間をかけてしまいましたがぁ~、無事、授業を再開できたことをぉ~、喜ばしく思っておりますぅ~。それでは皆様に新規の教員職員をご紹介させていただきまぁ~すぅ~」
アンヌ先生のねっとりとした声で紹介なんてされたら、何時間かかるのかしら。そう思っていましたが、一人目の教員からアンヌ先生の波動魔法、拡声器を通して、自己紹介を初めてホッとしました。
一人ずつ自己紹介が始まります。灰色の髪に空色の瞳の女性で、黄色いワンピースタイプのドレスを来て、いかにも貴族と言った感じの女性です。
「全学年の守護魔法を担当するフランソワーズ・オブ・ジェランです。」
あら? 少なくとも一学年の守護魔法は、担任であるアンヌ先生の仕事のハズ。もしかして、今後は方針まで変わってしまったと言うことでしょうか。
フランソワーズ先生の挨拶が終わり、次々と新たな教員が挨拶を始めました。これはもはや教師陣を再編したと言ってもいいでしょう。
そして四人目の教員が壇上に上がります。長い金髪に深紅の瞳の女性は、まさしく貴族…………いえ、と違いますね。あれはまさしく…………
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