BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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136話 例え光が届かなくても

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 私達の馬は同時に走り出し、先に魔法を仕掛けようとしたのはジャンヌさん。しかし、一瞬ためらいを感じる。

 おそらく私の二つの魔法のうち一つ。逆再生リバースを危惧して使うタイミングを見計らっているのでしょう。

 私が受けた悪影響は、悪影響を受ける前の時間に戻ることでなかったことにする時空魔法。

 だからこそ、かち合うその瞬間まで温存するつもりなのでしょう。

 互いが互いの槍の射程に入り、ジャンヌさんの槍が私に襲い掛かる。

「!? 波動魔法、閃光フラッシュ

 私が槍を討たなかったことに驚いた彼女は、一瞬だけ魔法の発動タイミングが遅れましたが、見ればしばらくは目が開けないほどの凄まじい閃光が私に向かってきました。

「残念でした」

「そんな!?」

 私は自らの槍で顔を覆い、光を見ることなくジャンヌさんの槍は私の槍を砕くだけで終わり、頭部にあてることは叶いませんでした。

「ジャンヌ! 一点!」

 スコアボードに零対一と表示され、ジャンヌさんが一点リードします。

 とりあえず目つぶしは封じたわ。

「姫様、どうか負けてください」

「いいの? 私達、学園ここでなければ二度と会えないような身分なのよ」

「…………それでも…………それでも」

 ジャンヌさんは馬に乗ってスタート地点に戻られました。私は、震える彼女の声を何度も頭に響かせた。

 彼女は決してもう弱い人間ではない。攻撃的な波動魔法ばかり使うからといっても、カトリーヌさんを打ち破った事実もある。

※本大会で死の危険のある魔法は禁止。

 二本目が始まり、互いの槍が交差する。ここでは互いに魔法を行使することなく、私の槍がジャンヌさんの右腕にヒットした。

「クリスティーン! 一点!」

 一対一。残り三本で同点。ただの槍の付き合いはほぼ互角と予想できるわね。

 そして私の逆再生リバースはよほど警戒されているのか、光熱フォートーサーマルを使う気配がありません。

 使っても時間を戻されて切り返しで点を取られることがわかっているからでしょう。

 閃光フラッシュと違い、熱は槍では遮れませんからね。

 三本目が始まり、走り始めからすぐに迷いながらも彼女は私に向かって魔法を照射する。

「波動魔法、光熱フォートーサーマル

 槍の射程外で熱を浴びせることで、逆再生リバースの切り替えしカウンターをさせない作戦でしょう。

 仕方ありませんね。

「時空魔法、遅延スロー

 私は自身の肉体に向け、遅延をかける。正確には肉体ではなく空間そのものの時間を遅らせました。

 これには会場もジャンヌさんも驚いていますが、動きが鈍くなった私に対して、ジャンヌさんは悠々と頭部を突きます。

「ジャンヌ! 五点!」

 一対六。これで私とジャンヌさんの点差は五点になってしまいました。

「な? 何故ですか?」

「三本目は捨てたのよ。それに気付いた? 私、汗一つかいていないでしょう?」

「そんな!? 間違いなく熱したハズなのに」

「動きが遅い空間では、熱も発生しないのよ」

 光が熱を生み出す要素になるのは間違いありませんが、時空魔法でしたら空間そのものの動きの速さを変えられます。

 遅延することにより、空間内の原子や分子の動きが鈍くなるため、むしろ少し寒いわ。

 四本目は確実に五点取り返したいし、魔法を使うしかありませんよね。

 私とジャンヌさんは現在五点差。ここでジャンヌさんが一点でも取ってしまった時点で私の敗北が確定します。

 ですが、ジャンヌさんの最後の魔法。彼女は一体何を残しているのか。

 互いの馬が走り出します。私が魔法を発動しようとするアクションを見て、まだ未使用の逆再生リバースを警戒するかのように槍で防御しようとしてきました。

 しかし、私は魔法を発動しようとするのではなく、そのまま彼女の胴目掛けて槍を討ちました。

「さくほど魔力を練ったのは」

「ブラフよ」

「確かに姫様はお強いです。ですが、私だって力を手にしました誰よりもお優しい貴女を護る力。できない私を唯一見捨てないでいてくれた貴女を護る力」

「…………」

「…………」

 私達はお互いにスタート地点に向かいます。四対六。ジャンヌさんが二点リードしている状態で、私達の最後の戦いが始まろうとしていました。

 私に残された魔法は二つ。そのうちの一つ逆再生リバースはもう彼女にばれています。

 もう一つは、できれば決勝まで温存したいところ。もっと言えば、一度も使うことなく終わらせたい魔法。

  互いの馬が走り始めます。ジャンヌさんが仕掛けてくるタイミングで、逆再生リバースでカウンターを放ち、なおかつ胴か頭部にあてる。圧倒的に不利。

「私、これ嫌いなんですよ。ぞわぞわして不安になって気持ち悪い。それでも、私が進む未来に貴女が傷つく道はないんです。波動魔法、影《シャドウ》」

「!?」

 一瞬ですべての空間が暗闇になる。世界に満ちた光に対して、逆位相の波動をぶつけて相殺する技法。

 本来は、相手の波動魔法に対して全く同じ力で逆位相の波動をぶつけて相殺する技法ですが、それを彼女は世界に満ちる光にたいして行使したのでしょう。

 この試合の五本目、互いの槍がぶつからなければ四本目の戦績である四対六が反映され、ジャンヌさんの勝利になります。

 つまり、私はこの何も見えない空間でジャンヌさんを討たなければいけないのです。

 それも三点以上である胴か頭部。逆再生リバースでは逆転できない。

「まいったわ。降参よ」

「!? では、私の勝ちを認めるのですね?」

「いいえ、違うわ。三つ目を使うって意味よ。状態魔法、回避不能イネビタブル

 声を頼りに狙いを定め、私はジャンヌさんに状態魔法をかけました。

「状態魔法!?」

 私は自らの槍をジャンヌさんに投げると、その槍は回避不能の必中の槍になり、ジャンヌさんに向かって吸い寄せられるように進んでいる…………はず。だって見えませんし。

 ですが、それは光のないこの空間。ジャンヌさんも同様のはず。槍が砕けた音がなり、影に染まった空間は解除されました。

 砕けた槍は、既に通り過ぎたジャンヌさんの背中に後を残して地面に転がっています。

「クリスティーン! 三点! 決勝トーナメント第一試合、クリスティーン・ディ・フォレスティエ対ジャンヌ・ド・バヴィエール! 勝者、クリスティーン!!」

 スコアボードに七対六と表示され、私の勝利がアナウンスされると、様々な歓声が私を褒めたたえました。
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