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149話 実力差
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「行くわよみんな」
私の声にみんながこちらを見ないで頷く。衛兵たちは周囲の騒ぎを抑え込んだり、護衛しなければいけない人たちの所に向かっていて、思う様に動けていないみたい。
救援が来るまで持ちこたえる。できるの? いいえ、やりましょう。
お互いが魔法で攻撃し合う中、アレクシスが何か思いついたのか私の隣にきて話しかけてきます。
「クリスティーン姫、奴らの狙いが姫様ということなら、逃げるのではなく、誘導することならできるのではないでしょうか?」
誘導か。街中を破壊され続ける訳には行きませんし、それもいいかもしれませんね。
「けど、誘導するとしてもどこに?」
「それなら学園の正門の前はどうでしょうか? あそこは馬車の行き来も激しく広場のようになっています。大通りからも遠く住民もあまりいないはずです」
ジョアサンが学園の正門前を提案し、私はそれに同意した。
「次に向こうからの攻撃が来たら防いで頂戴。そのタイミングで目くらましをお願い」
私がそう告げると、向こうからの一斉攻撃。波動や見たこともない魔法が一気に押し寄せてきました。
「守護魔法、城壁!!!」
ミゲルが石造りの強固な壁にも見える巨大な結界を召喚し、攻撃が防がれますが、壁も崩されてしまいます。
「波動魔法、閃光」「状態魔法、暗闇」「幻惑魔法、蜃気楼」
ジャンヌさん、リビオ、オリバーの三人がそれぞれ一定範囲の相手に対して魔法を行使し、目くらましを行います。
「みんな乗って!」
私の掛け声に全員でウィルフリードの背中に乗り、ウィルフリードが吠えるタイミングでビルジニが前に手を翳しました。
「付与魔法、熱」
その瞬間、ウィルフリードの咆哮は、強力な熱気を放ち、相手が持参していた火薬類に引火。
敵軍は大混乱しています。
「私まだ何もしていないんですけど?」
「カトリーヌさんは射程が短いから」
「馬鹿ね。いつまでもあんな技ばかりだと思わないで頂戴。波動魔法、破壊」
見たこともない波動の渦。それが球体になるとごろんと路上に落ちた。その波動の塊はゆっくりゆっくり大きくなり、ゆっくりゆっくり前に進む。
やがて波動の球が道いっぱいのサイズになった頃には、敵はその球に押しつぶされそうになっていました。
これ、遺跡の罠でよく視る奴だ!!!!
「守護魔法、籠手!!!! 更に時空魔法反復!!!!!」
向こうから聞こえる何度も殴打する音。やがてカトリーヌさんの魔法は粉々に砕かれてしまいました。
「そうでした! モヒカンのロマンの適正魔法は守護魔法に時空魔法!?」
「姫様、赤銅のロマンです」
そしてどうやら目くらましに使われた魔法が何一つ効いていない。やはり大人相手では物理でダメージを与える波動魔法しか。
でも、それすらも守護魔法で保護した拳のラッシュには耐えられませんでした。
「これが指名手配犯の実力という訳ですね。王国の姫はどのように対処するおつもりで?」
「どのようにも何も、せめて騎士団の主力が学園前の広場に来るまでに粘れれば」
できるのだろうか。いいや、やるしかないんだ。
「とにかく正門前に行きましょう? 一つ、考えがあります!!」
「でしたら時空魔法、加速」
アレクシスはウィルフリードに加速を行使、ウィルフリードは速度の限界で走り始めました。
ウィルフリードが加速しながら、駆け出したことに気付いたロマンは、時空魔法で加速し追いかけてきます。
「速すぎです!? 加速の限界速度を超えると神罰に下ったかのように肉体が燃え始めるのではなかったのですか!?」
同じ時空魔法使いのアレクシスが超高速で走るロマンに驚き、私達もこのままでは追いつかれることを理解しました。
「そうか、摩擦熱から肉体を守護しているのね!」
でも、その知識は一体どこから? 魔法が発展した現代。
様々な不可思議はすべて神の力と考えられています。奇跡は神の祝福。厄災は神罰。
魔法で定められた速さを超えることは禁止されています。
だから、燃え始める原因は神罰という固定概念がある以上、守護魔法で肉体を護るという発想に至らないはず。
私達は振り落とされないように走る為、圧倒的にウィルフリードの方が遅い。
気が付けばロマンは私達を追い越していました。
「俺様は音より速く走る男だ! ただの魔法じゃ掠りもしねえ!!!」
「波動魔法、光線!!!!」
正面にたったはずのロマンの頬を掠ったのは一筋の光。
「私の魔法の方が速いです……投降してください」
「やるじゃねえか嬢ちゃん」
「姫様、ここは私が足止めします。今のうちに広場まで移動してください」
ジャンヌさんが地面まで五メートルあるウィルフリードの背中から飛び降りて着地、ちょっと蹲ります。
見かねたジョアサンとアレクシス。オリバーとリビオ。リビオが飛び降りたのを確認してカトリーヌさんが飛び降りました。
「回復魔法、治癒《ヒール》」
「では俺も!」
ミゲルも飛び降りようとしたところで、ビルジニがそれを止めます。
「君の守護魔法は強力だ。姫君を頼んだよ。あの男は強い。私もあちらに加勢する。これは君が一番強いと見込んで姫君と二人きりにするんだ。いいね?」
「わかった」
そう言ってビルジニも飛び降りる。
私とミゲルを乗せたウィルフリードは学園の正門前まで走り始めました。
私の声にみんながこちらを見ないで頷く。衛兵たちは周囲の騒ぎを抑え込んだり、護衛しなければいけない人たちの所に向かっていて、思う様に動けていないみたい。
救援が来るまで持ちこたえる。できるの? いいえ、やりましょう。
お互いが魔法で攻撃し合う中、アレクシスが何か思いついたのか私の隣にきて話しかけてきます。
「クリスティーン姫、奴らの狙いが姫様ということなら、逃げるのではなく、誘導することならできるのではないでしょうか?」
誘導か。街中を破壊され続ける訳には行きませんし、それもいいかもしれませんね。
「けど、誘導するとしてもどこに?」
「それなら学園の正門の前はどうでしょうか? あそこは馬車の行き来も激しく広場のようになっています。大通りからも遠く住民もあまりいないはずです」
ジョアサンが学園の正門前を提案し、私はそれに同意した。
「次に向こうからの攻撃が来たら防いで頂戴。そのタイミングで目くらましをお願い」
私がそう告げると、向こうからの一斉攻撃。波動や見たこともない魔法が一気に押し寄せてきました。
「守護魔法、城壁!!!」
ミゲルが石造りの強固な壁にも見える巨大な結界を召喚し、攻撃が防がれますが、壁も崩されてしまいます。
「波動魔法、閃光」「状態魔法、暗闇」「幻惑魔法、蜃気楼」
ジャンヌさん、リビオ、オリバーの三人がそれぞれ一定範囲の相手に対して魔法を行使し、目くらましを行います。
「みんな乗って!」
私の掛け声に全員でウィルフリードの背中に乗り、ウィルフリードが吠えるタイミングでビルジニが前に手を翳しました。
「付与魔法、熱」
その瞬間、ウィルフリードの咆哮は、強力な熱気を放ち、相手が持参していた火薬類に引火。
敵軍は大混乱しています。
「私まだ何もしていないんですけど?」
「カトリーヌさんは射程が短いから」
「馬鹿ね。いつまでもあんな技ばかりだと思わないで頂戴。波動魔法、破壊」
見たこともない波動の渦。それが球体になるとごろんと路上に落ちた。その波動の塊はゆっくりゆっくり大きくなり、ゆっくりゆっくり前に進む。
やがて波動の球が道いっぱいのサイズになった頃には、敵はその球に押しつぶされそうになっていました。
これ、遺跡の罠でよく視る奴だ!!!!
「守護魔法、籠手!!!! 更に時空魔法反復!!!!!」
向こうから聞こえる何度も殴打する音。やがてカトリーヌさんの魔法は粉々に砕かれてしまいました。
「そうでした! モヒカンのロマンの適正魔法は守護魔法に時空魔法!?」
「姫様、赤銅のロマンです」
そしてどうやら目くらましに使われた魔法が何一つ効いていない。やはり大人相手では物理でダメージを与える波動魔法しか。
でも、それすらも守護魔法で保護した拳のラッシュには耐えられませんでした。
「これが指名手配犯の実力という訳ですね。王国の姫はどのように対処するおつもりで?」
「どのようにも何も、せめて騎士団の主力が学園前の広場に来るまでに粘れれば」
できるのだろうか。いいや、やるしかないんだ。
「とにかく正門前に行きましょう? 一つ、考えがあります!!」
「でしたら時空魔法、加速」
アレクシスはウィルフリードに加速を行使、ウィルフリードは速度の限界で走り始めました。
ウィルフリードが加速しながら、駆け出したことに気付いたロマンは、時空魔法で加速し追いかけてきます。
「速すぎです!? 加速の限界速度を超えると神罰に下ったかのように肉体が燃え始めるのではなかったのですか!?」
同じ時空魔法使いのアレクシスが超高速で走るロマンに驚き、私達もこのままでは追いつかれることを理解しました。
「そうか、摩擦熱から肉体を守護しているのね!」
でも、その知識は一体どこから? 魔法が発展した現代。
様々な不可思議はすべて神の力と考えられています。奇跡は神の祝福。厄災は神罰。
魔法で定められた速さを超えることは禁止されています。
だから、燃え始める原因は神罰という固定概念がある以上、守護魔法で肉体を護るという発想に至らないはず。
私達は振り落とされないように走る為、圧倒的にウィルフリードの方が遅い。
気が付けばロマンは私達を追い越していました。
「俺様は音より速く走る男だ! ただの魔法じゃ掠りもしねえ!!!」
「波動魔法、光線!!!!」
正面にたったはずのロマンの頬を掠ったのは一筋の光。
「私の魔法の方が速いです……投降してください」
「やるじゃねえか嬢ちゃん」
「姫様、ここは私が足止めします。今のうちに広場まで移動してください」
ジャンヌさんが地面まで五メートルあるウィルフリードの背中から飛び降りて着地、ちょっと蹲ります。
見かねたジョアサンとアレクシス。オリバーとリビオ。リビオが飛び降りたのを確認してカトリーヌさんが飛び降りました。
「回復魔法、治癒《ヒール》」
「では俺も!」
ミゲルも飛び降りようとしたところで、ビルジニがそれを止めます。
「君の守護魔法は強力だ。姫君を頼んだよ。あの男は強い。私もあちらに加勢する。これは君が一番強いと見込んで姫君と二人きりにするんだ。いいね?」
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