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150話 【橙】のワンダーオーブ
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学園の正門前。初代学園長の銅像の前にたどり着いた私達は、自分たちが来た道を振り返る。
「ミゲル、怪我はしていないわよね?」
「ええ、大丈夫です」
皆様には私がすべての魔法の適性があることを話してありますので、もう自由に魔法を行使できる。
激しい戦闘音は、何も来た道からだけではない。王都中で陽動の為の罠が用意されていたのでしょう。
「本当に戦争がしたいが為だけにこれだけのことをするのでしょうか」
「半分はそうでしょうね。どちらかと言えばこれは前回邪魔をしてくれた私達に対する嫌がらせも含まれていると思うわ」
「だとすれば、騎士を志すものとして負ける訳には行きません」
ミゲルのやる気は十分ですが、先ほどのカトリーヌさんの巨大な波動魔法を守護魔法で打ち破った強者。
加えてあの音速を超える加速。
私達が勝てる相手かどうかは、ミゲル本人に賭けている。
ワンダーオーブがいくつあっても、あの男を倒すにはどうしても必要なものが、私達には足りない。
アレクシスの時空魔法では遅い。ジャンヌさんの光の波動魔法も術者が遅ければ意味がない。
私達に必要なのはその先にあるもの。
「オイオイオイオイオイ。逃げるなんてひどいじゃないかぁ姫様よぉ!!!」
「来たわね赤銅のモヒカン」
みんなの足止めも限界が来たようですね。おそらくこいつなら私達に追いつくまで数秒。
みんな、無事だと良いのですけど。
「ロマンだ! ロォ! マァ! ンッ!」
「ミゲル、武器はあるかしら」
「いえ、残念ながら」
さすがに騎士見習いにもなっていない学生のミゲルに、武器を持たせるなんてことはありませんよね。
ミゲルは守護魔法と素手のみ。私は波動魔法以外の攻撃手段はない。
ウィルフリードなら爪と牙がありますが、勝てるのかしら。
どーしてこういう時にブランクの馬鹿はいないのよ!!
「なんだぁ? こねえのか?」
「「時空魔法、加速」」
私とロマンが同時に高速移動を開始。私は一応ミゲルとウィルフリードにも魔法を使用しています。
【緑】のワンダーオーブのおかげで魔力切れの恐れはありませんが、ロマンより素早く動けません。
「守護魔法、泡」
ミゲルがとっさに守護魔法で私の全身を覆おうとしますが、結界が完成する前にロマンの腕が私に迫ります。
「アオオオオオオオオオオオオオン」
その瞬間、ウィルフリードが咆哮を放ち、私はとっさにその咆哮目掛けて魔法を行使する。
「付与魔法、冷気」
「何!?」
ウィルフリードの咆哮は凄まじい冷気となり、ロマンの氷つかせようとします。
「ならば守護魔法、防寒」
判断が速い!?
「オイオイオイオイ。姫様資料じゃ波動魔法と時空魔法に…………状態魔法のはずじゃねーのか?」
状態魔法のことも知っている。となると、こないだの馬上槍大会の情報がもう出回っていると言うことでしょうか。
「クリスティーン姫。貴方だけでもお逃げください!!」
「ミゲル、貴方はどうするの?」
「戦いますよ。例え素手でも守護魔法しか使えなくても。ここに剣がなくても、相手が圧倒的に強くても!! どんなに怖くても、明日貴女が笑っていてくれるなら。ここに立った意味があるんです」
「よく言ったぞ小僧! だが、俺から逃げられると思うなよ?」
ミゲルは一歩も引く様子がない。そしてロマンが超高速でミゲルに激突しようとした瞬間でした。
ミゲルが魔法を使うよりも速く、ミゲルとロマンの間には別の誰かが現れました。
オレンジ色の靄が一人の人間の姿を象る。
「少し邪魔ですね」
「なんだお前?」
オレンジ色の靄は一人の男の形になり、男は緑色の髪をしていて、ギリシャ神話の神のような白い服を着ていた。
「巨漢の男。少しだけ静かにしていてくれたまえ」
そう言った男の言葉と同時に、ロマンの体を大地が飲み込む。
「さてと、見ていたよ君の勇気。実にかっこよかった。やはり世界を救うものはかっこよくなくてはね」
「…………あ、あの?」
ミゲルは困惑している。そうでしょうね。なにせここは、【橙】のワンダーオーブ入手場所。
ずっと学園の敷地内を探していたせいで完全に見落としていましたわ。
「すでにマルグリート、ヨランドにエレーヌ、それからジャコブまで目覚めているのですね。おや? ですが宝珠は三個ですか」
マルグリート。おそらく【赤】のワンダーオーブの女神ね。
私の所持しているワンダーオーブの数がバレている。さりげなく【白】がカウントされていないのは、正規のものではないからでしょう。
「私は神ニコラ。少年のその勇気に感銘を受けたものだ。いつ見ても愛する者の為に立ち上がることは素敵だ。それは幾星霜の時を超えてもね」
神、二コルは私とミゲルを見比べて、私の方に手を翳すと、そこには【橙】のワンダーオーブが現れました。
「ありがとう神様。ちょうどこれが欲しかったのよ」
「打算的な少女だヨランドとエレーヌが認めた力を見せて貰おうか」
そう言って二コルは姿を消してしまい、二コルが作り出した土山は砂に代わり、ロマンがそこから這い出てきた。
「なんだったんだ?」
「え? あー、神様とか? ねえミゲル」
「多分そうですね。信じがたいですがそんな感じのものです」
「お前ら何を言っているんだ?」
逆の立場なら貴方の気持ちが痛いほどわかるわ。いきなり現れた男について誰と尋ねたら、周りから神と答えられたら、理解できないわよね。
「見せて貰おうじゃない持つ者に速さを与えるワンダーオーブの力」
「「時空魔法、加速」」
今度は私とミゲルが高速化し、ロマンが応戦します。
「もう遅れは取らせないわよ! ミゲル! 貸してあげるわ!! 譲渡! 【橙】」
【橙】のワンダーオーブの所有権をミゲルに譲り、ミゲルは圧倒的な速さを手に入れた。
「守護魔法、籠手!!」
ロマンが自身の腕に守護魔法をかけ、その結界で直接殴りかかります。
「なるほど、肉体が速くなるわけではないのですね。これで終わりです」
「なにを!?」
ミゲルが何も言葉を発することもなく、守護魔法が発動。拘束結界。糸に絡められたロマンは、動くごとに体を締め付けられる。
「すごいわ」
これが【橙】のワンダーオーブの力。魔法の発動から行使。完成までの速度が段違いだ。
何より、ミゲルは本来詠唱破棄することができないというのに、それを容易に行った。
それは大気中の魔力がミゲルの元に尋常じゃない速さで集まったから結果的に詠唱破棄となったのでしょう。
その後、テロリストの一味と、指名手配犯であるロマンは無事に騎士団に引き渡されました。
その後、無事に他の皆様とも合流しました。ジョアサンの回復魔法が優れていたおかげで、誰一人怪我が残っていなくて安心しました。
「ミゲル、怪我はしていないわよね?」
「ええ、大丈夫です」
皆様には私がすべての魔法の適性があることを話してありますので、もう自由に魔法を行使できる。
激しい戦闘音は、何も来た道からだけではない。王都中で陽動の為の罠が用意されていたのでしょう。
「本当に戦争がしたいが為だけにこれだけのことをするのでしょうか」
「半分はそうでしょうね。どちらかと言えばこれは前回邪魔をしてくれた私達に対する嫌がらせも含まれていると思うわ」
「だとすれば、騎士を志すものとして負ける訳には行きません」
ミゲルのやる気は十分ですが、先ほどのカトリーヌさんの巨大な波動魔法を守護魔法で打ち破った強者。
加えてあの音速を超える加速。
私達が勝てる相手かどうかは、ミゲル本人に賭けている。
ワンダーオーブがいくつあっても、あの男を倒すにはどうしても必要なものが、私達には足りない。
アレクシスの時空魔法では遅い。ジャンヌさんの光の波動魔法も術者が遅ければ意味がない。
私達に必要なのはその先にあるもの。
「オイオイオイオイオイ。逃げるなんてひどいじゃないかぁ姫様よぉ!!!」
「来たわね赤銅のモヒカン」
みんなの足止めも限界が来たようですね。おそらくこいつなら私達に追いつくまで数秒。
みんな、無事だと良いのですけど。
「ロマンだ! ロォ! マァ! ンッ!」
「ミゲル、武器はあるかしら」
「いえ、残念ながら」
さすがに騎士見習いにもなっていない学生のミゲルに、武器を持たせるなんてことはありませんよね。
ミゲルは守護魔法と素手のみ。私は波動魔法以外の攻撃手段はない。
ウィルフリードなら爪と牙がありますが、勝てるのかしら。
どーしてこういう時にブランクの馬鹿はいないのよ!!
「なんだぁ? こねえのか?」
「「時空魔法、加速」」
私とロマンが同時に高速移動を開始。私は一応ミゲルとウィルフリードにも魔法を使用しています。
【緑】のワンダーオーブのおかげで魔力切れの恐れはありませんが、ロマンより素早く動けません。
「守護魔法、泡」
ミゲルがとっさに守護魔法で私の全身を覆おうとしますが、結界が完成する前にロマンの腕が私に迫ります。
「アオオオオオオオオオオオオオン」
その瞬間、ウィルフリードが咆哮を放ち、私はとっさにその咆哮目掛けて魔法を行使する。
「付与魔法、冷気」
「何!?」
ウィルフリードの咆哮は凄まじい冷気となり、ロマンの氷つかせようとします。
「ならば守護魔法、防寒」
判断が速い!?
「オイオイオイオイ。姫様資料じゃ波動魔法と時空魔法に…………状態魔法のはずじゃねーのか?」
状態魔法のことも知っている。となると、こないだの馬上槍大会の情報がもう出回っていると言うことでしょうか。
「クリスティーン姫。貴方だけでもお逃げください!!」
「ミゲル、貴方はどうするの?」
「戦いますよ。例え素手でも守護魔法しか使えなくても。ここに剣がなくても、相手が圧倒的に強くても!! どんなに怖くても、明日貴女が笑っていてくれるなら。ここに立った意味があるんです」
「よく言ったぞ小僧! だが、俺から逃げられると思うなよ?」
ミゲルは一歩も引く様子がない。そしてロマンが超高速でミゲルに激突しようとした瞬間でした。
ミゲルが魔法を使うよりも速く、ミゲルとロマンの間には別の誰かが現れました。
オレンジ色の靄が一人の人間の姿を象る。
「少し邪魔ですね」
「なんだお前?」
オレンジ色の靄は一人の男の形になり、男は緑色の髪をしていて、ギリシャ神話の神のような白い服を着ていた。
「巨漢の男。少しだけ静かにしていてくれたまえ」
そう言った男の言葉と同時に、ロマンの体を大地が飲み込む。
「さてと、見ていたよ君の勇気。実にかっこよかった。やはり世界を救うものはかっこよくなくてはね」
「…………あ、あの?」
ミゲルは困惑している。そうでしょうね。なにせここは、【橙】のワンダーオーブ入手場所。
ずっと学園の敷地内を探していたせいで完全に見落としていましたわ。
「すでにマルグリート、ヨランドにエレーヌ、それからジャコブまで目覚めているのですね。おや? ですが宝珠は三個ですか」
マルグリート。おそらく【赤】のワンダーオーブの女神ね。
私の所持しているワンダーオーブの数がバレている。さりげなく【白】がカウントされていないのは、正規のものではないからでしょう。
「私は神ニコラ。少年のその勇気に感銘を受けたものだ。いつ見ても愛する者の為に立ち上がることは素敵だ。それは幾星霜の時を超えてもね」
神、二コルは私とミゲルを見比べて、私の方に手を翳すと、そこには【橙】のワンダーオーブが現れました。
「ありがとう神様。ちょうどこれが欲しかったのよ」
「打算的な少女だヨランドとエレーヌが認めた力を見せて貰おうか」
そう言って二コルは姿を消してしまい、二コルが作り出した土山は砂に代わり、ロマンがそこから這い出てきた。
「なんだったんだ?」
「え? あー、神様とか? ねえミゲル」
「多分そうですね。信じがたいですがそんな感じのものです」
「お前ら何を言っているんだ?」
逆の立場なら貴方の気持ちが痛いほどわかるわ。いきなり現れた男について誰と尋ねたら、周りから神と答えられたら、理解できないわよね。
「見せて貰おうじゃない持つ者に速さを与えるワンダーオーブの力」
「「時空魔法、加速」」
今度は私とミゲルが高速化し、ロマンが応戦します。
「もう遅れは取らせないわよ! ミゲル! 貸してあげるわ!! 譲渡! 【橙】」
【橙】のワンダーオーブの所有権をミゲルに譲り、ミゲルは圧倒的な速さを手に入れた。
「守護魔法、籠手!!」
ロマンが自身の腕に守護魔法をかけ、その結界で直接殴りかかります。
「なるほど、肉体が速くなるわけではないのですね。これで終わりです」
「なにを!?」
ミゲルが何も言葉を発することもなく、守護魔法が発動。拘束結界。糸に絡められたロマンは、動くごとに体を締め付けられる。
「すごいわ」
これが【橙】のワンダーオーブの力。魔法の発動から行使。完成までの速度が段違いだ。
何より、ミゲルは本来詠唱破棄することができないというのに、それを容易に行った。
それは大気中の魔力がミゲルの元に尋常じゃない速さで集まったから結果的に詠唱破棄となったのでしょう。
その後、テロリストの一味と、指名手配犯であるロマンは無事に騎士団に引き渡されました。
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