BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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160話 瞳に映る者

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 イザベルが集中することで、何かの違和感に気付く。

「私より強力な幻惑魔法!? そこに転がっている帝国の皇子ちゃん以外に幻惑魔法が使える子なんて!? まさか!?」

「そのまさかです、黒鉄くろがねのイザベル殿」

 私の周囲で動けずに伏せていた人たちと私の姿が霧散していくと、そこで身動きができなくなっている皆様全員が幻惑魔法から解除されました。

「皇子ちゃんは私の幻惑魔法を感知できなかったはず!? 解除なんてありえないわ!」

「ですが、今やって見せました」

 オリバーの握った手のひらには【緑】のワンダーオーブ。あれをこっそり譲渡したことで、オリバーは底知れぬ魔力量を手に入れていました。

「九対一。撤退させて貰うわ」

「ロマンと違って逃げる気なのね」

「当然でしょ? 私は奪う! 奪い続ける者! 戦いたい訳じゃないわ!」

 そう言って消えようとするイザベルに対し、ミゲルが守護魔法、リビオが状態魔法で捕縛しようとする。

「守護魔法、バブル」「状態魔法、麻痺パラライズ

 しかし、ミゲルとリビオが魔法を発動したことに気付き、イザベルも即座に切り返します。

「幻惑魔法、ドリーム!!! これでしばらく眠ってなさい!!」

 【黄】のワンダーオーブを持った私や、【緑】のワンダーオーブの力で魔力が底上げされて幻惑魔法を解除できるオリバーなら無事。

 そう思っていたのですが、どうやらイザベルにはそれ以上の力があったみたいです。私達は今度こそ全員眠りについたような感覚に襲われます。

「は!? あれ?」

「ん?」

「これは?」

「え? え?」

「どうして?」

 全員が視界に入っているものが理解できていない様子。

 これが幻惑魔法によるものだとも理解している。しかし、これはそのあれだ。

「なんでみんなクリスティーン姫に?」

「姫君しか見えない」

「お転婆姫が多いと疲れそうですね」

「姫様ばっかりです」

「姫様はどちらに?」

 どうやら皆様の視界には全員が私に見えているようです。しかし、私にはそう見えて否かった。

「どれがクリスティーンだかわからないけど、アンタには誰が見えているの?」

 キョロキョロしている一人が、本物の私を探して喋り出します。呼び方的におそらくカトリーヌさんでしょう。

「え? みんなブランクに見えますけど? あれ? 皆様には全員私に見えているのですか?」

 私がそう聞くとそこにいたブランクの姿をした人物のほとんどが「全員クリスティーンに見える」と返事をしました。

 返事をしなかったのはカトリーヌさんだけですが、何も言わないと言うことは彼女にも全員の姿が私に見えているのでしょう。

 でもなんでブランク? なんかむかついてきたから次にあったら思いっきりタックルでもしようかしら。

「おっと全体がぼやけたせいで解除に遅れが出たね。もう少し時間を貰えるかい?」

「ええ。でもこれでイザベルには逃げられたわね」

 ここは魔界。ゲームではブラン王国と地続きになっている設定ですから、後は方角さえわかれば帰れるはず。

 間違っても魔王城に向かってはダメ。

 やっと全員の姿が元の姿として認識できるようになった時。なぜかカトリーヌさんの顔が真っ赤になっていました。

「どうしたのよ」

「何でもないわ」

「そう?」

「そんなことよりアレクシスを見つけてしまいましょう? そうするべきよ」

「ええ、そうねそうしましょう」

 アレクシスが幻惑魔法にかかっていることまでは把握していた私達は、なんとか本物のアレクシスを発見したところで、今度こそ眠りにつきました。

「申し訳ありません」

「気にすることじゃないわ。【黄】のワンダーオーブの力がなければきっと全員…………」

 私達はワンダーオーブの力に助けられた。そして彼女イザベルを止める手段もまたワンダーオーブの力が必要だ。

 【青】のワンダーオーブ。あれには強欲を浄化する力がある。

 学園に戻ってすぐに手に入れなければいけないわね。

「そうだったわ、オリバー。【緑】のワンダーオーブを返して貰える?」

「それならもう返しましたが?」

「あれ? ああ、そうでしたね。忘れていたわ。ごめんなさい…………?」

 返された記憶はありませんでしたが、私の手のひらには確かに【緑】のワンダーオーブを視認できました。

 私はそれを小瓶に戻す。
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