BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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162話 魔王ノワール

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 何の生活感もない空間。王宮の玉座の間を思わせるのは形ばかり。

 朽ちた柱に煌びやかとは程遠い灰白色に囲まれた空間。

 絨毯は原型をとどめていない。ですが、そこに人はいた。

 いいえ、あれは人ではない。

 アルビノの外見と思わせて、左目は深紅。右目は漆黒の瞳の男が現れた。

 透き通るような白い肌は、雪よりも白く幻想的な色でした。

 背丈はジェラールと同等。私達十四歳十五歳から見て完全に大人の身長ですが、あの顔は間違いない。

「ようこそ魔王城へ」

「一応、名乗ってくれるのかしら?」

「……魔王としての名はノワール」

 ノワールと名乗る男。男はそこだけ世界が違うような空間に置かれた玉座に座り、私達が来るのをわかっていたようでした。

 玉座の周囲は灰白色の世界の中でも異質で、光が反射し、冷たい銀色を思わせるような何かを感じました。

「玉座の間なんですからもっと金色にした方がよくてよ」

「趣味に合わん」

「あら残念」

 私があまりにも普通に魔王とやり取りをしていることに周囲の人たちが驚いていましたが、その中でもジョアサンとカトリーヌだけは大した驚きを見せませんでした。

 二人のリアクションで確信した。あの二人には背丈が伸びて少し異質な魔力を放っていても、あれが誰かわかるんだ。

 それが意味するのは、ノワールの正体。

「それで? 貴方は敵なの? 味方なの?」

 私の質問に対し、ノワールは少し考えるそぶりを見せます。

「それは今の話か? それとも未来の話か?」

「聞けるなら両方聞きたいわ」

「今は味方だ。未来はきっと敵だろう」

 ノワールの発言に対し、アレクシスとリビオとミゲルが即座に私の前に出ます。

「姫様、こいつは危険です!」「味方というのも信用できるかどうか」「手を出してこないなら引きましょう。魔王である以上信用できる相手ではない」

 三人の言葉に賛同するようにビルジニやジャンヌさんも声をかけてきます。

「ジョアサンとカトリーヌはどう思いますか?」

 私の問いに対して、ジョアサンはこう答えました。

「どうせ元から信用できない魔術師がウロチョロしていたんです。魔王だろうと味方と名乗るならどのように味方をしてくれるか話は聞いていいかもですね」

「私も賛成よ。協力してくれるなら願ったりかなったりよ。敵になったらその時ギャフンと言わせればいいわ」

 魔王がギャフンって言ったら絶対に笑うから是非言って欲しい。

「そうね。という訳で危険は承知で協力を要請したいと思うわ。どうせ魔獣の森を歩いていても危険なんだから」

 最後の一言で、他の皆様も渋々納得してくださりました。

 尤も、オリバーは私任せで好きにしてくれって雰囲気でしたし、スザンヌはどんなに反対でも私に従う方針でしたけど。

「ただ姫君の護衛だけはしっかりさせて貰うよ」

 ビルジニがそういうと、アレクシスたちも頷きました。

「それでノワール。どのように味方をしてくれるのかしら?」

「味方とは言ったが、何かするとは言っていない。だが、要望があれば言うといい」

「ブラン王国までの転移は可能かしら?」

 ダメ元で本命のお願いをする。皆様も魔王の回答を待ちます。

「可能だ」

 あっさりとできるの返事を貰った私達はわっと喜びの声が上がりました。しかし、魔王は冷たい雰囲気のまま私達を見つめます。

「しかし、それは一日一人までとする。そこのお前は最後だ」

 魔王がそこのお前と言って指さしたのは、まぎれもなく私でした。

 周囲があからさまに同様します。最初に声を荒げたのはミゲルです。

「馬鹿を言うな! 一日一人なら! クリスティーン姫は一番最初に決まっているだろ!」

「うるさいな。今日はお前だ」

 ノワールがそういうと、ミゲルの足元に青白い魔法陣が発生し、そのままその場からミゲルが消え去ってしまいました。

「ミゲル!」

「安心しろ。ブラン王国の王都に送り届けてやっただけだ。さて、見ての通り俺は人を飛ばせる。一日一人だ。俺の気が変わらなければこのまま毎日一人ずつ送還してやろう。ここでの生活はお前らで何とかするといい。部屋は好きに使うんだな」

 そう言ってノワールは玉座の間から左手側の通路に消えてしまいます。

 私達は互いの顔を見合わせて自由に使える部屋ってどこ? などと、しばらく玉座の前に残って話し合いました。
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