BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
169 / 228

164話 魔王様はお暇なようです

しおりを挟む
 魔王城生活二日目。私達は早速玉座の間に向かいます。

 そこにはわざわざ退屈そうに座る魔王ノワールが、私達が来るのを律義に待っていました。

 魔王ってなぜか約束が反故にされない安心感があるのよね。

「魔王様、二日目です。本日もどなたか一人を転移して頂けますでしょうか」

 私がそう声をかけると、リビオが私にひそひそ声で話かける。

「クリスティーン姫が下手にでることはありません」

「あのね、魔王の機嫌を悪くさせる方が問題なの。国民あなたたちを護れるなら捨てられる限りのプライドは捨てる。それが王族わたしたちのあるべき姿よ。そうでしょ? オリバー」

 私がオリバーの方に視線を向けると、オリバーは少し悩んでこう呟きました。

「帝国的な考えではありませんが、貴女のそういうところに惹かれてついてくるものがいる。その事実はずっと見てきましたよ」

「あ、そういうものではないのね…………でも、ありがとう」

 私達が魔王の前でひそひそ話を続けていると、いつの間にか魔王は大きな欠伸をして眠そうにしていました。

「おい! とっとと飛ばしていいのか?」

「あの? 転移する順番は選べますでしょうか?」

 私は恐る恐る魔王に尋ねると、魔王は少しだけ考えこみます。

「…………ダメだ」

 返事は却下。転移する順番は完全に魔王の気まぐれになりました。

 それでも、ブラン王国の王都まで帰還させて貰えるだけありがたいと思いましょう。

「今日転移するのはお前だ」

 魔王が指さしたのは、ジョアサンでした。やはり聖職者関連の人間は嫌いなのですね。

 ジョアサンの足元に青白い魔法陣が浮かび、ジョアサンはその場から消え去ってしまいました。

 ジャンヌはその魔法陣をじーっと眺めて、そのあと視線が私とぶつかりました。

 どうやら、ジャンヌも彼の正体に気付いたのでしょう。

 彼女は一度、盗賊のアジトに乗り込む際に同じ魔法陣を見ていますからね。

 魔王がまたどこかに消えてしまう前に、スザンヌが魔王に質問しました。

「魔王様、一点だけ伺いたいのですが宜しいでしょうか」

「なんだ?」

「魔王城の食糧庫の中身は自由に使っても宜しいのでしょうか」

「お前が料理するのか?」

「はい」

「ついてこい…………人間には毒になるものもある」

 そう言った魔王のあとについて行くスザンヌ。私達も特にすることはない為ついて行くことにしました。

 魔王様ちょっと優しくない?

 その後、食糧庫に入ると、人間に毒があるものとないものを一つずつ教えてくださりました。

 見るからにリンゴにしか見えないものが毒で、ハロウィンに使えそうなシワシワで顔のような模様のある果物は、甘くてみずみずしいらしい。

 生簀の魚は見るからに棘があるものが毒魚と分かりやすかったです。

 チーズの保管庫の中身は全部無害。ワインなどの酒類も無害。

 一応、ブラン王国の法律上にお酒の年齢制限はありません。が、強いお酒を若い人が飲むことは勧められておりません。

 尤も、十三歳以上は成人として扱われるので、私達も成人なのですからそこは問題ないはず。

※ブラン王国及び周辺国には、安全に飲める水がほぼ存在しない為、極限まで薄めたお酒を飲料水として利用しています。

「このお酒ってアルコール度数は?」

「…………知らん」

「そ、そう」

 この辺はまあみんなで協力して何とかするしかなさそうね。アルコールを飛ばすとか、果物で水分を補うとか。

 一通り説明が終わると、魔王はどこかに消えてしまいました。

 嫌な顔一つせずに説明した魔王に対して、カトリーヌが呟き、それに対してアレクシスが答えます。

「案外優しいのね」

「暇なだけでは?」

 アレクシスのツッコミに全員があり得そうと思い、私も本人の正体を知っているからこそ、納得してしまいました。

「早速ですが、調理しましょう」

「スザンヌさん、私も手伝います」

 食糧庫の中でスザンヌとジャンヌが早速朝食作りの準備に取り掛かり、邪魔にならないように私達は出ていくことにしました。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

処理中です...