172 / 228
167話 ジャンヌさんの様子が?
しおりを挟む
魔王城の生活は続き、三日目はビルジニ、四日目はリビオが王都に転移されました。
残るメンバーはアレクシス、オリバー、ジャンヌ、カトリーヌ、スザンヌそして私。
さり気無く料理の担当をしてくれているスザンヌとジャンヌが残ってくれているのはありがたいわ。
貴族の皆様はそろってキッチンに立ったことがありません。おそらく野営料理をするミゲルくらいでしょう。
料理くらいなら私でもできないこともありませんが、キッチンに立てるはずがないとスザンヌに認知されていますからね。
「随分顔ぶれが減ってしまいましたね」
不意に私に話しかけてきたのはオリバー。周囲には誰もいません。
「何の用?」
「用がなければ話けてはいけないというのなら、時間つぶしです。ここではすることが限られる」
「一理あるわ」
私もここでしていることは、塔の上から魔界を眺めることと、城の修復。あとはお喋り。
話しかけるなという方が無理がありますよね。でも、この数日間。この男が私に接触してくることはありませんでした。
あまり意味のない行動を取るとは思えない。それが私の直感です。
「それで? 側室の件は考えてくれましたか?」
「微塵も考えてないわよ!?」
日本人だったせいかおかげか。一夫多妻制なんて無理。もちろん、郷に入っては郷に従えと言う言葉もあり、一夫多妻制の国は認めるべきでしょう。
一夫多妻制はブラン王国でも、王家と公爵家のみ許されていますが、それは子宝に恵まれない場合と限られています。
「おや残念。君はたった一人愛されたいロマンチストでしたか」
「え? 馬鹿にされてるの? そうなの?」
「どちらかと言えば、羨ましいと思っていますよ」
そう言ったオリバーの表情は、どこか遠くを見ているようで、実はどこも見ていないような気さえしてきました。
まるで叶わない夢を見ているのではないだろうか。
「オリバーは一夫一妻制の方が良かったの?」
「…………え?」
「あ! ごめんなさい! その、帝国のルールを否定しているわけじゃないわ! ただ、もしかしてって思っただけで」
私が慌てて否定しているところで、オリバーは途端に笑い始めました。え? 私おかしかった?
「貴方は本当に姫らしくない」
「ここにきて罵倒!?」
「違いますよ…………同じ時代に生まれて良かったって言っているんです」
「???????」
それは月が綺麗ですねくらい訳が分からない意訳よ。
オリバーの独特な表現に場の空気が凍ります。大体私の理解不能というリアクションのせいですけど。
「いずれ貴方が選ぶ道。見届けさせてください」
「ええ、見たいというなら勝手に見ればいいわ」
そう言ってオリバーはどこかに消えてしまいました。消える際に無駄に幻惑魔法を使って消えていくのは趣味かしら。
あれ? 私今、何か別の魔法をかけられたような…………? 気のせいよね?
違和感がまとわりつく。何かの認識を歪めるような魔法な気がすることはわかりますが、それが何かまでは理解できませんでした。
気持ち悪い感覚がぬぐい切れず、私は誰かを探して歩き回ると、城内中庭で一人今にも枯れそうな植物に水やりをしているジャンヌの姿がありました。
「ジャンヌさん? あ、いえジャンヌ?」
「え? 姫様? どうかしましたか?」
ジャンヌは呼ばれたことに気付きこちらに振り返ります。私と気付き表情が一気に明るくなることがわかりました。
「何をしているのですか?」
「水やりです。何かしたいなと思ってウロウロしていたら、中庭の様子が気になりまして」
「植物がお好きなのですか?」
「実家が農家でして。できることってあまりないから」
そんなことはない。実際、彼女にはスザンヌと一緒に料理までして貰っていますし、できることが少ないのはむしろ私達の方だ。
むしろ彼女は何もしなくていい時こそ、ゆっくりと休んでいてもいい。
「ジャンヌさんにはいつも助けられているわ」
「そんなことありません。役立たずの私をここまで連れてきてくれたのは、他の誰でもありません。姫様です」
私は真っすぐ私を見つめる彼女の瞳を見つめ返しながら、彼女の両手を私の両手で握る。
「私に人を見る目があるとしたら、貴女が心優しい人物だと思えたことくらいよ。貴女の才能は予想もできなかったわ。それは私が連れてきたからじゃない。貴女自身の力よ」
「姫様」
ジャンヌさんからの熱い視線。え? まってこれどういう雰囲気?
そのまま手を繋いでしばらく二人で見つめ合いました。辞め時がわからなくて…………まってこれどういう雰囲気。
残るメンバーはアレクシス、オリバー、ジャンヌ、カトリーヌ、スザンヌそして私。
さり気無く料理の担当をしてくれているスザンヌとジャンヌが残ってくれているのはありがたいわ。
貴族の皆様はそろってキッチンに立ったことがありません。おそらく野営料理をするミゲルくらいでしょう。
料理くらいなら私でもできないこともありませんが、キッチンに立てるはずがないとスザンヌに認知されていますからね。
「随分顔ぶれが減ってしまいましたね」
不意に私に話しかけてきたのはオリバー。周囲には誰もいません。
「何の用?」
「用がなければ話けてはいけないというのなら、時間つぶしです。ここではすることが限られる」
「一理あるわ」
私もここでしていることは、塔の上から魔界を眺めることと、城の修復。あとはお喋り。
話しかけるなという方が無理がありますよね。でも、この数日間。この男が私に接触してくることはありませんでした。
あまり意味のない行動を取るとは思えない。それが私の直感です。
「それで? 側室の件は考えてくれましたか?」
「微塵も考えてないわよ!?」
日本人だったせいかおかげか。一夫多妻制なんて無理。もちろん、郷に入っては郷に従えと言う言葉もあり、一夫多妻制の国は認めるべきでしょう。
一夫多妻制はブラン王国でも、王家と公爵家のみ許されていますが、それは子宝に恵まれない場合と限られています。
「おや残念。君はたった一人愛されたいロマンチストでしたか」
「え? 馬鹿にされてるの? そうなの?」
「どちらかと言えば、羨ましいと思っていますよ」
そう言ったオリバーの表情は、どこか遠くを見ているようで、実はどこも見ていないような気さえしてきました。
まるで叶わない夢を見ているのではないだろうか。
「オリバーは一夫一妻制の方が良かったの?」
「…………え?」
「あ! ごめんなさい! その、帝国のルールを否定しているわけじゃないわ! ただ、もしかしてって思っただけで」
私が慌てて否定しているところで、オリバーは途端に笑い始めました。え? 私おかしかった?
「貴方は本当に姫らしくない」
「ここにきて罵倒!?」
「違いますよ…………同じ時代に生まれて良かったって言っているんです」
「???????」
それは月が綺麗ですねくらい訳が分からない意訳よ。
オリバーの独特な表現に場の空気が凍ります。大体私の理解不能というリアクションのせいですけど。
「いずれ貴方が選ぶ道。見届けさせてください」
「ええ、見たいというなら勝手に見ればいいわ」
そう言ってオリバーはどこかに消えてしまいました。消える際に無駄に幻惑魔法を使って消えていくのは趣味かしら。
あれ? 私今、何か別の魔法をかけられたような…………? 気のせいよね?
違和感がまとわりつく。何かの認識を歪めるような魔法な気がすることはわかりますが、それが何かまでは理解できませんでした。
気持ち悪い感覚がぬぐい切れず、私は誰かを探して歩き回ると、城内中庭で一人今にも枯れそうな植物に水やりをしているジャンヌの姿がありました。
「ジャンヌさん? あ、いえジャンヌ?」
「え? 姫様? どうかしましたか?」
ジャンヌは呼ばれたことに気付きこちらに振り返ります。私と気付き表情が一気に明るくなることがわかりました。
「何をしているのですか?」
「水やりです。何かしたいなと思ってウロウロしていたら、中庭の様子が気になりまして」
「植物がお好きなのですか?」
「実家が農家でして。できることってあまりないから」
そんなことはない。実際、彼女にはスザンヌと一緒に料理までして貰っていますし、できることが少ないのはむしろ私達の方だ。
むしろ彼女は何もしなくていい時こそ、ゆっくりと休んでいてもいい。
「ジャンヌさんにはいつも助けられているわ」
「そんなことありません。役立たずの私をここまで連れてきてくれたのは、他の誰でもありません。姫様です」
私は真っすぐ私を見つめる彼女の瞳を見つめ返しながら、彼女の両手を私の両手で握る。
「私に人を見る目があるとしたら、貴女が心優しい人物だと思えたことくらいよ。貴女の才能は予想もできなかったわ。それは私が連れてきたからじゃない。貴女自身の力よ」
「姫様」
ジャンヌさんからの熱い視線。え? まってこれどういう雰囲気?
そのまま手を繋いでしばらく二人で見つめ合いました。辞め時がわからなくて…………まってこれどういう雰囲気。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる