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169話 魔王の私室
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翌日。玉座の間に向かうと魔王ノワールは中々現れませんでした。
「遅いわね」
「呼びに行くにしてもどちらにいらっしゃるかわかりませんね」
私が遅いというと、スザンヌが返事をしました。そのタイミングでカトリーヌが私達の方を見て呟きます。
「私、わかるかも」
「わかるの?」
「ええ、そのあの魔王は独特な魔力を身にまとっているから目に入るのよ」
そうでした。カトリーヌの深紅の瞳は、魔力を見ることに長けた瞳。
彼女にとってノワールの位置はなんとなくわかるものだそうです。
「では、私とカトリーヌ様がノワールの元に向かいます」
「待ってスザンヌ私も行くわ」
私がそういうと、アレクシスが声を上げます。
「クリスティーン姫をあの男の元に向かわせる訳には行きません!」
「アレクシス…………ごめんなさいね。でも、最終日は私一人だから。困ったら魔王のいる場所を把握している必要があるのよ」
私はとっさにそれっぽいことを言いましたが、本心は単純な好奇心。あの魔王は玉座の間にいない時は何をしているのか興味がある。それにつきました。
全員で行くと、万が一の入れ違いを考え、玉座の間にはアレクシスとオリバーとジャンヌが残ることになりました。
ノワールは転移もできますからね。もしかしたら私達が出ていった後に玉座の間に現れていつまでも現れない私達に怒って気が変わってしまっても困ります。
そんなことで怒る奴じゃないことは知っていますが、少々いたずら好きな所はありますからね。
玉座の間から左手の通路。螺旋階段を登るとある無数の部屋。ここは私達が生活に利用している部屋があります。その更に奥。
カトリーヌはどんどん歩き進み、私とスザンヌはその後ろをついて行きました。
「変ね。この先だと思うのだけど」
「魔王の部屋だから簡単にはいけないのかも」
カトリーヌは突き当りの壁まで到着し、辺りをキョロキョロと見渡します。もしかして転移できるから出入り口がないとか?
「この壁の先かしら?」
「多分そうよ」
カトリーヌにはもう、壁の向こうに魔王がいることまでは理解できているようです。
私は壁に手を添えて魔力を右手に集中させます。
「波動魔法、振動」
壁に振動を送り込み、グワングワングワングワンと鳴らしますと、私の身体は思いっきり壁から突き飛ばされました。
「きゃっ!?」
「うるせえ」
壁に青白い魔法陣が浮かび上がり、そこから魔王ノワールがにゅっと出てきました。すり抜けるみたいな感じで出てくることもあるのですね。
「すまないな。寝過ごした。玉座まで送ろう」
そう言って私を残してスザンヌとカトリーヌと一緒に転移する魔王。
「はぁああああああ!? 時空魔法、加速」
私は急いで玉座の間に向かいましたが、到着した頃にはカトリーヌの姿がありませんでした。
「今日の転移は終了だ。また明日集まるように」
そう言って私が文句を言う前にノワールは転移してしまいます。何なのよアイツ。
でも、カトリーヌが希望通り戻れてよかったわ。
「姫様、お疲れ様でした。そんなに急がれなくても良かったのですよ」
「あの馬鹿魔王に文句を言いたかったのよ」
私が息を切らしながらそういうと、足元に転移の魔法陣が浮かび上がります。ナニコレ。
私の体は一瞬で城内のどこかの部屋に運ばれてしまいました。そこには大きなベッドとソファのような横長の椅子。
「誰が馬鹿魔王だ?」
「盗み聞き? 趣味が悪いわよ」
「悪いな。転移直後は空間が繋がっているから普通に聞こえているんだ。俺だけな」
「素直に謝るのね」
「魔王が盗み聞きをしたと思われる方が心外だ」
「ふーん」
小さいことを気にするのね。でも確かに、ジェラールが盗み聞きをしていたなんてかっこ悪くて家族以外に言えませんわ。
王族って大変ね。他人事じゃないけど。
「それでここは?」
「俺の部屋だ。出たければそこを潜ればいい」
そう言ってノワールが指さしたのは、壁にある魔法陣。
「あれってさっきの?」
「ああ、こちら側からはいつでも出れる」
潜っている間にあの魔法陣を解除されたらどうなるのか。すっごく怖いんですけど。さすがにそんなことしませんよね。
「行かないのか?」
「どうせ朝食まで時間があるわ。少し部屋を見せてよ。貴方だっていつも私の部屋をのぞいていたでしょ?」
「魔王が覗きをしていたなど「してたでしょ!!」
「…………してたかもな」
さすがに不法侵入は認めて貰うわよ。覗きじゃないかもですが、見えない姿で出入りしていたのですから覗きと変わりありません。
ノワールの部屋は比較的綺麗で敷かれている絨毯も汚れ一つありません。
棚には食器やワインボトルらしきものが陳列していて、見た目通り私達よりずっと大人なのかなと思いました。
「貴方って今いくつなの?」
「…………そうだな二十くらいだ。数えていないが、お前より年上だろう」
適当ね。でも、年齢の概念は理解しているみたい。
ノワールが椅子に腰かけると、私も黙って隣に座りました。
「なんだお前」
「え? いやだって話すなら普通でしょ?」
「俺は話すことはないが?」
「私があるのよ!」
「なんだ?」
「なんだって…………何かしら?」
私、何がしたくてこいつの隣に座ったの? そのまま時間が過ぎ、朝食の時間になる前に私はダイニングに向かうことにしました。
ノワールって食事はどうしているのかしら。
「遅いわね」
「呼びに行くにしてもどちらにいらっしゃるかわかりませんね」
私が遅いというと、スザンヌが返事をしました。そのタイミングでカトリーヌが私達の方を見て呟きます。
「私、わかるかも」
「わかるの?」
「ええ、そのあの魔王は独特な魔力を身にまとっているから目に入るのよ」
そうでした。カトリーヌの深紅の瞳は、魔力を見ることに長けた瞳。
彼女にとってノワールの位置はなんとなくわかるものだそうです。
「では、私とカトリーヌ様がノワールの元に向かいます」
「待ってスザンヌ私も行くわ」
私がそういうと、アレクシスが声を上げます。
「クリスティーン姫をあの男の元に向かわせる訳には行きません!」
「アレクシス…………ごめんなさいね。でも、最終日は私一人だから。困ったら魔王のいる場所を把握している必要があるのよ」
私はとっさにそれっぽいことを言いましたが、本心は単純な好奇心。あの魔王は玉座の間にいない時は何をしているのか興味がある。それにつきました。
全員で行くと、万が一の入れ違いを考え、玉座の間にはアレクシスとオリバーとジャンヌが残ることになりました。
ノワールは転移もできますからね。もしかしたら私達が出ていった後に玉座の間に現れていつまでも現れない私達に怒って気が変わってしまっても困ります。
そんなことで怒る奴じゃないことは知っていますが、少々いたずら好きな所はありますからね。
玉座の間から左手の通路。螺旋階段を登るとある無数の部屋。ここは私達が生活に利用している部屋があります。その更に奥。
カトリーヌはどんどん歩き進み、私とスザンヌはその後ろをついて行きました。
「変ね。この先だと思うのだけど」
「魔王の部屋だから簡単にはいけないのかも」
カトリーヌは突き当りの壁まで到着し、辺りをキョロキョロと見渡します。もしかして転移できるから出入り口がないとか?
「この壁の先かしら?」
「多分そうよ」
カトリーヌにはもう、壁の向こうに魔王がいることまでは理解できているようです。
私は壁に手を添えて魔力を右手に集中させます。
「波動魔法、振動」
壁に振動を送り込み、グワングワングワングワンと鳴らしますと、私の身体は思いっきり壁から突き飛ばされました。
「きゃっ!?」
「うるせえ」
壁に青白い魔法陣が浮かび上がり、そこから魔王ノワールがにゅっと出てきました。すり抜けるみたいな感じで出てくることもあるのですね。
「すまないな。寝過ごした。玉座まで送ろう」
そう言って私を残してスザンヌとカトリーヌと一緒に転移する魔王。
「はぁああああああ!? 時空魔法、加速」
私は急いで玉座の間に向かいましたが、到着した頃にはカトリーヌの姿がありませんでした。
「今日の転移は終了だ。また明日集まるように」
そう言って私が文句を言う前にノワールは転移してしまいます。何なのよアイツ。
でも、カトリーヌが希望通り戻れてよかったわ。
「姫様、お疲れ様でした。そんなに急がれなくても良かったのですよ」
「あの馬鹿魔王に文句を言いたかったのよ」
私が息を切らしながらそういうと、足元に転移の魔法陣が浮かび上がります。ナニコレ。
私の体は一瞬で城内のどこかの部屋に運ばれてしまいました。そこには大きなベッドとソファのような横長の椅子。
「誰が馬鹿魔王だ?」
「盗み聞き? 趣味が悪いわよ」
「悪いな。転移直後は空間が繋がっているから普通に聞こえているんだ。俺だけな」
「素直に謝るのね」
「魔王が盗み聞きをしたと思われる方が心外だ」
「ふーん」
小さいことを気にするのね。でも確かに、ジェラールが盗み聞きをしていたなんてかっこ悪くて家族以外に言えませんわ。
王族って大変ね。他人事じゃないけど。
「それでここは?」
「俺の部屋だ。出たければそこを潜ればいい」
そう言ってノワールが指さしたのは、壁にある魔法陣。
「あれってさっきの?」
「ああ、こちら側からはいつでも出れる」
潜っている間にあの魔法陣を解除されたらどうなるのか。すっごく怖いんですけど。さすがにそんなことしませんよね。
「行かないのか?」
「どうせ朝食まで時間があるわ。少し部屋を見せてよ。貴方だっていつも私の部屋をのぞいていたでしょ?」
「魔王が覗きをしていたなど「してたでしょ!!」
「…………してたかもな」
さすがに不法侵入は認めて貰うわよ。覗きじゃないかもですが、見えない姿で出入りしていたのですから覗きと変わりありません。
ノワールの部屋は比較的綺麗で敷かれている絨毯も汚れ一つありません。
棚には食器やワインボトルらしきものが陳列していて、見た目通り私達よりずっと大人なのかなと思いました。
「貴方って今いくつなの?」
「…………そうだな二十くらいだ。数えていないが、お前より年上だろう」
適当ね。でも、年齢の概念は理解しているみたい。
ノワールが椅子に腰かけると、私も黙って隣に座りました。
「なんだお前」
「え? いやだって話すなら普通でしょ?」
「俺は話すことはないが?」
「私があるのよ!」
「なんだ?」
「なんだって…………何かしら?」
私、何がしたくてこいつの隣に座ったの? そのまま時間が過ぎ、朝食の時間になる前に私はダイニングに向かうことにしました。
ノワールって食事はどうしているのかしら。
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