175 / 228
170話 侵入者
しおりを挟む
そして魔王城の日々は進み、オリバーが転移して、ジャンヌが転移してアレクシスが転移してついにはスザンヌが転移する朝を迎えます。
「食事は予め保存食をいくつか用意しておきました」
「ありがとうスザンヌ」
「姫様を魔王に預けるのは不覚ですが、魔界から安全に帰る手段でもあります」
「そうね、万が一私が明日になっても帰ってこなかったら…………騎士団は魔界に突入するのかしら」
「まず間違いないかと思います」
私達が魔界にいることと、転移で戻されていることは、先に帰還している皆様が話しているはず。
それはつまり、魔界とブラン王国の戦争を意味します。約束通りに姫を返さなかった魔界の落ち度となるのでしょう。
もしかしたらロマンやイザベルは、私達が魔界に残されることで、戦争を起こそうとし、ロマンはそれを楽しみ、イザベルはその隙にブラン王国を荒そうとしていたのかもしれませんね。
「絶対に戦争にしてはいけません。可能な限り説得してください」
「仰せのままに」
私とスザンヌが玉座の間にたどり着くと、そこには退屈そうにしているノワールが、私達の到着を期待もせずに待っていました。
「来たか」
そう言ってすぐにスザンヌの足元に青白い魔法陣が浮かびました。その魔法陣の光がスザンヌを包み込むと、彼女の姿は消え去ってしまいました。
「これで私だけになったわね」
「いいや、違うぞ」
「え?」
何それ。どういうこと。もう私しかいないはずでしょ。でも、私にはそれを確かめる手段がない。
確かめることができるとしたら、ノワールに直接話を聞くことだけでした。
私は転移直前のノワールのもとに飛び込み、彼に抱き着いて一緒に転移します。
「待って!」
「ん?」
大きな体に、男性らしいゴツゴツとした感触。魔王城の老朽化具合とは相反して、彼の服は上質で肌触りのよいものでした。
転移先は彼の部屋。ノワールは抱き着いてきた私を引きはがしてしまいます。
「なんか用か?」
「えとそのさっきの発言ですが」
「いるんだよ魔王城に一人。招待した覚えのない人間が。明日はそいつを返す」
「!?」
それはつまり、みんなの中で明日帰還するはずの私が、明日になってもブラン王国に帰れないって事?
それは少々まずくないでしょうか。つまり、騎士団の進軍が始まってしまいます。
そんなことになれば後は戦争になりかねない。事情も知らない魔界側と、姫を攫われたと勘違いした王国。
私達が仲裁に入っても、一度始まった戦闘で傷ついた人がいれば、両陣営もう引くことができないでしょう。
「ねえノワール。話を聞いて。みんなの中で私は明日には転移しているはずなの」
「俺の中では元から明後日だ」
つまりその何者かは、私達と同じタイミングで魔王城に侵入していたと言うことでしょうか。
考えられるとすれば、最後の一人は黒鉄のイザベルで間違いないでしょう。
【黄】のワンダーオーブをもってしても、彼女の幻惑魔法なら近づかなければ違和感に気付けない。
「お願い! このままだと魔界とブラン王国が争ってしまうの!」
「それがどうした。お前たち人間は、いくらでも適当な理由をつけて進軍してきたではないか。魔王城が何故定期的に転移するのか知っているか? その時、一番危険な国から遠ざかった位置に配置する為だ」
ノワールにとって、人間が戦争を仕掛けてくるのは当たり前。戦争をしたい訳でもないのに、戦争は繰り広げられてしまう。
魔王は確かに理から外れた魔法を使えるし、魔界でなら常識を超えた戦闘ができるはず。何も人間を恐れる必要なんてありません。
「だったら貴方が前線に出て戦えばいいじゃない。魔界を攻めさせないように、圧倒的な強さを見せつければいいじゃない! それをわざわざ相手から遠い位置に城まで移して! 臆病者!!」
「…………そうだな。それでも良い。臆病者と呼ばれたとしても、城を落とされるわけにはいかないんだ」
それはどういう?
私が何かを訪ねようとする前にブランクは魔法陣を用いて、どこかに転移してしまいました。
…………さてと、私にできることはもう一つ。城にいるもう一人の侵入者である人間を発見して明日の転移までに城外に追い出すこと。
「食事は予め保存食をいくつか用意しておきました」
「ありがとうスザンヌ」
「姫様を魔王に預けるのは不覚ですが、魔界から安全に帰る手段でもあります」
「そうね、万が一私が明日になっても帰ってこなかったら…………騎士団は魔界に突入するのかしら」
「まず間違いないかと思います」
私達が魔界にいることと、転移で戻されていることは、先に帰還している皆様が話しているはず。
それはつまり、魔界とブラン王国の戦争を意味します。約束通りに姫を返さなかった魔界の落ち度となるのでしょう。
もしかしたらロマンやイザベルは、私達が魔界に残されることで、戦争を起こそうとし、ロマンはそれを楽しみ、イザベルはその隙にブラン王国を荒そうとしていたのかもしれませんね。
「絶対に戦争にしてはいけません。可能な限り説得してください」
「仰せのままに」
私とスザンヌが玉座の間にたどり着くと、そこには退屈そうにしているノワールが、私達の到着を期待もせずに待っていました。
「来たか」
そう言ってすぐにスザンヌの足元に青白い魔法陣が浮かびました。その魔法陣の光がスザンヌを包み込むと、彼女の姿は消え去ってしまいました。
「これで私だけになったわね」
「いいや、違うぞ」
「え?」
何それ。どういうこと。もう私しかいないはずでしょ。でも、私にはそれを確かめる手段がない。
確かめることができるとしたら、ノワールに直接話を聞くことだけでした。
私は転移直前のノワールのもとに飛び込み、彼に抱き着いて一緒に転移します。
「待って!」
「ん?」
大きな体に、男性らしいゴツゴツとした感触。魔王城の老朽化具合とは相反して、彼の服は上質で肌触りのよいものでした。
転移先は彼の部屋。ノワールは抱き着いてきた私を引きはがしてしまいます。
「なんか用か?」
「えとそのさっきの発言ですが」
「いるんだよ魔王城に一人。招待した覚えのない人間が。明日はそいつを返す」
「!?」
それはつまり、みんなの中で明日帰還するはずの私が、明日になってもブラン王国に帰れないって事?
それは少々まずくないでしょうか。つまり、騎士団の進軍が始まってしまいます。
そんなことになれば後は戦争になりかねない。事情も知らない魔界側と、姫を攫われたと勘違いした王国。
私達が仲裁に入っても、一度始まった戦闘で傷ついた人がいれば、両陣営もう引くことができないでしょう。
「ねえノワール。話を聞いて。みんなの中で私は明日には転移しているはずなの」
「俺の中では元から明後日だ」
つまりその何者かは、私達と同じタイミングで魔王城に侵入していたと言うことでしょうか。
考えられるとすれば、最後の一人は黒鉄のイザベルで間違いないでしょう。
【黄】のワンダーオーブをもってしても、彼女の幻惑魔法なら近づかなければ違和感に気付けない。
「お願い! このままだと魔界とブラン王国が争ってしまうの!」
「それがどうした。お前たち人間は、いくらでも適当な理由をつけて進軍してきたではないか。魔王城が何故定期的に転移するのか知っているか? その時、一番危険な国から遠ざかった位置に配置する為だ」
ノワールにとって、人間が戦争を仕掛けてくるのは当たり前。戦争をしたい訳でもないのに、戦争は繰り広げられてしまう。
魔王は確かに理から外れた魔法を使えるし、魔界でなら常識を超えた戦闘ができるはず。何も人間を恐れる必要なんてありません。
「だったら貴方が前線に出て戦えばいいじゃない。魔界を攻めさせないように、圧倒的な強さを見せつければいいじゃない! それをわざわざ相手から遠い位置に城まで移して! 臆病者!!」
「…………そうだな。それでも良い。臆病者と呼ばれたとしても、城を落とされるわけにはいかないんだ」
それはどういう?
私が何かを訪ねようとする前にブランクは魔法陣を用いて、どこかに転移してしまいました。
…………さてと、私にできることはもう一つ。城にいるもう一人の侵入者である人間を発見して明日の転移までに城外に追い出すこと。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる