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171話 指名手配犯、黒鉄のイザベル
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広い魔王城の中を走り回るのは難しい。ですが、このどこかに隠れている侵入者を探し出す必要があります。
「時空魔法、加速」
加速だけではダメ。むやみやたらに走り回るだけじゃ、きっと答えにたどり着けない。
「波動魔法、反響定位」
視界で対象を捕捉できないなら、目に頼らなければいい!
私は全身から微弱な波動を放出し、その反響から視覚では捕らえることのできない物体の位置を探り始めました。
「ここにはいない。時空魔法、転移」
私は転移して一つ上の階に階段を使わずに移動します。当然、視覚で彼女を捕らえることもできませんし、周囲には違和感もありません。
このフロアの目に届かないところにいるかもしれないわ。
「もう一度! 波動魔法、反響定位」
周囲の反響から、また人を探し出すことに失敗。このフロアにもいない。
私はすべてのフロアに対して反響定位を行使しましたが、怪しい人物を探し出すことができませんでした。
ダメダ。魔力量が足りない。【緑】のワンダーオーブを持っているはずなのに、魔力の総量が減ったのかしら?
不意に確認する。小瓶の中に転がる四つのワンダーオーブ。【藍】【黄】【白】【橙】。
「ない!? 【緑】のワンダーオーブがない!? どうして!?」
いつから? この小瓶は私とブランク…………もといノワールにしか視認できないはず。なのにこの中に【緑】のワンダーオーブがありませんでした。
最後に取り出したのは確かイザベルの幻惑魔法を打ち破るために、より強力な幻惑魔法を行使させるためにオリバーに貸し出した時のハズ。
「あの時ね。オリバーは私まで幻惑魔法で騙して…………【緑】のワンダーオーブが奪われていたのね!?」
おそらくオリバーは定期的に私に幻惑魔法をかけなおしていたんだわ。
オリバーは舐めプでわざわざ詠唱して魔法を行使しますが、基本は無詠唱で魔法を行使できる天才児。
いつの間にか魔法にかけるなんてお手の物よね。
その仮説が正しければ、魔王城に来て私が魔力切れをおこして倒れてしまったのは、全部あいつが【緑】のワンダーオーブを奪ったせいってことじゃない。
「とにかく回復しましょう。幸い、【藍】のワンダーオーブの治癒の力があります。少し休憩すれば魔力も元に戻るはず」
そうだ。食事もしましょう。もうふらふらよ。
私はキッチンに向かい、昨日までにスザンヌが用意してくださった食事を食べに向かいました。
冷めた蒸し鶏、冷めてしまったスープそれからカチカチのパン。
「時空魔法、逆再生」
それらの時間を半日だけ戻します。今の私にはこの程度の時間操作でも息切れを起こしてしまいそうです。
「魔法があるから保存食じゃなくてもいいわ! なんて強がるんじゃなかったわ」
昨日のやり取りを思い返す。明後日には私も帰れる。一日くらいの食事なら作り置きされたものを時間を戻すだけ。
そんな甘い考えは、想定外の事態で瓦解してしまいます。そもそも、魔力切れを起こした時点で怪しむべきでした。
「せめてノワールに会えれば。あいつなら侵入者の位置を把握しているはず」
ですがノワールの私室にも彼の姿はありませんでした。
隠れられる場所なんてありませんでしたから、探していませんでしたが、もしかして。
私は食事を終えてから塔の上を目指して螺旋階段を登り始めます。
登り切った先にノワールの姿も侵入者の姿もない。幻惑魔法で隠れているわけでもない。
「無駄足でしたか」
今日中に侵入者を見つけて撃退。私にできるかしら。
塔の上から魔王城を眺めます。良く見れば離宮と言うべきか離れにあたる建物が散見していました。
まだ可能性がある。そう思った私は一つ一つをしらみつぶしに探し始めました。
一つ一つなるべく魔力を温存して探し始め、とある建物の扉を開ける。
「反響を使うまでもありませんね。何日ぶりですか? イザベル」
「あら、見つかってしまったわね」
武器庫の奥。剣や鎧が並ぶ部屋の中で、彼女は砲台の上に腰をおろして果物をかじっていました。
「ここで決着をつけましょうイザベル!」
一対一。ワンダーオーブは四つ。そのうち一つは【白】のワンダーオーブ。これがどこまで戦闘に役立つかわかりませんが、彼女を魔王城から追い出さ泣ければ、明日私は帰ることができません。
「負けるのはお姫ちゃんの方よ」
互いの周囲に魔力の渦が集まります。
「波動魔法、波動」
「状態魔法、石化」
互いが魔法を発動し、私達の戦いが始まりました。
「時空魔法、加速」
加速だけではダメ。むやみやたらに走り回るだけじゃ、きっと答えにたどり着けない。
「波動魔法、反響定位」
視界で対象を捕捉できないなら、目に頼らなければいい!
私は全身から微弱な波動を放出し、その反響から視覚では捕らえることのできない物体の位置を探り始めました。
「ここにはいない。時空魔法、転移」
私は転移して一つ上の階に階段を使わずに移動します。当然、視覚で彼女を捕らえることもできませんし、周囲には違和感もありません。
このフロアの目に届かないところにいるかもしれないわ。
「もう一度! 波動魔法、反響定位」
周囲の反響から、また人を探し出すことに失敗。このフロアにもいない。
私はすべてのフロアに対して反響定位を行使しましたが、怪しい人物を探し出すことができませんでした。
ダメダ。魔力量が足りない。【緑】のワンダーオーブを持っているはずなのに、魔力の総量が減ったのかしら?
不意に確認する。小瓶の中に転がる四つのワンダーオーブ。【藍】【黄】【白】【橙】。
「ない!? 【緑】のワンダーオーブがない!? どうして!?」
いつから? この小瓶は私とブランク…………もといノワールにしか視認できないはず。なのにこの中に【緑】のワンダーオーブがありませんでした。
最後に取り出したのは確かイザベルの幻惑魔法を打ち破るために、より強力な幻惑魔法を行使させるためにオリバーに貸し出した時のハズ。
「あの時ね。オリバーは私まで幻惑魔法で騙して…………【緑】のワンダーオーブが奪われていたのね!?」
おそらくオリバーは定期的に私に幻惑魔法をかけなおしていたんだわ。
オリバーは舐めプでわざわざ詠唱して魔法を行使しますが、基本は無詠唱で魔法を行使できる天才児。
いつの間にか魔法にかけるなんてお手の物よね。
その仮説が正しければ、魔王城に来て私が魔力切れをおこして倒れてしまったのは、全部あいつが【緑】のワンダーオーブを奪ったせいってことじゃない。
「とにかく回復しましょう。幸い、【藍】のワンダーオーブの治癒の力があります。少し休憩すれば魔力も元に戻るはず」
そうだ。食事もしましょう。もうふらふらよ。
私はキッチンに向かい、昨日までにスザンヌが用意してくださった食事を食べに向かいました。
冷めた蒸し鶏、冷めてしまったスープそれからカチカチのパン。
「時空魔法、逆再生」
それらの時間を半日だけ戻します。今の私にはこの程度の時間操作でも息切れを起こしてしまいそうです。
「魔法があるから保存食じゃなくてもいいわ! なんて強がるんじゃなかったわ」
昨日のやり取りを思い返す。明後日には私も帰れる。一日くらいの食事なら作り置きされたものを時間を戻すだけ。
そんな甘い考えは、想定外の事態で瓦解してしまいます。そもそも、魔力切れを起こした時点で怪しむべきでした。
「せめてノワールに会えれば。あいつなら侵入者の位置を把握しているはず」
ですがノワールの私室にも彼の姿はありませんでした。
隠れられる場所なんてありませんでしたから、探していませんでしたが、もしかして。
私は食事を終えてから塔の上を目指して螺旋階段を登り始めます。
登り切った先にノワールの姿も侵入者の姿もない。幻惑魔法で隠れているわけでもない。
「無駄足でしたか」
今日中に侵入者を見つけて撃退。私にできるかしら。
塔の上から魔王城を眺めます。良く見れば離宮と言うべきか離れにあたる建物が散見していました。
まだ可能性がある。そう思った私は一つ一つをしらみつぶしに探し始めました。
一つ一つなるべく魔力を温存して探し始め、とある建物の扉を開ける。
「反響を使うまでもありませんね。何日ぶりですか? イザベル」
「あら、見つかってしまったわね」
武器庫の奥。剣や鎧が並ぶ部屋の中で、彼女は砲台の上に腰をおろして果物をかじっていました。
「ここで決着をつけましょうイザベル!」
一対一。ワンダーオーブは四つ。そのうち一つは【白】のワンダーオーブ。これがどこまで戦闘に役立つかわかりませんが、彼女を魔王城から追い出さ泣ければ、明日私は帰ることができません。
「負けるのはお姫ちゃんの方よ」
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互いが魔法を発動し、私達の戦いが始まりました。
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