BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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173話 【白】のワンダーオーブ

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 絶望的な状況。イザベルが魂の抜けた私の体を引きずる姿を、私はただただ眺めることしかできません。

 似非幽体の私はモノを触ることも、声をあげることもできない。

 脳の命令は肉体に行き通らない。

『私の肉体がここにあるうちはまだいい。イザベルがどこに運んでいるかが問題よね』

 それにもっと言えば、明日になって私が転移されなかった場合、魔王が約束を破ったという扱いを受けてしまいます。

 魔界側がいくら否定しても、私を発見するまではブラン王国と魔界の戦争が起こりかねない。

 焦りすぎていた。私一人で指名手配犯に勝てるなんて驕っていたいんだ。

 こんなところで挫折して、私はアリゼに勝てるのでしょうか。みんながいても、勝てるのでしょうか。

 逃げ出すべきだ。逃げる方がいい。王国のみんなを見捨ててでも、大切な人たちと逃げ切った方が良いに決まっている。

 そう。だって今、私の妥当アリゼは失敗に終わろうとしているのですから。

 悔しい。

 悔しい。

 悔しい。

 悔しい。

 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。

 私の鞄の中。小瓶が入っていた辺りが白く光る。

 あれは【白】のワンダーオーブの光?

 そういえば私の幽体離脱はあくまで錯覚。私の思考はすべてあの引きずられている肉体の中で行われているはず。

 つまり、この距離からワンダーオーブを行使することができる。

 一か八か。ゲームになかった謎のワンダーオーブの力。鬼が出るか蛇が出るか。

 光ったんだから、力を貸してくれるのでしょう?

「何よこの光」

 イザベルが私の鞄を漁りますが、小瓶は私とブランクにしか見えません。

 中身が突然光出しているが、何が光っているかわからない様子のイザベル。

 そして【白】のワンダーオーブが輝き続けいつしかその光の色は紫色に変色していました。

 そして私の指先がピクリと動き出したことに私だけが気付きます。

 きっとイザベルは発光している鞄に気を取られて気付いていないのでしょう。

 今なら口も動かせるかも! 選ぶ魔法を間違えてはいけない。この瞬間、確実に助かる方法。それはあれだ。

「波動魔法、地割れクラック

 私は出せる限りの魔力をすべて放出するつもりで大地に波動を流し込みます。

 その結果、大地に大きな亀裂が生まれ、武器庫は半壊。

 魔王城まで大きな揺れで瓦礫を落とします。

「何ですって!?」

 私が魔法を行使したことに気付いたイザベル。【白】のワンダーオーブはもう光っていません。

 そして私は魔力切れを起こしてしまい、今度こそ本当に指一本動かすことができなくなりました。

「何? お姫ちゃん悪あがき? もー、よめてよねそういうの驚いちゃうじゃない」

 意識だけはある。さきほどと違い、引きずられて痛いことも感じる。

 幽体離脱は完全に解除されたようです。あとは先ほどの結果を待つだけですね。

 私達が武器庫から出たところで、イザベルが立ち止まります。

「あらぁ? 何か用かしら? これ必要だった?」

「いいや、どうでもいい。が、そいつが俺の家にダメージを与えた張本人だというなら、置いていってもらおうか」

 魔王ノワールがそこにいた。彼はここに来る理由がある。それは先ほど、ありえない威力の波動魔法によって城が攻撃されたからでしょう。

「ふーん? さっきのは張ったりじゃなくて魔王様に助けを呼んだってわけね」

「そこのポンコツと俺は違う。死ぬ気があるなら相手をしてやる」

 ポンコツ!?

 今は甘んじて受け入れますが、後で文句を言ってあげるから…………必ず勝ちなさい。

「先手必勝よ! 状態魔法、石化ミネラリゼーション

 イザベルが早速お得意の石化でノワールに攻撃しますが、石化を受けたはずのノワールは無反応。

 それどころか、一切のダメージも受けていない様子。

「嘘でしょ? いくら魔王でもこのイザベル。元宮廷魔術師筆頭なのよ!?」

「魔法で外見まで若作りするような女。たかが知れている」

 嘘でしょ。イザベルってもしかしてオバサンだったりするの?

「せっかくだ。暴いてやるよ魔吸マジックドレイン

 ノワールが理の外の魔法を行使し、左手を紫色に輝かせると、その中央から吸引されるようにイザベルの魔力がはがされて行きます。

 そして私を引きずっていたイザベルの姿は、腰を極限まで曲げたしわくちゃのおばあちゃんになってしまいました。

「どうだ? 見た目に使っていた魔力を戦闘で使ってみれば、少しは俺にダメージを与えられるんじゃないか?」

「こんの、くしゃれまふぉーぐあぁ! (この腐れ魔王がぁ!)」

 よぼよぼのイザベルのなんと発音しているかわからない叫び。

 なるほど。実態があんなによぼよぼで腰を曲げていたとしたら、先ほどの私の槍の殴りは何も殴っていなかったのね。

 触れた感触まで幻惑魔法で再現していたのですから、かなりのリソースを割いていたはず。今度こそ、イザベルの本気の魔法がノワールを襲うはずです。

「まふぉぉめ! くぉーかいさしぇてくれりゅ! (魔王め! 後悔させてくれる!)」

「??? はがすんじゃなかったな。何を言っているかわからん。早く済ませてくれ」

「ずおたいあほー! へふ! (状態魔法、地獄ヘル)」

「わからねえ!」

 イザベルから放たれる魔力の流れに対し、ノワールが素手で殴り返すと、その魔力の流れはそのままイザベルに跳ね返りました。

「うぎゃあああ!?」

 イザベルは全身から黒い炎が出火し、やがてその姿は白い灰だけになってしまいました。
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