BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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178話 食事も咽喉を通らない

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 私は【緑】のワンダーオーブを取り返すために、とある男を探しています。

 本来なら探す必要もなく同じ教室にいるのですが、講義終了直後には雲隠れしてしまう男。幻惑魔法使いのオリバー。

 こげ茶色の髪という乙女ゲームヒーローの息子の癖に、没個性みたいな髪色のせいで探しにくい。ただし、ヨーロッパ風の世界で金髪のジェラールの髪色は没個性ではない。

「クリスティーン?」

 ふいに話しかけてきたのは、もうすっかり教師が板についてきたお母様。

「何でしょうか?」

「放課後、時間を空けて置いてちょうだい」

「え? ええ、わかりました」

 エリザベートの表情は、何か寂しそうな今にも泣きだしそうな雰囲気。

 何か大切な物でも失う。あるいは手放すのでしょうか。

 よくわかりませんでしたが、特に断る理由もなければ権限もありません。私は大人しく従うことにしました。

 午後の講義はまだまだあります。私はお母様をおいて別の教室に向かいます。

 向かった先の教室では久しぶりのアンヌ先生。まったりボイスは健在ですが、彼女がすごい魔法使いだということは、魔法遠征でラクダリレーをした一部の生徒しか知らない。

 ここに集まるのは波動魔法使いばかり。カトリーヌとジャンヌに挟まれて講義を受けて入れると、なんだかいつも通りだなと感じますが、別に他に友達がいないとかそういう訳ではない。そういう訳ではないんだ。

 ほら、魔法遠征の時に私とカトリーヌと一緒に四人並んで波動魔法を使ってくれた双子とか…………名前なんでしたっけ?

「それではぁ~今見せた音の波動魔法と同じようにぃ~波動魔法を別の現象に変える魔法を見てみましょうかぁ~。ジャンヌさぁん」

「へ!? はい!」

 急に呼ばれて教壇の前まで歩いてくジャンヌ。光の波動魔法を使い、手元を光らせると、周囲の生徒が褒めたたえます。

 特に入学当初の彼女を知っている元Aクラスの波動魔法使いの生徒たちは、彼女の成長をはっきりと認識できました。

 当然、中にはそれを面白くないと思っている生徒もいらっしゃるようですが、彼女がいつも私やカトリーヌと一緒にいることから、手を出せる生徒はいませんでした。

「このように音、光の他にも雷の波動魔法やぁ~、未だに解明されていない波動魔法まで存在するようですぅ~。皆さんもきっと何か得意の波動魔法が存在しますのでぇ~、色々試してみてくださいねぇ~」

 ふーん。私も実は光とか音の波動魔法って使えるのかな。音は一度だけ試したことがありますが、コントロールはよくても低威力のものしか使えなかったんですよね。

「カトリーヌは魔力量を根こそぎ食らうような大型の波動魔法ばかりよね」

「そういうあんたも結構偏ってるわよ?」

「え? 私は普通だと思いますけど?」

「じゃあ無意識なのね」

 そんなに偏った系統の魔法を使っていたでしょうか。波動ウェーブばかり頼りすぎたのかしら。

 後は結構豊富な種類の波動魔法を使っていたつもりでしたが、無意識に好みや使いやすい魔法を選んでいたようね。

 授業はそこで終わり、私達はお昼を食べるために食堂に向かいました。

 あいかわらず食堂は貴族平民。貴族間でも身分差で席が決められています。

 王族や皇族しかいないテーブルには知り合いもほとんどいない上に、今は唯一の知り合いだったオリバーまで雲隠れ中。

 これは間違いなく【緑】のワンダーオーブを盗んだのは彼で間違いないのでしょうね。

 動機は追及することが難しいですが、ワンダーオーブというアイテム。欲しがらない方がおかしいものを、一方的な信頼で貸してしまった私の落ち度よね。

 ミゲルにも一度お貸ししましたが、それはすぐに返されました。

 彼にはごまかす手段もありませんが、それ以前に裏切らない前提でした。

 オリバーだってそう。自分にとって面白いを優先する男だということはわかっていたのに、私はとっさにワンダーオーブを貸してしまったのです。

 もしかしたらこの状況も楽しんでいるだけで、アリゼと戦う前には【緑】のワンダーオーブを返してくれると助かるのですが。

 考えていたらおかわりも咽喉を通らなそうなくらい食べていたわ。

「スザンヌ?」

 さきほどまで存在感をけしてずっと後ろにいた私のメイド、スザンヌ。

「何でしょうか姫様」

「このスープ、もう一杯貰ってきてくれるかしら」

「畏まりました」

 向こうから接触するのを待つべきでしょうか。とにかく昼休みも何もなければ今日は無理ね。

 だって放課後にはお母様からお呼び出しをくらっているのだから。

 私はおかわりのスープを咽喉に通しながら、エリザベートの用件はなんだろうかと考えるのでした。
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