BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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195話 暴走する精神

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 手元で浮かべていた雷撃を私たちに飛ばしてくる。その大きさは大体ブリング玉程度でしょうか。

 そのフレデリックの雷撃が、大地を焦がしながら確実にこちらに進行してきました。しかし、突如雷撃は明後日の方向に向かって進んで行きました。

 どうやらスザンヌが近くにあったものの電気抵抗値を下げて雷撃の進行方向を操作します。しかし、フレデリックもすぐその事態に気づいてしまいました。

「……付与魔法使いか。俺も得意だ」

 すぐさま術者を割り出したフレデリックは、スザンヌの方に視線を向けて逸れてしまった雷撃の方向を軌道修正してしまう。フレデリックからしてもっとも厄介と判断されたのでしょう。

 スザンヌもそれに気づいて必死で抵抗しますが、互いに無詠唱で魔法を行使。どちらが優位かは雷撃の走る向きでしか判断できない。そして雷撃は確実にスザンヌに迫って行きました。このままではいけない。

 私はスザンヌを抱きしめます。

「時空魔法、転移ワープ

 短距離の転移魔法しか使えないですが、操作の難しい雷撃を回避することは難しくありません。しかし、その近くにはジャンヌとアンヌ先生を残したまま。目的地を失った雷撃の進行方向はアンヌ先生に向かいました。いくらアンヌ先生でも雷撃をかわすことはできない。失敗した。

 そう思った瞬間にウィルフリードがアンヌ先生とジャンヌの盾になるように前に出て雷撃をその身に受けてしまいます。

「ぐあぁあああああああお!」

「ウィルフリード!!」

 魔狼であるウィルフリードは人間よりも間違いなく丈夫でしたが、それでもフレデリックの王宮の城壁すら簡単に破壊する雷撃。それの傷はあまりにも大きかった。その場で立てなくなるウィルフリード。

 小さな体のころからいつの間にか人を何人も乗せて走れる大きさになったこの子は、私にとって家族も同然でした。そんなウィルフリードがたった今雷撃を受けてその場に力なく倒れ込んでしまいます。その数秒の映像こうけいは、あまりもにスローに見えた。時空魔法で世界を遅くしたわけでも、幻惑魔法で悪夢を見せられているわけでもない。

 浄化魔法により吸収し、内心で粗ぶっていたロマンの邪な感情が、私のなんとか保っていた感情を押し殺すきっかけとしては十分でした。ぐちゃぐちゃにされた精神が、形を取り戻すように再構成されていく。そこには浄化魔法で吸収した悪感情ごと、一人分の精神が一つになった。

「ヨクモ」

 許さない。ゆるせない。ゆルせるわケがなゐ。ユるしてワいケない。こコデコゐツおコロすべきだ。

 私の感情に呼応するかのように、【白】のワンダーオーブが緑色に光始めた。

「ユルさナイ。波動魔法、天地逆転リバーサル

 両手を大地につけた私は自分たちの立っていた足場ごと宙に浮かせる威力の波動を地中から地上に向けて放出させる。

「ほう?」
「姫様! 危険です。私たちごとどころか姫様もなんて!!」

 ジャンヌが何かを叫んでいる。でも、貴女が今喋っている言葉が、どういう意味だったか朧気だわ。

 上空に打ち上げられた大地がそのまま反転して地上に降り注ぐ。

 コのまま行ケばワたシのからダゴと、あのにクいをとこおダゐちにどそウデきる。やった。やり遂げた。やり遂げた?

 あれ? 何かがおかしい。私は誰をどういう理由で憎んでいたんだっけ?

「姫様!」

 するとすぐ隣にいたスザンヌが耳元で叫ぶと彼女は私を押し倒し、私に覆いかぶさるように倒れ込む。そして無数の大地が降り注ぐ。ハッとしてすぐにジャンヌさんとアンヌ先生、ウィルフリードを確認するとアンヌ先生がドーム状の結界を生成していました。

 そしてすぐに視界は土砂で埋まった。土の冷たさだけが皮膚に染みる。自分の失敗に気づいたころには手足を動かすことも叶いませんでした。
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