209 / 228
203話 最悪の魔女
しおりを挟む
出発の準備の際、オリバーから【緑】のワンダーオーブが返還されました。
「主力もいなくなりましたことですし、もう大司教が持っていなくても大丈夫でしょう。それよりも今は君が持つべきだ」
「……いいえ、それはわからないわ」
これまでの戦いで学んだこととして、【白】のワンダーオーブは私が必要な力を引き出す万能のワンダーオーブ……だと推測できる。だったら残る六つのワンダーオーブは、その力を最大限に発揮できる人物が持てばいいのではないだろうか。
「ジャンヌ、スザンヌ。一度ワンダーオーブを返してもらっていいかしら」
「はい」「ええ」
二人からそれぞれ貸していたワンダーオーブを受取り、私の手元には【藍】【緑】【黄】【橙】【青】【紫】そして【白】のワンダーオーブが集まった。
アリゼと戦うために集める予定だったワンダーオーブ六個プラスアルファ。これだけ揃えれば、負ける相手ではないはず。あとは状況に合わせて……
「作戦があるわ。聞いてくれるわよね?」
私がそう言って、皆が頷いてくれた。全員にワンダーオーブの効力まで説明した上で、戦法が決定する。
「それでは向かいましょうか」
王宮の端、城壁に寄り添うようにある馬小屋にて一人一頭ずつ乗り、私たちは街中を走り出す。
私のそばを走っているカトリーヌさんが私に声をかける。
「それで、魔女の居場所は見当がついているのかしら?」
「少し王宮から外れたところよ。王宮付近なら魔力同士のぶつかり合いで肌で感じられるからわかるわ。それに、どうやら探知なら【紫】のワンダーオーブが役立ってくれるみたいですし」
【紫】のワンダーオーブ。禁書では幸運と書かれていたそれの本来の効力は、魔力感知強化。幸運と呼ばれる所以は、魔力は波動魔法でなくても効力の強まるタイミングと弱まるタイミングの波が存在します。それをより強く感じとることができ、感じ取り方だけで上級魔法を下級魔法で打ち消すことが可能。その力を振るった者はまさに『運が良かった』と言われた。それが所以らしいです。
こう書かれていたということは、禁書に記された時代にはワンダーオーブが使用されていたってことなのよね。
まあ、何が言いたいかといえば、今の私は魔力の衝突を肌で感知できる。そしてそれがものすごく遠くだったとしても、ブランクの魔力ははっきり感じ取ることができている。あいつの魔力だけはすぐにわかった。
魔王だからなのか、それ以上の理由があるかわからないけど、今はこれに助けられているわ。
「感知完了! 目的地は定まったわ! 全員速度を上げるわよ! アレクシス、手伝って頂戴!」
「承知」
「「時空魔法、加速」」
十頭の馬に時空魔法がかけられると、私たちは振り落とされない限界の速度で駆け出し始めます。一秒ごとに感じる魔力量は、人間の常識を超えている。片方は間違いなくブランクのものですが、もう片方のアリゼは人間であるはずにも関わらず強大な魔力を手にしていた。これだけの魔力量、真正面からぶつかってしまえば、波動魔法でなくても灼けてしまいそうだ。
【紫】のワンダーオーブを持っていないみんなでも、ある程度の近さで衝突しあう魔力を肌で感じ始めます。もうすぐそこにアリゼとブランクがいる。瓦礫の山を突破し、大きな建物だったものの奥にある広場に到着して、ようやくブランクの姿が視界に入りました。
「ブランク!!」
私が声をかけると、ブランクは振り返る。そして私と視線がぶつかり、目を見開いて驚いた。彼の顔からはっきりと焦りを感じたのは、初めてかもしれない。
「くそ! なんで来たんだ!!!」
ブランクがそう言った瞬間、私は言い返してやろうと思ったのに、さっきまでいた場所にブランクの姿はない。そして大きな金属音が私の頭のすぐ後ろで鳴り響く。
振り返ると、そこには成人男性よりも大きい死神の鎌のような金属が私の後頭部に向かって振り下ろされていた。
それを黒い靄でできた刀身すらあいまいな剣のような物で受け止めるブランク。
「紺碧の瞳……その瞳、その瞳は……ジェラールの瞳かしら?」
振り返った私が再び正面を向こうとする前に、その先から心臓まで貫くような冷たい声のする女性に声をかけられる。
ゆっくりと首を動かすと、そこにいたのはブロックノイズが走ったように身体の所々が消えている一人の女性。髪の色はブラウン。瞳の色は琥珀色。あくまで日本人だったら色白といわれる程度の肌色。背は私より少し高いくらいの魔術師がいた。
何を思ったのか、服装は黒いウェディングドレス。不気味な女とし視線が交差する。ああ、間違いない。こいつがアリゼだ。
「主力もいなくなりましたことですし、もう大司教が持っていなくても大丈夫でしょう。それよりも今は君が持つべきだ」
「……いいえ、それはわからないわ」
これまでの戦いで学んだこととして、【白】のワンダーオーブは私が必要な力を引き出す万能のワンダーオーブ……だと推測できる。だったら残る六つのワンダーオーブは、その力を最大限に発揮できる人物が持てばいいのではないだろうか。
「ジャンヌ、スザンヌ。一度ワンダーオーブを返してもらっていいかしら」
「はい」「ええ」
二人からそれぞれ貸していたワンダーオーブを受取り、私の手元には【藍】【緑】【黄】【橙】【青】【紫】そして【白】のワンダーオーブが集まった。
アリゼと戦うために集める予定だったワンダーオーブ六個プラスアルファ。これだけ揃えれば、負ける相手ではないはず。あとは状況に合わせて……
「作戦があるわ。聞いてくれるわよね?」
私がそう言って、皆が頷いてくれた。全員にワンダーオーブの効力まで説明した上で、戦法が決定する。
「それでは向かいましょうか」
王宮の端、城壁に寄り添うようにある馬小屋にて一人一頭ずつ乗り、私たちは街中を走り出す。
私のそばを走っているカトリーヌさんが私に声をかける。
「それで、魔女の居場所は見当がついているのかしら?」
「少し王宮から外れたところよ。王宮付近なら魔力同士のぶつかり合いで肌で感じられるからわかるわ。それに、どうやら探知なら【紫】のワンダーオーブが役立ってくれるみたいですし」
【紫】のワンダーオーブ。禁書では幸運と書かれていたそれの本来の効力は、魔力感知強化。幸運と呼ばれる所以は、魔力は波動魔法でなくても効力の強まるタイミングと弱まるタイミングの波が存在します。それをより強く感じとることができ、感じ取り方だけで上級魔法を下級魔法で打ち消すことが可能。その力を振るった者はまさに『運が良かった』と言われた。それが所以らしいです。
こう書かれていたということは、禁書に記された時代にはワンダーオーブが使用されていたってことなのよね。
まあ、何が言いたいかといえば、今の私は魔力の衝突を肌で感知できる。そしてそれがものすごく遠くだったとしても、ブランクの魔力ははっきり感じ取ることができている。あいつの魔力だけはすぐにわかった。
魔王だからなのか、それ以上の理由があるかわからないけど、今はこれに助けられているわ。
「感知完了! 目的地は定まったわ! 全員速度を上げるわよ! アレクシス、手伝って頂戴!」
「承知」
「「時空魔法、加速」」
十頭の馬に時空魔法がかけられると、私たちは振り落とされない限界の速度で駆け出し始めます。一秒ごとに感じる魔力量は、人間の常識を超えている。片方は間違いなくブランクのものですが、もう片方のアリゼは人間であるはずにも関わらず強大な魔力を手にしていた。これだけの魔力量、真正面からぶつかってしまえば、波動魔法でなくても灼けてしまいそうだ。
【紫】のワンダーオーブを持っていないみんなでも、ある程度の近さで衝突しあう魔力を肌で感じ始めます。もうすぐそこにアリゼとブランクがいる。瓦礫の山を突破し、大きな建物だったものの奥にある広場に到着して、ようやくブランクの姿が視界に入りました。
「ブランク!!」
私が声をかけると、ブランクは振り返る。そして私と視線がぶつかり、目を見開いて驚いた。彼の顔からはっきりと焦りを感じたのは、初めてかもしれない。
「くそ! なんで来たんだ!!!」
ブランクがそう言った瞬間、私は言い返してやろうと思ったのに、さっきまでいた場所にブランクの姿はない。そして大きな金属音が私の頭のすぐ後ろで鳴り響く。
振り返ると、そこには成人男性よりも大きい死神の鎌のような金属が私の後頭部に向かって振り下ろされていた。
それを黒い靄でできた刀身すらあいまいな剣のような物で受け止めるブランク。
「紺碧の瞳……その瞳、その瞳は……ジェラールの瞳かしら?」
振り返った私が再び正面を向こうとする前に、その先から心臓まで貫くような冷たい声のする女性に声をかけられる。
ゆっくりと首を動かすと、そこにいたのはブロックノイズが走ったように身体の所々が消えている一人の女性。髪の色はブラウン。瞳の色は琥珀色。あくまで日本人だったら色白といわれる程度の肌色。背は私より少し高いくらいの魔術師がいた。
何を思ったのか、服装は黒いウェディングドレス。不気味な女とし視線が交差する。ああ、間違いない。こいつがアリゼだ。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる