BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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216話 木札

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 小さな村の小さな宿屋。ジャンヌと二人で始めた生活はそこまで苦ではなかった。

 もともと、貴族社会的な思考ではなく、中垣深雪の人格を持ち合わせていた私としては、姫として生活するよりも、ずっとのびのびしている気がする。

 私が様々な魔法を使えるおかげで金銭面で苦労することはなく、生活面でもジャンヌはテキパキ働くいい子なので互いに文句もない。

 生活拠点を移しながら王都近郊を移動している時。よからぬ噂を聞きつける。

 村から村へと移動する大きな馬車の荷台。そこにお金を払って私たちを含めた十数人の人間が乗り込む。

 その噂は、荷台の後ろの方に座る若い狩人たちからだった。

「するってぇとあれかい? お前さんのところにも木札が?」

「ああそうさ。なんだか不気味だけどよ。木札の件が事実ってんならやっぱ動くべきなんじゃねえかな」

「おいおいおい。そんなはずねーだろ。あんなん根も葉もないうわさを信じちまうのか? それで国家反逆罪にでもなってみろ」

「ああ、そうだな。俺は今の暮らしに不満はねぇ。でも、今が続くかどうか……」

 聞き逃すべき会話だろうか。木札といい、国家反逆罪といい、気になるワードが飛び交う中、根も葉もない噂というものも、どういった内容か気になる。

 アリゼ関連なのだろうか。国家反逆罪になるような活動となると、やはり傭兵の募集。それも、国を悪くいう形で反逆者を集めているような雰囲気でしょう。

 今の話だけでアリゼ関連だと決めつけるには早計かもしれない。でも、間違いなく国にとってよくない話だ。

 何者かが、国家反逆罪になりうる人材を集めていることは明白。

 もうしばらく様子をみつつも、もうアリゼたちは襲撃をする準備を控えているのでしょう。

 馬車を降りて村の中に入る。周囲の様子は何も変わらない。これまで見てきた村と一緒。少し前まで戦争の駐屯所として利用されていたことから、騎士団へのあたりが少しだけ強いのが印象的だった。

 そのおかげか、街中などで馬車の中以上に木札の件は話題になっていた。どうやらこの村には王国派の人間の方は発言権が低く、木札の件の話題から逃げるようにしている人を見つけた。

 あの人にしよう。

 私とジャンヌはその人に目星をつけて声をかける。そこで聞けた話は王国側、騎士団側のあらぬ噂。それから手を取り合って一揆を企てていたこと。

 首謀者こそわからなかったけど、彼らがどこに集まるかまでは知ることができたわ。

 その集まりに乗り込んで、ぶち壊してやろう。それでもしアリゼ関連だったら幸運だわ。この村の人たちはどちらかといえばこの話に乗り気な人はいるみたいですけど、声を上げて参加しようと言い出す人はいなかった。

 今の暮らしにこそ不満がなければ危険を冒す必要はない。この村も駐屯所にされたことに不満があったものの、反逆が成功したらいいなくらいの感覚の人が多い。けして自分で動こうとしない。誰かがやってくれるのを待っている。情けないことですが、敵の戦力の増強にならないことや、国民とわかっている人間に魔法を行使しなくて済むなら、今はこれでいいかと思えた。

 私たちは宿泊先の部屋に入ってから一息ついて顔を見合わせた。

「四日後、ここから北西の集落でしたね」

「ええ、明日には向かいましょう。どちらにせよ見過ごせないわ」

 アリゼ関連の可能性は高い。でも違うかもしれない。それ以上に、実は私たちの行動を誘導して本命は別かもしれない。

「問題は渡したところに例の木札がないことよね。実物も見ていないし、何か重要なことが書かれているかも」

「明日、行く気のない人からもらうのはどうでしょうか?」

「…………試してみましょうか」

 私たちはそこまで話してから眠りにつく。どこの勢力か知りませんが、今ここで王国に攻め入る勢力があることを知った以上、つぶしにかからなければいけない。それだけは間違いないんだ。でも、何か胸がざわつく。そんな感じが私の睡眠を妨げた。
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