勇者の子孫だがもうツラい。最強の血飛沫魔法と共に不マジメンに生きてやる。

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

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戌申雉

夏と言えば海!!↑ネタバレ

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 アホみたいに村を救った『ブラストン』。そして訳ありで聖マジメ帝都学園を裏切った少年『エメラル』。
刺客メンズレンズを倒したブラストンは旅を続ける。それを追うエメラル。
そして、現在彼女らは……。

ザバーン。ザバーン。

───海の上にいた。


彼女らが港からイカダに乗って、もう2日は経過している。

「なんでこんな事に?」

サンサンと照りつく太陽。周囲には海以外に何もない。そしていつの間にかブラストンもイカダの上にいない。行方不明である。

「勝手に着いてきちゃったけど。やっぱり僕は捨てられたのかな?」

ショックだった。捨てるにしても普通は海の上に捨てることはないだろ。
こんな少年を海の上に捨てるほど卑劣な女性だとはエメラルも思っていなかった。
しかし、その考えは否定される事となる。

「おーい少年。おーい」

この場からいなくなったはずのブラストンの声がエメラルの耳に届いたのだ。

「食料取ってきたから食べよう~!!」

海上からピョコッと顔を出しながらこちらへと泳いでくるブラストン。
海の中からイカダの上に上がってきたブラストンが手に持っていたのは大きな網。
そしてその中にはブラストンが海底で捕まえてきた大量の海産物があるのだろう。

───スイカ

「なぜスイカが!?!?」(エメラル)

「おいおい、なんだ?  メロンがよかった?」(ブラストン)

「いや、そうじゃなくて……」(エメラル)

「海産物は嫌いか?」(ブラストン)

「おいおい、エメラル君。好き嫌い言うもんじゃありませんぞ」(???)

「あれ?  僕がおかしいの?」(エメラル)

不思議そうにエメラルの表情を眺めながら、ブラストンは海水をかけてスイカを食べる。
エメラルは(自分の頭が熱さでおかしくなったのか?)と疑いながらも、空腹には耐えられずスイカを食べ始めた。



 イカダに乗って海で採れたスイカを食べる2人。
スイカの数が半分に達した頃、エメラルはブラストンにお礼を言った。

「そういえばブラストンさん。僕を旅のお供に連れてくれてありがとうございます。助かります」

「いやいや。私としてもこれから向かう場所は不安でな。1人じゃ心細くて。
仲間集めの旅だから、ちょうどエメラルみたいな仲間ができて嬉しかったよ」

「仲間集めの旅……。じゃあ今から向かう先も?」

「そうだなぁ。魔王城に素晴らしく完璧で最強でマジで無敵の馬のような鹿みたいな奴がいる。そいつを仲間に引き入れるのさ」

「まっ、魔王城!?!?」

その言葉にエメラルは震え上がる。
魔王の恐怖はいまだにこの大陸の住人たちの心に根付いているからだ。
この大陸を恐怖と支配で蹂躙した最悪の存在。ようやくその時代も過ぎ去ってはいるものの、傷跡は簡単には癒えない。
だからこそ驚いたのである。
さらに、それが原因だったかは分からないが、エメラルは急に倒れてしまった。



 急に目の前で倒れてしまったエメラルを見て、ブラストンは心配になってしまい、スイカも投げ捨てて少年に駆け寄る。

「おい、エメラル。しっかりしろ!!」

あたふたあたふた。

「くそーー、早く救急車を呼ばなくちゃ」

「救急車ァァァァァァ!!!」

「あっ、そもそも電話もないんだった(テヘッ)」

あたふたあたふた。

「そうだ。病院に駆け寄るのだ」

「あっ、そもそも周りが海だった(テヘッ)」

あたふたあたふた。

「くそーー、病院。近くに病院はないのか?」

「病院病院病院病院……」

「ビョイーン…………フフッ。フッ。フフフフ」

「…………………………アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

気が狂ったのだろうか。とうとうブラストンは奇声を発しながら海の中へと飛び込んでしまう。
「(ブラストンさん……)」
エメラルはそんな彼女の姿を虚ろな目で眺めながら、ゆっくりと意識を失っていった。



────数分後────



 「…………しろ。しっかりしろエメラル!!」

「幻覚?」

「幻覚じゃねぇ。見ろよ!!」

ブラストンに顔を手で潰されながら、エメラルは彼女の見せたい方向に顔を向ける。
そう言っても、イカダの上にいる状態なので大海原しか見えないはずだったのだが……。
それはイカダの上にあった。

──病院
「幻覚じゃん!?」

(幻覚か!?)と思いながらエメラルは目を擦る。
しかし、どれだけ擦っても目の前には病院が……。
もう訳もわからずエメラルは混乱していたのだが、突然ブラストンがお姫様ダッコを行ってきた。

「わざわざ海の底から持ってきたんだぞ。ほら、早く行くぞ」

「えっ、ちょ、待って」

幻覚なのか夢なのか。
エメラルはブラストンにダッコされて突然現れた病院の中へと大急ぎで入っていくのであった。



 退院。
さいわい、命に別状もなかったエメラルは無事に医者からも水分補給を取りなさいと言われた。
脱水症状の初期だったらしい。

「めでたしめでたし」(ブラストン)

「いやーよかった。よかった!!
エメラル君が倒れて心配したんだよ。ブラストンさんのお陰でなんとかなったが本当に安心したぜ」(???)

「…………」(エメラル)

エメラルはまだ意識が朦朧としていたのか、まるで幻覚でも見ていたように自分の目を擦る。
そして、イカダの方をジーッと見つめた。

「なんだ?  おい、エメラル。なんだ?
私の顔に何かついてたか?  なぁ、やんのか?   喧嘩売ってんのか?    おい、おいこら。なに?  どうした?  ああん?」(ブラストン)

ブラストンはエメラルの視線の方向を見るが、分かっていないらしい。
けれど、エメラルは確信した。

「ブラストンさん!!
誰かいる!!」(エメラル)

エメラルはイカダの端に座っていた人物に向かって指を指す。
彼は最初からこのイカダに乗っていたのだ。
イカダの上でスイカを食べている時から彼はいた。
誰にも気づかれないように……。
???マークで隠されて存在していたのである。

「ふふふ、まさかこんなにも早くバレてしまうとは……」(???)

???で全身が隠された男は嗤いながら、その正体を白日の元に晒した。
そして、現れるのは男の正体である。
いや、その???ではない男の姿は男と言うべき姿ではなかったのかもしれない。
なぜなら……。

「我が名は『戌申雉(いさるきじ)』。
このイカダに潜入していた聖マジメ帝都学園1年C組の生徒。
ランプの魔法使いだ!!!!」(戌申雉)

なぜなら、その姿は頭が雉、体が猿、しっぽが犬というキメラ生物だったからである。


─────ランプの魔法使い……その実力とはいかに
そしてこの絶海の上に置かれたイカダでブラストン達には勝ち目があるのか?
次回に続く!!!!
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