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学園
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しおりを挟む今…何が起きた…?
いきなり陛下とアシュリィが着替えたと思ったら(アシュリィはめっちゃ可愛かった)、アシュリィが連れ去られるように飛んでった…
ディードが慌てて続き、飛んでったけど。残されたオレ達はみんな、顔を見合わせた。
「あー…えっと。では俺達も準備がありますので、これにて失礼!!」
「「「失礼しまーす!!」」」
へ?アイルを筆頭に、四天王Jr.が手をシュバッ!と顔の前に挙げて、カフェから出て行った?
で…残されたのは。アシュリィ曰く「いつメン」。ジェイドは忙しくて不在…なんだが。
ぽかーん とするオレ達。そこに、窓からディードが戻ってきた。おかえり。
「ただいま…ハァ。陛下の転移魔法で逃げられた。パメラ、何か知っているのか?」
え?全員の視線が、気まずそうに咳払いするパメラ嬢に注がれる。
「えっと…まず。皆様、王宮に向かってください。あ、トレイシー先生も連れて行ってくださいね!」
「「「なんで?」」」
さっぱりわからん。
で、全員でやって来ました王宮に。
なんか話が通ってたらしく、あっという間に謁見室へご案内された?
[よくぞ来てくれた 勇者よ]
「へ?」
なんか陛下…口調おかしくない?無表情だし。つか勇者って、オレ?
椅子に座る陛下の横では…王妃殿下がハンカチを顔に当て、泣き真似をしている。
[しくしく…]
いや声に出してる。でも涙は出ていないどころか、若干口の端が震えてる。
他に部屋にいるのは4人の騎士。全員背筋を伸ばして微動だにしない…なんか置物みたいになってる。
…王妃、カリナ殿下はキャンシー・グラウムの行いを知り。エヴィとティモに対し…しゃくり上げる程に泣きながら、謝罪を繰り返した。
姉がごめんなさい…謝って許される事ではないけれど、本当にごめんなさい…と。
2人は当然、王妃殿下に恨みなど抱いちゃいない。貴女は何も悪くない…むしろ今まで甥として可愛がってくれて、ありがとうございます。と答えていた。
その言葉に殿下は、2人を強く抱き締めた。まるで愛しい息子にするように…2人も照れながら、殿下の背に腕を回した。その光景を前にオレは、涙が出そうになったんだ…
「同じ親の元に生まれ、育った姉妹でも…ここまで違う思想になるんだな…」
オレがぽつりと呟くと、隣にいたアシュリィが手を繋いできた。
「そんなものだよ。かつて…リスティリアス様とリンベルドが、道を違えたように」
……あぁ。確かに…
…って今は思い出に浸っている場合じゃなくて。なんなんだ、この状況?
[なんという事だ… 姫が魔王に 連れ去られてしまったのだ]
[しくしく…]
「それは帰省しただけでは…?」
[……………。勇者よ お前に頼みがある どうか娘を 助けてくれないか]
「なあアル。いつの間に妹ができたんだ…?」
「おかしいなぁ、朝までは3兄弟と義姉上だけだったはずなのに…」
なんかもう、陛下とは会話が成り立たない。誰か助けて。
[もちろん 礼はしよう 娘を連れ帰ってきた暁には 娘と結婚して欲しい]
「え……ええええぇっ!!?」
け、けっこん!?オレとアシュリィが!?
[引き受けてくれるな? 勇者よ]
「え。そりゃもちろん、いずれは…いやちょっと待ってください!?」
[………。引き受けてくれるな? 勇者よ]
「へ、陛下?あの、これまさか魔王陛下の企みですか?」
[引き受けてくれるな? 勇者よ]
陛下は壊れたかのように、同じ言葉を繰り返し…マジで怖い。アルも珍しくドン引きだ、顔を引き攣らせている。
そんなオレ達の背中を…誰かがチョン と突ついた。
「アシュレイ様。ここは「はい」と言わないと無限ループですよ」
…何言ってんだパメラ嬢?けどなんか…状況を把握してそうなの、彼女だけなんだよなあ…よし。
[引き受けてくれるな? 勇者よ]
「は…はいっ!」
[そうか ありがとう 城下で装備を整えて 行くがいい 勇者よ]
本当だセリフが変わった!ただしその後は何を言っても、「行くがいい 勇者よ」しか言わなくなった。退場!
「……ふう、なんだこの演技は。全くリャクルめ、この忙しい時に阿呆な頼みをしてきおって…」
「ふふ…でも。彼らがどんな結末を迎えるのか、楽しみですわ」
「ああ…そうだな」
えーっと。王宮の外まで出たはいいが…この後どうするの…?
「魔国に行く…って事なんだろうけど。一気に魔法で転移はできないし」
夏に使った魔法陣が、まだ使用できないからな。後は近距離の転移を繰り返す…オレには無理ぃ…。船を使ったら時間が…
…って、そうだ思い出した!!
「エヴィ!!!」
「うおっ?なんだ一体」
オレはデメトリアス殿下、エヴィをスカウトするつもりだったんだ!!ゴタゴタで完全に忘れてた!
戸惑うエヴィの右手を両手で握り、かくかくしかじか…
「…だから。オレ達と一緒に、魔王陛下と戦ってくれ!エヴィの力が必要なんだ!!」
「……俺の?」
こくこくこく! 全力で首を縦に振ると…エヴィは左手で口元を覆って、うーんと考え込む。やっぱキツいか…!?命懸けといっても過言じゃないし…
「(……魔王陛下相手に…俺が加わった程度じゃ…下手したら足手まとい。でも)」
「?」
なんだ、オレの顔をじっと見て。
「(これまで…散々シュリ達には世話になった。俺と兄さんの為に尽力してくれた…。
俺も。誰か…友達の為に、力を尽くせる男になりたい…)仕方ないな。俺がいなきゃ駄目ってんなら、手伝ってやるか」
「!!!」パアァ…!
っしゃー!!ありがとう、百人力だ!!これでオレ達の戦力は揃った…絶対勝ーつ!!!
「(こんなに喜ぶとは…調子狂う…)」
エヴィの手を握り直し、固く握手を交わす。で…この後どうすんの?教えてパメラ嬢!
「はーい!ではこれより、私が水先案内人を務めます!最終確認ですが…魔王城に乗り込むメンバーは。
アシュレイ様。ディーデリック様。アルバート殿下。リリーナラリス様。イヴリン様。トレイシー先生…でよろしいですか?」
「おう!」「そうだ」「うん」「はい」「ああ」「あいよ」
返事揃わねぇ~。
「承りました。ではまず…ご自分の武器をお持ちになってください。対魔王陛下、を考慮した上でお選びくださいね。そしてまたここに集合です」
武器か…やっぱあの剣と盾かな。鎧はどうしよう?一応フル装備で…
と考えていたら、パメラ嬢が装備や衣装はこちらで用意する、と言う。
「戦闘に参加されない皆様は、どうされますか?」
「うーん…俺達は邪魔だよな。この国で待ってるよ」
「必ずアシュリィ様と、一緒に帰ってきてくださいね」
ランス…ミーナ。
「魔王陛下に勝利できるよう、祈っております」
「頑張ってくださいませ、皆様。帰ってきたらパーティーですね!」
ヨハネス…マルガレーテ嬢…
「皆様、エヴィをよろしくお願い致します。そしてアシュレイ様。アシュリィ様はきっと…貴方を待っていらっしゃいますよ」
「アシュレイ、ファイト!チュ~♡」
ティモ…!それにミニアシュ、いたのか!
みんなから激励され…気合いを入れ直した。ありがとう、オレ頑張るから!絶対に、アシュリィと一緒に帰ってくる!
それぞれ別れの挨拶をして、一旦解散!
約30分後…集合場所にはすでに、会長が立っていた。
「早いな?」
「俺は斧持ち歩いてっからな。ずっと待ってただけだ」
「ほーん」
会長は斧を取り出し、大きくしてみせて地面に立てる。ズン… と軽く揺れたわ。じゃ、並んで他の皆を待つかあ。
「…なあ大将」
「なんだ会長」
「お前さんよー…お嬢のどこを好きになったんだ?」
「へ…」
思わず横顔を見上げる。だが会長は前を見るばかりで、オレの事なんざ見ちゃいない。
「やっぱ顔か?」
「顔も可愛いとは思うけど…
正直、自分でもわからん」
「は?」
だって…切っ掛けも何もかもうろ覚えだし…ただ。
「…例えば今日世界が滅ぶとして。最期…誰と過ごすかって時に。真っ先に浮かぶのがアシュリィだった。
まあ彼女なら、どうにか滅びを迎えないよう走り回るんだろうけど。オレは、そんなあいつの背中を一生懸命追うんだろうな」
「…………」
「公爵令息になって…色んな人と出会った。でも。
やっぱりアシュリィ以上に、魅力的な女性はいねえんだよな…」
こんな話、とてもじゃねえが他の奴にはできねえけど。誰にも言うんじゃねえぞ!
「(ははあ…ベタ惚れじゃねえか。愛されてんねえ、お嬢)へーへー、俺は誰にも言いませんよー。俺は、な」
?なんだその言い方……は…
「「「「「……………」」」」」
いる。ディード達が…ニヤニヤしながら後ろに立ってる。
……もうイヤアァーーーッ!!!
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