私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 それからについて、少し語っておこうか。


 キャンシー・グラウムの蛮行は知れ渡り…国内外から批判が相次いだ。特に国民からは、皇帝を降りろ!というデモが起こる程だった。
 当時を知る者達が証言をする事で、信憑性が増したのだ。生き残った騎士や…レストランを無理やり奪われて、燃やされたという男性も声を上げた。

 全てを失ったキャンシーは廃人のようになり…大人しく玉座を明け渡した。
 悲しいかな貴族は、平民を殺しても大した罪には問われない。悪質ではあるけれど、腐っても皇族。身分剥奪も容易ではなく…代わりにグラウムの僻地にて、生涯軟禁生活を送る事となった。皇婿殿下も自主的について行ったよ。
 …本当に愛しているのなら、あの時に彼女を止めるべきだった。今更詮無い事だけどね。



 すっきりしなくとも、これが結末だ。物語のように「悪い王様は首を刎ねられました」とはならないんだよなあ。



 あと、これはティモから聞いたけど。キャンシーはついに最後まで…ティモとエヴィに、一言も謝罪の言葉を発しなかったらしい。公式的にはもちろん、非公式な場でも。


「それでいいんです。半端に謝罪されては…「許さなくちゃいけない」と自責の念に苛まれる可能性もありましたから。
 お陰で俺は、死ぬまであの女を憎み続けられるんです」


 と…ティモは苦しげに吐露した。いつか…彼の心が完全に救われる日が来ますように。



 空席となった玉座だけど。本来ならば第2皇子である、エヴィの弟が座るのだが。母親の行いもあり…貴族や平民からの支持は、殆ど無いと言ってもいい。
 本人もそれを分かっているようで、自分に皇帝となる資格は無い…と公言している。私にはそれが、無責任としか思えないけどね。

 皇子・皇女のエヴィとの関係は…特に変わらず。今更仲直りもなく…


「……お元気で、イヴリン殿」
「…皇子殿下、皇女殿下もお元気で」


 最後まで他人行儀のまま、お別れをした。もうエヴィは、グラウムに足を踏み入れる事は無いだろう…


 ま、誰が皇帝となろうとも、私には関係無い。帝国の公爵家とかから選べば?と思っていたんだが。
 なんとまあ…皇族の血を引くベイラーの王妃殿下。の…子供。アルとジェイドに、その役目が回ってきたのである。

「え、僕が皇帝とかできると思ってる?ぶっちゃけ公爵でもギリギリだよ?リリスの支えがなきゃ無理無理だし」
「「「……………」」」
「……そうなるよねぇ…。分かった、僕が引き受けるよ」

 という事で。いずれジェイドが寄宿学校を卒業したら、即位する事がほぼ内定した。実際もっと話し合いとか葛藤とかあったけど、それは割愛させていただく。
 ベイラーは我がディスジェイスの友好国という事もあり…魔族が味方になる!?と国民は歓迎ムードらしい。まあその、頑張れ!私も力になれる事があったら言って!

 それで、エヴィに保護して欲しいと頼まれたステファニー殿下。彼女に、現在ジェイドとの婚約話が上がっている。まだ確定ではないが…そうすれば、彼女は守られるはずだ。他の2人は知らん。
 ステファニー殿下は最後、涙を堪えながらエヴィに挨拶していた。私はその姿に…彼女はもしかして、エヴィの事を…と感じたけど。私が首を突っ込んでいい話じゃないね。



 それと、タンブルが。今回の騒動を起こした元凶…という扱いと。キャンシー・グラウムの犯行を明るみにする、切っ掛けを作ってくれた!という勢に分かれている…
 その結果…侯爵家の後継にはなれないが、貴族社会から追放まではされていない。まあタンブル家には私が圧を掛けておいたので、もう好き勝手な振る舞いはできないだろうよ。

 アンナ・ナイトリーは謹慎中。現在実家の男爵家に連れ戻され、今後は未定…かな?多分また出てくんじゃね?





 ふう…こんなところかな。
 それで、肝心の2人だけど。


「え。エヴィとティモ…学校辞めるの?」
「そりゃそうだ。元々俺達は…「皇子とその従者」として留学していたんだ」

 そか…。今私達は、学校のカフェを貸し切ってお茶会中。あれから2週間以上経ち…11月も後半、冬の寒さが本格化してきた。忙しくて学校はサボりがちだったけど、やっと戻って来たんだわ。
 彼らは今すぐじゃないけど、一足先に魔国に渡る事となった。2人がいなくなったら寂しいなー…いずれあっちで会うけどさ。


「………?なんか、忘れてるような…?」
「ああ…私も…?」

 ?アシュレイとディードが、揃って眉間に皺を寄せている。忘れてるといえば…私も。チラッと隣の席を見上げる。


「ねえお父様。結局なんの用でベイラーに来たの?」
「ん?」

 学生でもないってのに、この人ちゃっかり同席してやがるんだわ。しかも最近ずっと、パメラと親しげに…ハッッッ!!?まさか、再婚…!?

「おいパメ公、いやお義母様!アギラールの双子はどうする!!」
「違うわよっ!!!」

 わかってらい。で、実際なんの用よお父様?



「んー…んふふふふ」

 え…何その笑顔?みんなドン引きなんだけど。

「いやあ…実はね。城の改装が終わったんだ!」
「へ?ディスター城を…?」

 マジで改装してたんかい。で…それが何???
 私の脳内が疑問符で埋め尽くされる。するとお父様は魔法で、一瞬にして正装に着替えた。あの格好いい仮面も着けて。

「はい、アシュリィもお着替えしてね」
「は?」

 私の制服も、ふんわり可愛らしいドレスに早変わり。頭の上にはミニクラウン………どゆこと?誰もついて行けないんだが?


「ん?んんん?」
「♪」

 何事???お父様は次に、鼻歌交じりに私をロープでぐるぐる巻きにする。待って、説明して?

「陛下、何をなさっているんですか…?」
「んふふ~♪」

 んふふじゃねえよ?終わったと思ったらお父様は…私を抱っこして…?



「あー、こほん。
 ……はっはっはぁーーーっ!!姫はいただいた!!」
「は?」
「「「え?」」」
「勇者よ!!姫を返して欲しければ、我がディスジェ…いやディスター城…じゃないな。うーん…あっそうだ。魔王城まで来るんだな!!!」
「え?え?え???」

 何々、何が始まった!!?


「では、さらばっ!!」
「えーーーっ!?ちょ、アシュリィ!?陛下ーーーっ!!?」

 うっ!?ヘンテコな寸劇後、お父様は私を抱えて窓の外に飛び出したぁっ!?



「ちょっとー!?お父様、何してるの!?」
「えー?囚われのお姫様を、勇者が助けに来るんだよ!」

 ……………は?説明聞いても分からん。その時、ディードが慌てて追い掛けてきた。

「陛下ーっ!なんですかこれ!?」
「こら!君はあっちでしょ、戻りなさい!後はパメラちゃんの指示に従って!!」
「「へ…?」」


 あの…ちょっと。お願いだから、最初から説明してもらえませんかね?

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