私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
160 / 164
学園

73

しおりを挟む


「皆様お揃いですね。」

 うう…さっきの発言について、誰もなんも言ってくれない。スルーは余計に恥ずい…!
 場所は王宮…の門の横。移動しない?

「ええ、ですがその前に。皆様の職業ジョブを発表します!」

 ん?パメラ嬢は、大きな紙をどーん!と広げた。えーと…



 勇者   アシュレイ
 聖騎士  ディーデリック
 魔法戦士 イヴリン
 白魔導師 アルバート
 黒魔導師 リリーナラリス
 戦士   トレイシー



 ……何これ。


「私なりに当てはめました。物理の遠距離系がいませんが…アーチャーやスナイパーも欲しかったです。あと武闘家も…アシュリィは魔法抜きなら、武器使うより殴る方が得意らしいですね」

 うーん……もう考えるのやめよう!!全部任す!

「なんかちょっと、テンション上がるわね…」
「うん、僕も。なんか…冒険が始まるって感じ…!」

 魔導師コンビは、目をキラキラ輝かせて興奮してる?どこに惹かれる要素あるんだ。
 パメラ嬢に導かれ、ようやく移動開始。向かった先は…なんかの店?



[いらっしゃい ここは道具屋だよ 何かお探しかな?]
「は?アイル?」

 こいつも陛下と同じ事になってる。カウンターに立っているアイルは、無表情で淡々と喋ってる。
 そんでパメラ嬢が「アレ、お願いします」と言い、アイルが店の奥に引っ込んだ。で、すぐに出てきたんだけど。両手に大量の荷物が。しかも何度か往復して運びきっていた。

[はい ご注文の服だよ]

 注文してたんか。全員着替える事に、どれどれ…お?


「鎧だ…すげえ軽くて動きやすい」

 身体にピッタリフィット、試さなきゃ分からんが耐久もありそうだ。そしてデザインがかっけえ!オレとエヴィは全身鎧を、会長は胸元や胴などのみで手足は自由。
 ディードはなんか…魔王陛下の正装に近い衣装だな?

「これは…!」

 なんかめっちゃ目ぇ輝かせてる。頬は赤く染まり、呆然と自分の服を撫でている。何か特別なのか…?

「…パメラ。まさかこの服は、陛下からの賜り物か?」
「はい。全て魔王陛下が、個人に合わせてご用意してくださいました!」

 なんで敵(一応)に装備贈ってんだよ。ありがたく使わせてもらいますが。


「……この胸元の赤い刺繍…魔国において、特別な身分の者にしか許されない装飾だ。
 そう…魔王にしか…な」

 え。それはつまり…陛下はこれをディードに渡す事で…「次代」を暗に示している?
 恐らくディードもそう受け取ったのだろう、喜びに唇を噛み締めている…


「(……自他共に認める次期魔王…とは言うものの。実際陛下からは「まだ早い」としか宣言されていなかった。それを…このような形で…
 …ありがとうございます、陛下。私はこの戦いで…更に貴方に近付いてみせます!!)」



 拳を握るディードはそっとしておいて。アルとリリーは、どっちかっていうとデザイン重視っぽいな。色違いでお揃いのローブの下に、かなり凝った作りの服だ。

「なんでリリスはミニスカートなの。戦闘に向いてなくない?いや可愛いけどさ?」

 アルは仏頂面だ。気持ちは分かるがな。

「それはアシュリィの案ですね。戦闘時でも女の子は、可愛い服じゃないと!とかなんとか。
 ですがご安心を、リリーナラリス様には特別に、かなーり高性能な魔法が掛けられているそうです!魔王陛下の全力の攻撃も防げますよ!」

 何それすっげえ!なんでもライナス様が直々に重ね掛けしてくれたとか。オレら男連中には無いみたいだけど。よかった…これでリリーは心配いらなそうだ。
 ついでにスカートも、どれだけ激しく動いても中は絶対見えないんだとか。もうすげえしか言えない。


 アイルはそれだけでなく…回復系の薬が入ったカバンもくれた。ありがとう…!礼を言って、ぞろぞろと店の外に出た。



「よし行くぞ!必ず陛下のご期待に添えてみせる!!」
「あ、おい!!」

 ディードが張り切って飛んでった…えぇ~…。オレら置いてけぼりかよ。

「あら…移動手段もきちんと用意してあるのですが…
 仕方ありませんね。ディーデリック様は自力で魔国まで行けるでしょうし、こっちも行きましょうか。」

 パメラ嬢、意外とドライだな。





 馬車なんかを使って案内されたのは…王都の外?門を潜ってから、1時間ぐらい歩いて開けた場所に出た。

「皆様、どうぞ上をご覧くださいませ~」

 …いつの間にかパメラ嬢は、『勇者御一行様』と書かれた旗を右手に持っている。で、左手で上空を示す…なんだありゃ?

「何かあるね。方舟?」
「いえ…それよりもっと、大きいような…?」

 ぽつんと何か浮かんでいる。遠すぎて、正確な大きさも不明だが。

「あれは飛行艇です。(とはいえ…見た目は完全に空飛ぶ豪華客船なのよね。こっちの技術力は現代日本に及ばないけど、魔力という動力源はすごいわ…。プロペラだのエンジンだの無しに、ふわっと浮かんじゃうもの!)
 これよりあれに乗っていただきます…が」
「「「?」」」

 説明の途中で、パメラ嬢が下がった。
 ん…オレ達の正面、50m程先に誰か立ってる。随分と小柄な…あれはっ!?


「待ってたよ」
「ド、ドロシーさんっ!?」

 四天王の1人…!見た目はオレ達と大差ない、いや幼くすら見える彼女だが。魔王陛下の側近だ…つまり敵として立ちはだかっている!?全員戦闘態勢!!と叫ぶと、みんな即座に武器を構えた。

「(……お。きちんと警戒してる…よしよし。あの泣いていた小さな子が、随分と精悍になったね…。人間の成長って早いなあ)
 貴方達は、あの飛行艇が無ければ魔国には辿り着けない。そして…鍵は私が持っている。つまり…分かるよね?」
「……!」


 ドロシーさんは、拳を握って腰を落とし、鋭い視線をオレに突き刺す…やってやる…!!
 えーと確か、ディードの情報によると…!


『ドロシーは気配を消し、奇襲を得意とする。その分耐久は低いが、向こうのペースに嵌ってしまったら、じわじわと削られてしまう』


 んーと、そういう相手には…遠距離攻撃だっけ!?近付かれたら一気に不利になる!更に腰にはナイフといった小型の武器を多数ぶら下げている。投擲も警戒する必要がありそうだ。ここは誰かが引きつけるべきか!?

「エヴィ!彼女は奇襲を得意とするスピードタイプだ!!」
「分かった!なら…魔法師、じゃなくて魔導師コンビがメインで攻撃しろ!レイは2人の護衛だ!!
 師匠、斧を捨てて拳で闘えるか!?」
「おう任せろ!」

 確か会長は、素早さは2000近くあったはず。称号が加わったオレよりも上だ。なら…ドロシーさんの速さにもついて行けるかもしんねえ!魔法で縮められた斧を放り投げ、バシッ!と拳を叩いてみせた。
 エヴィの指示に従い、オレは魔導師コンビの前で盾を構える。エヴィは自分で簡易の結界を張るから、護衛は要らない…との事。


「ふふ…行くよっ!!」
「っ!?」

 不敵に笑ったドロシーさんの姿が、一瞬にして消えたっ!?どこ…そこだっ!!


 ガキィンッ!

 っ!危ねえ、回復役のアルを真っ先に狙ったな。間一髪で防げたが、幸運は何度も続かねえ!

「おっと、防がれたか」
「冗談!今のは全然本気じゃなかったでしょう!」
「まあね…っ!」
「っらあ!!」

 ドロシーさんの動きが止まった隙に、会長が重い拳を叩き込む…が躱された!また消えた!

「チッ…!」
「アル!相手の位置を補足し、共有できるか!?」
「やってみるよ、エヴィ!その間にリリス、様子見を兼ねてスキルで攻撃してみて!」
「分かったわ!スキル:捕捉追跡発動!ターゲット『ドロシー』!食らいなさい…『ペイントボール』!!」


 ヒュヒュンッ とカラフルなボールが複数発射される、が。それらはある程度飛んだところで、明後日の方向にぶつかって弾けてしまった。

「相手が速すぎて、追跡が間に合わないわ!」
「了解。じゃあ、少し時間を稼いで!」

 よし…!ここはアルを信じる!!
 今ドロシーさんは、エヴィが足止めをしている。長いハルバードを使い、なんとか距離を詰められないよう抵抗しているようだ。そこに会長が助太刀する!
 リリーも離れた場所から、ドロシーさんにちまちま攻撃して援護している。オレは絶対に持ち場を離れねえ!


「こんの…!こういう相手にこそ、双剣使いのディードが適役だろうがー!!どこ行ったあの野郎ぉーーーっ!!!」

 エヴィの叫びには、全面的に同意する!





 ******



 その頃のディーデリック

「しまった、全員置いてきてしまった。まあ…目的地は分かっているんだ、現地集合でいいだろう」





 職業はどう決めたのか?

「アシュレイ様が勇者なのは確定で。
 ディーデリック様は、神のご加護を授かってるそうなので聖騎士です。魔族だけど、まあいいでしょう!
 イヴリン様は魔法とハルバードを両立できるから魔法戦士。
 攻撃特化の魔法師、リリーナラリス様は黒魔導師。
 サポート系を使いこなすアルバート殿下が白魔導師。
 トレイシー先生は重戦士にしたかったんですが…装備は軽めだし、耐久は低いらしいので戦士です」
「さっぱり分からん」
「「分かる…!」」
「え、マジ?」

しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...