私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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「(私の役目は…アシュレイくんの本気を見定める事。殺してはいけないが、決して手を抜いてはいけない!!)」
「俺は師匠を気にする余裕はない!俺の攻撃を躱しつつドロシー殿の相手しろ!!」
「簡単に言ってくれるなあっ!!」
「ふふっ」

 2人相手にしているドロシーさんは、まだ余裕があるように感じられる。ちょいちょいこっちに魔法とか飛んでくるから!アル、頼むぞ…!


「よっし、できた!!」

 !アルがドロシーさん(がいるであろう方向)に向かって手の平を突き出した。


「『存在看破』!」
「っ!」

 今まで微かにしか見えなかったドロシーさんの姿が、くっきりと出現した!?

「姿が見えなかったのは、スピードだけじゃなく隠密系の魔法によるものだからね。
 ついでに、動きも鈍らせる!」
「な…っ!」

 おお、目に見えて動きが鈍ってる!アルの魔法のお陰か、あれなら捉えられそうだ!

「(うわ、流石魔族…魔法の抵抗力が半端ない!普通の人間だったら、とっくに地に沈んで指一本動かせない圧なのに!あんなに素早く…しかも魔法を掛け続けないと、端から解除されていく…!!)リリス、今のうちに…!」
「ん~…まだまだ、もう一手かなっ!」
「「うおおおぉっ!?」」

 ドロシーさんはエヴィと師匠から距離を取り…両手に魔力の塊を生み出し発射、2人を吹っ飛ばした!?すぐに戻って来るだろうけど、その間にこっちが狙われる…!
 オレは盾を正面に構え、襲撃に備えようとしたが…


「任せなさい。幼い頃の特訓の成果…今こそ見せる時!!」

 え…リリーが、オレの肩に手を置いて。下がれと……は?


「やはり私の強みは砲撃…そう。ホーミングお嬢様の真髄、見せてくれるわ!!!」


 リリーは…いつの間にか、水で創った透明な固定砲台を構えている。ま…まさか。


「行くわよ!!!もっかいスキル:捕捉追跡発動!ターゲット『ドロシー』、全力の~…『アクアキャノン』!!!」


 ドォンッ!! ドドドドドッ!! ドッカァン!!


 ぎゃあああっ!!間一髪伏せて避けると、オレの頭上を無数の水弾が通り過ぎた!!


「きゃーーーっ!?」


 うわ。ドロシーさんは障壁を張ったり避けたりしてるけど、弾が絶え間なく襲ってきて…恐ろしい。

 ズドドドドドド… かなりの威力だが、長い。動き回るドロシーさんに合わせて、照準はあっちこっち。
 よく魔力が尽きないな…って、アルも砲台に手を突いて魔力を送っている?では、微力ながらオレも…ひんやりしてるぅ。
 ついでにエヴィと師匠も戻ってきて、砲台に手を置いた。すると益々水弾の威力が上がり…






「ふう…こんなとこかしら」

 砲台を水に戻し、額の汗を拭うリリー。
 ふう、じゃねえよ。周囲もオレらも水浸し、いくつもクレーターが出来ちゃってるじゃねえか。ドロシーさんは水溜まりの中に倒れてる…


「ふ…やるね。だが所詮、私は四天王の中でも最弱…がくり」

 え、そうなの?彼らにはそういった序列とか、一切無いってアシュリィに聞いてるけど…?



「「「…………」」」



 静寂が。
 あの…ドロシーさん。起きないの?鍵くれるんじゃないの?

「こら、何してるの。勝者は敗者からアイテムを奪うんでしょうが」

 どゆこと?ドロシーさんは仰向けで倒れたまま、動く気は無さそうだ。

「…あっ!」ピーンときた

 あ?リリーがドロシーさんに近寄り…懐を漁る。「ここ?」「違う、内ポケット」「こっちかしら…」「あははっ!行き過ぎ!」「よっし!」
 と…キャッキャ言いながら鍵をゲット。女性のリリーがいてくれてよかった。




「貴方達は見事私に勝利した。さ、もう行きなさい。それと…
 私は別に、四天王最弱じゃないから!くじ引きで負けて、この役割になっただけだから!」

 おもむろに立ち上がったドロシーさんは、そこんとこヨロシク!と言い残して去って行った…なんだったんだ、一体…?
 いきなりの戦闘が終わり…オレ達はほっと息を吐いた。あー…めっちゃしんどかった…。手加減はされてないみたいだけど、本気でもなかったな…

「彼女は四天王最弱(設定)…つまり。
 この先は、もっと強敵が待ち受けているよ、レイ…!皆も、更に気を引き締めて行くよ!」

 そ…そういうもんなのか…?



「はいアシュレイ、これが飛行艇とやらの鍵みたいよ」

 渡されたのは…鍵とは言うが、どう見ても薄い金属製のカード。どうすりゃいいの、とクルクル回して観察してみた。
 するとパメラ嬢が、カードにオレの魔力を流せばいい…と言うのでやってみよう。


〈魔力を確認致しました 登録者:アシュレイ・アレンシア〉


 わ、頭ん中に声が響いた!なんか、感覚で使い方が分かる。
 飛行艇、降りてこい~…と念じると、ゆっくり降りてきた…


 ズ… ズゥン…


「「「デッッッケェ!!?」」」

 オレ、エヴィ、会長で叫んじまった。飛行艇…ちょっとした屋敷くらいのデカさがある!アレンシア邸といい勝負だぞ!?
 入り口まで案内され、指定された場所にカードをかざす。すると自動で扉が開き、中に入ると…



「「「いらっしゃいませ~!!」」」
「えっ!?ララ、パリス…リア!?」

 3人娘が、満面の笑みで出迎えた。後ろにはアイル、ラリー、フィオナ、セルジュも立っている。

「勇者ご一行様ごあんな~い!!」
「「ご案内しま~す!!」」

 ???オレ達はそれぞれ部屋に案内され…着替えてロビーに集合、ですって。

「なあアイル、道具屋は?」
「潰れました」

 あらま…


 オレはアイルに、操縦室だという場所に連れて来られた。わ…すごい、前面がガラス張りで外の景色がよく見える。
 教わった通りに…カードを指定の場所に置いて…と。

「目的地:ディスジェイス。ディスター城の周辺、着陸可能な広場に」

〈承諾 飛行艇起動します〉

 無機質な声が部屋中に響いたと思ったら…飛行艇が軽く揺れて浮かび、段々と地面が遠くなる。
 ……アシュリィ。あと少し…待っていてくれ。

 暫く景色を眺めた後、微笑むアイルと一緒にロビーへ向かった。




「魔国まで皆様のお世話係を務めます、ララでーす!」
「パリスでーす!」
「リアでーす!」

 うん、知ってる。3人は通常より装飾の多いメイド服を着用している。
 …って、リアは平気なのか!?その、えっと…妊娠してるって、聞いてるけど!安静にしてた方がいいんじゃないか?

「(む…流石お姉さまのお相手、私にまで優しくしてくださるとは…)ありがとうございます。ですが好きでやっている事なので、辛くなったら休ませていただきますね」
「無理すんな…?オレ本当、そういうの分かんないから…」

 こういう時、男って役立たずですから…。医者は乗ってるのか?あ、いる?よかった。
 勇者一行?はテーブルを囲って座る。セルジュとアイルがお茶を淹れてくれたので、ひとまず休憩だ。



「大体1週間程で魔国に到着するそうです。その間皆様は休まれたり、艇内に広い運動場もありますので、鍛錬などなさってください」

 ほほう。それは助かる、特にエヴィとはもっと連携の練習をしたかったからな。

「パメラ嬢。つまりベイラーに戻って来るまで、2週間の予定という事だな?」
「はい。あちらに長く滞在しなければ、ですが」
「そうか…ギリギリだな…」

 何が?スコーンをつまみながら訊ねれば、エヴィは呆れたように息を吐いた?

「はぁ…いや、お前は魔王陛下対策に集中してろ」

 えー?2週間後…なんかあったっけ?





 そんなこんなで1週間、みっちり鍛錬した。この飛行艇は自動修復機能があるとかで、壁とか壊してもいつの間にか直ってた!魔国の技術ってすげーな。
 休憩の合間に色々探索してみた。厨房も立派だし…部屋も多い。甲板に出ると、四角くてデカい窪みがある?へー…プールって言うんだ。水を張って泳ぐための施設…ほうほう。他のメンバーも歩き回っているぞ。

飛行艇コレは魔王陛下の私物かな?お借りしちゃって…」
「え?もうアシュレイ様の物ですよ?」
「……………は?」

 この日同行していたパメラ嬢は、きょとんとして答えた。なんで…オレの?

「カードキーの登録をしたじゃないですか。あれで正式に、魔王陛下からアシュレイ様へ権利が譲渡されました」
「なんでだよ!!!」

 恐れ多いよ貰いすぎだよ!!!空飛ぶ屋敷って…めっちゃ嬉しいけどさ!!?はわわ、オレ管理できるかなあ!?

「(私も最初は驚いたけど…「未来の息子だもん、このぐらい当然だよ~!」って、いい笑顔で言われちゃぁね…)」


 はぁ……全部終わってから考えよ!!

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