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学園4年生編
30
しおりを挟む放課後が来なければいいのに。と無駄に考えながら、現在男子は体術の授業中。
ペアで組み手をしているが、僕の相手はバジルだ。
「はあー…」
「浮かないお顔ですね」
「まあね、っと!」
「おっと」
むきー!!バジルは涼しい顔で僕の突きを流した。彼はコルテニウスの指輪を外しているが、それでも充分強い。
「えいやっ!!」
「ふふっ、軽い軽い」
むぎぎ…!!さっきから僕は攻めまくっているのに、彼は全ていなしている。
というか、当たっても大したダメージにならず…僕もっと体重増やさないとかなー!
「もう、ヒラヒラと…!!本気出して!」
「嫌です」
これだよ!!!彼は僕相手には決して攻撃して来ない。僕が女で主人だからだろうけど…その余裕さ腹立つ!!
僕の売りは素速さだけど、彼は僕より速い。そして筋力も体力も僕を大きく上回る。
いつも彼は一度も攻撃する事なく、互いに怪我なく勝利するのだ!!剣なら負けないのにい!!
「っと、今のはいい動きですね」
「今の躱すの君!?」
フェイントを入れても足を引っ掛けようとしても、掴んで投げようとしても全部躱される。
今だってナイスタイミングで回し蹴りを喰らわせようとしたのに、バジルは下に逃げた!
「おわっ!?」
「チェックメイトです、お嬢様」
逆に足払いをされ、僕の体が宙に舞う。バジルは素速い動きで僕の背中に手を回し、優しく地面に下ろされたと思いきや…首にトンと手刀を当てられる。笑顔で勝利宣言をされ…チクショウ!!!
あー悔しい。今度剣でボコボコにしてやる!
彼に手を引かれ立ち上がる。その時…少し離れた所から少那とルシアン、エリゼがこっちを見ているのに気付いた。
パスカルとジスランも現在試合中、パスカルは防戦一方だけどね。流石、ジスランの動きは他とは段違いだ。武術の授業って、結構生徒間で実力差が激しいんだよね。
そんなジスランも素手ではバジルには敵わない。凄いでしょう、うちの執事!!
「凄いね…バジル。彼は特殊な戦闘訓練でも受けているの?」
「…さあ…?そもそも、バジルの師匠って誰なんだろう?」
「………言われてみれば。確か幼少期から鍛えているって…まさか独学じゃあるまい…」
そんな会話が聞こえて来る。サボるなよ君ら…。
ちなみに…現在の近接格闘の師匠はバティストだ。僕も相手してもらうけど…彼はバジルと同じくらい強い。
で、バジルに格闘の基礎を叩き込み鍛え上げたのは…僕も知らん。小さい頃聞いてみた事はあるが…「おばけです」と言われた。なんじゃそら。
「ねーバジル、本当に体術誰に教わったのさー?」
「え?…亡霊ですよ」
彼はにっこり笑ってそう言った。
…マジ?え、あの屋敷…なんか居る?僕は背筋が凍った。
怖…さ、さて!次は誰に相手してもらおうかな。そう思いキョロキョロしていると、少那が声を掛けて来た。
「あの…よかったら私の相手をしてもらえないかな?」
もちろん構わないけど…
「少那…顔赤いよ?熱があるんなら…」
「無い無い、全然無いっ!」
ならいいけど…周囲に誰もいない事を確認して、距離を取って向かい合う。
礼をして…構えて…うーん、どうすっか。他の皆と違って、少那の実力は分からない。
いつもなら先手必勝!な僕だけど。まず相手の動きを見るか…と思い誘ってるんだが。
「………………」
かかって来いや、おい。彼は構えたまま動かない。
えー、もしかして少那、カウンタータイプ?このままお見合いしてても仕方ないし…行くぞ!!
「わっ!?」
あれ、止められた…。ひとまず正面から攻めてみたが、普通に腕でガードされた。でも軽く後ろに飛ばされてるし、少那は反応は悪くないけど防御力は無いね!
ならば攻めるのみ!!さっきの疲れも残ってるし、僕の体力が尽きる前に倒す!
「…っ!わわ、わっ!」
「むーん、しぶとい!!」
少那は僕の攻撃を全て受け止める。守ってばっかりじゃ勝てないぞ!
「……!(タイミングを見て私も攻めないと!でも…ええい!!)」
!!ついに少那が僕に向かって手を伸ばす。でも僕より遅い、余裕で躱せる!
そう考え、最小限の動きで横に逸れた、つもりだったのだけれど。
ふにっ
「「……………………」」
……余裕で避け切れた筈だった。だが僕は…いつもなら有り得ない、足がもつれてバランスを崩すというミスをしてしまった。
結果思うように動けず…転倒する事は無かったが…
少那の手が…僕の胸に、触れた。強く殴られてもいない、押されてもいない。何故か優しく…僕の胸を包んでいる。
「……………」
あ。少那が…真っ赤になって停止した。チャンス!
「そおい!」
「あぐっ」
少那の頭に肘を落とす。彼はゆっくりと倒れ…勝った。
「………なんだったんだ、今の…?」
「……知らね」
ルシアンとエリゼの会話がまた聞こえて来た。
今のは…まさか。僕がサラシをしていなければ、「きゃー!!少那のエッチ!」くらい言って引っ叩いてやっても良かったかもしれない。
今の現象に一抹の不安を覚えつつ…授業は終了した。
※※※
という訳で放課後です。
教室にはまだ生徒が結構残っているので、僕ら以外いなくなるまで待つ。今日は生徒会もお休みなので、時間はたっぷりある。
パスカルは朝から怖い顔をしていたが何も言って来なかった。少那の言葉を待っているんだろう…彼が変な事を言わないように祈るばかりだ。
授業が終わり30分程経って、ようやく誰もいなくなった。今教室には僕とパスカル、少那のみがいる。他の皆は先に帰った。
僕と少那は自分の席に座り、パスカルは僕の隣、木華の席に座った。
少那は深呼吸して…真っ直ぐに僕達を見据える。
「……まず、最初から聞いて欲しい。昔話になるけれど…私が見た悪夢の事から……」
少那はそう前置きをしてから語り始めた。
幼い頃…箏で起きた事件。後継者争いで…無辜の血が流れた。
そうか…あの時倒れていたのが、正妃殿下と王太子殿下、そして走り去って行ったのが、後日遺体となって発見されたという女中。
少那は彼らの死体を足蹴にしながら、血溜まりの中優雅に微笑む母親達を見て。言語に絶する光景に…心に深い傷を負った。
それが切っ掛けで女性恐怖症になり、今に至る。と…彼は簡潔に、淡々と語ってくれた。
「「………………」」
思っていたより辛い理由に…僕もパスカルも言葉が出ない。
僕は体が震えて…無意識に涙が出てきてしまう。少那は今だってなんともない表情をしているけど…本心は。
あの時…僕に縋り付き吐いた言葉。「置いていかないで、1人にしないで」と。きっとまだ…苦しみの中にいるんだろう。
少那は僕の頭を優しく撫でた後、涙を拭いてくれた。
「泣かないで…優しい貴方。でも、ありがとう。
私は貴方に救われた。貴方にはその自覚は無いだろうけども。私の心に踏み込んで来てくれて、恐怖を吹っ飛ばしてくれた。
こうして今も、私の為に涙を流してくれて…ありがとう。私を受け止めてくれてありがとう」
「す、すくなぁ…!」
彼の穏やかな微笑みに、また涙が溢れてしまう。
本当に僕が力になれたというのなら、それはたまらなく嬉しい。少那は僕の涙が止まるまで、ずっと手を握ってくれていたのだった。
パスカルはその様子を複雑そうに見ていたが…何も言わず、待っていてくれた…。
暫くして、ようやく僕は落ち着いた。あー…泣き虫は大分良くなったと思っていたけど、まだまだみたいね~。
「それで、その…。私は、貴方達に謝罪しなきゃいけなくて…」
ん?少那は頬を染め、手をもじもじさせた。教室の雰囲気変わったな…おい、何を言う気だ…!?
「……悪夢の中で…ね。私は、セレスが恐怖を消してくれて、幼い私を抱き締めてくれて。その温もりにとても安心して。もっと一緒にいたい、離れたくない。
セレスが…愛おしくてたまらなくて。そう感じてしまって。えっと…無意識に、唇を重ねてしまいました…。
い、今は正気に戻ってるけど…!あの時は感情が剥き出しで抑えられなくて、本当にごめんなさい!!」
「んな…っ!あ、あの……僕、は…」
「………!!」
ついに言いやがった!!言葉と共に、勢いよく頭を下げる少那。
僕はというと…あれは現実じゃなかったし、意識はしてしまうけど…少那を責める気にはなれない。
ただ…パスカル。彼は…顔を歪めて口を結んでいる。
ひいぃ…!!違う、浮気じゃない!!しかしなんて言えばいいのか分からず、僕は1人狼狽える。
「…あ!パスカル殿、セレスはちゃんと抵抗していたから!ダメだって、僕達はそういう関係じゃない。僕は君を嫌いになりたくないって言ってたから!
そんな気持ちを無視してセレスを求めたのは私だ。だから…怒りをぶつけるなら私だけにして欲しい。殴ってくれても構わない、それを私は受け止めるべきだ」
「少那…」
少那のその言葉に…パスカルは俯いた。
え…まさか泣いている訳ではあるまい。どうしたのか不安になり、僕は席を立ちパスカルに近付いた。瞬間。
「うひゃあ!?」
「………………」
腕を引っ張られ、膝の上に横向きに乗せられた!?ちょ、おい!!少那も目を丸くしていらっしゃるよ!?
パスカルは僕の背中とお腹に手を回し、自分に引き寄せた後…はああぁ~……と大きく息を吐いた。
そうして顔を上げた彼は、いつもの顔に戻っていた。ちょっと呆れたような、でも不機嫌ではない様子。
「はあぁ…その状態の殿下を責める気にはなれません。今は反省していらっしゃるようですし…仕方のない事だったんでしょう。
ですが、次はありません!こうやってセレスタンに触れて、愛を交わす権利は…俺だけのモノなので」
何言っちゃってんだこの野郎!!?しかも僕の首に巻かれたスカーフを取り、少那に見せつける!!
ただその痕を見た少那の反応が…
「え…どうしたのその首!?赤いよ、虫刺され?まさか皮膚病じゃないよね…!?
だから今日は朝からスカーフ巻いてたんだね、薬は塗った?痛くない…?」
「「…………………」」
少那は……本気だ。これがなんなのか…分かっていない。
僕達は複雑な心境に陥った。ピュアッピュアな反応に、パスカルもたじろいでいる。
「……あの…自然と消えるから大丈夫です…。なんか…すみません…」
「そうなの?よかったあ…」
少那は心底安心したように顔を綻ばせた。死にたい。
でもこれで、話は全て終わりかな?
「あと…魔物に捕まっていた時、セレスと密着してしまって。私すっごいドキドキしたよ…あの時もごめんね」
「それはお互い様だから!!………ひい!!?」
「…………シャーリィ……そういえば、服が溶けて…とか、言ってなかったかい……?」
パスカルは僕を支える腕に力を込めた。黒い笑顔で僕を見下ろし…いや、あれは不可抗力じゃない!?
確かに服は溶けていたが全裸じゃなかったし、視界も悪かったから何も見ていない!!と必死に説明した。うっすら見えていたけど。
「そう…(落ち着け…俺。大丈夫だ、彼女の意思じゃ無かったし…うん。ふー…)」
精神統一するパスカル。そんな彼に…少那が手榴弾をぶち込んだ。
「それでね…それ以来私は、いつもセレスの事を想ってしまうようになった。ある人が言うには…これは恋心なんだって。
ごめんなさい…私は貴方に、恋をしてしまいました」
「な……!!」
「……………へ?少那が、僕を…好き、って事…?」
パスカルの体が硬直したのが分かる。対して僕は…思わず聞き返してしまった。
そんな僕の言葉に、少那は右手で口元を覆った。
「……うん。ごめん、2人が両想いなのは分かっているから。
その上で…私は貴方を好きになってしまった。でも、想う事だけは許して欲しい…。自分でも、止められないんだ…!」
「う……えっと…あぅ…」
僕は今まで一度も、少那を恋愛対象として見た事は無い。年上だけどちょっと子供っぽくて…失礼だけど弟みたいだな~とすら思っていた。
そんな彼は今、頬を染めて真剣な顔をして、僕を見つめている。
その熱を帯びた視線を感じて…初めて、少那を男性として意識してしまった…!!
「……スクナ殿下。セレスタンを想うのは構いませんが…誘惑はしないでいただきたい。彼は俺がすでに将来を約束しています」
ん!?パスカルは僕の顔を手で覆い、目隠しをする。ちょっと、どういう状況!?
「(シャーリィ…!どうしてそんなに嬉しそうな顔をするんだ…?嫌だ…これ以上、スクナ殿下の言葉を聞きたくない、聞かせたくない!!)
お話は以上ですか?では俺達は失礼します」
「あ…うん、また明日ね」
「わっ、じゃ、じゃあね…少那!」
パスカルは器用にも僕の目を塞いだまま、片腕だけで僕を持ち上げた。
少那がどんな顔をしていたのか…僕には見えなかったけど。スタスタとパスカルが歩き出してしまうので、大人しく運ばれる事にする。告白の返事…明日でいいかな…?
ガッ、ガスッ、ガララ!と…パスカルが足で教室のドアを開ける音が聞こえた。
廊下に出た時視界は開放されたけど…僕は彼に正面から抱き着くような形で抱えられており、パスカルの表情は見えない。
廊下にはセレネとヨミが待機していて、出て来た僕達の様子を見て首を傾げた。パスカルはそんな2人も無視して歩く。
「シャーリィ」
「ん?」
「………スクナ殿下を、選ばないよな?俺もっと頑張るから…君の隣に胸を張って立っていられるよう、努力する。
君を誰より愛しているのは俺だ。ロッティにも義父上にも義兄上にも負けない。もちろんスクナ殿下にも…それだけは、忘れないで」
「パスカル…」
廊下を進みながら、彼は不安を滲ませた声でそう言った。
…馬鹿だなあ。パスカルの首に両腕を回し、僕の想いを告げる。
「僕が好きなのは、パスカルだけだよ。誰でもない…君だけ」
「!!」
少那の気持ちは嬉しかったけども。それでも…僕は同じ感情を彼に返せない。
明日、ちゃんとお断りしよう。これからもお友達でいたいって。
それにしても…少那。僕が女だって気付いた訳じゃないよね…?やはり彼はソッチの人だったのか…。
正面玄関までやって来て、パスカルは僕を降ろした。
僕を向かい合わせに立たせて、両肩に手を置き…物欲しそうな目で見下ろす。
…!!僕は…彼の制服の裾を掴み。背伸びをして…ゆっくりと2人の顔が近付いたその時。
「…ぼっちゃーん!かーえりーましょー!!」
「「うっぎゃあああっっっ!!!?」」
すぐ近くからデカい声が聞こえて来て、僕達は飛び上がってビビった!!
誰…ってジェイル!なんでここに!?
「なんでって…ここで待つよう言ったの自分でしょうが…。オレに気付かず目の前でラブシーン繰り広げよって…はーあ、独身者には目の毒ですわー」
「うぐ…!!」
恥ずかしい…!んもう、図体デカいくせに存在感無いのどうにかして!!!
もう帰ろう!!とジェイルの背中をぐいぐい押して歩き出す。
振り向きパスカルに笑顔で手を振れば、彼も同じく返してくれた。よかった…元気になったみたい。
それとさっき。将来を約束しているって…その言葉、嬉しかったよ。明確に約束した覚えは無いけどね!
「(…もっと、自分を鍛えよう。ジスランに剣術を、バジルに格闘を教わろう。
エリゼに魔術を、ロッティに勉強を見てもらおう。
ルシアン殿下とルネ嬢を、社交とかマナーの参考にさせてもらって…自分を磨こう。
絶対に…シャーリィは渡さない。誰にも!)」
僕と別れた後、パスカルは木剣を片手に…ジスランの元に向かうのであった。
その頃僕はと言うと。
「はあーぁ。旦那様に言っちゃおうかなー。シャルティエラお嬢様ったら、人目も憚らずマクロンと…」
「やっかましい!!!君もとっとと彼女作んなさいよ!!!」
「出会いが無いんですーう!オレも夜会とか参加しまくろうかな…」
「おう行け行け!!」
そんな風にジェイルと騒ぎながら、タウンハウスへと帰るのであった。
それにしても、今日の少那の話。亡くなったという王太子…ミコト様って言ってたな。ミコトって、箏じゃよくある名前なのかな…?
気になったので、夕食も終わり自室でまったりしている時に…グラスに聞いてみた。
「グラス。少那が言ってたんだけど、箏の王太子殿下って10年以上前に亡くなってるんだって。
それでね、グラスと同じ…命っていう名前なんだって」
「へえ…偶然ですね。おれは昔の事は覚えていませんが…」
「……名前は覚えてたんだよね?他に…何か記憶残って無いの?」
僕の問い掛けに、グラスは顎に手を当て目を閉じ、難しい顔をした。
「……始まりは、遠い国。綺麗な服を着て…沢山の人から愛されていた気がする。
それが…突然失った、気がする。うーん…なんだか、記憶に靄がかかっているんですよ…。
お嬢様に出会うまではずっと、帰りたいと思っていた。いや…帰らなきゃいけないって…。
なんか…甘い香りがして…おれ………えっ、と…」
「あ…!ごめん、無理しないで!?」
よほど辛い記憶なのか、彼は顔が真っ青だ。大量の汗をかき、よろめいてしまった。
咄嗟に受け止めてソファーに座らせる。ハンカチで汗を拭い…背中をさする。
「ごめんね、変な事聞いて。今日はもう休んで」
「……はい…すみません…」
ヨミにお願いして、グラスを部屋まで運んでもらった。ベッドに寝かせて僕達は出て行こうとしたら…微睡むグラスが、何か呟いていた。
「そう、だ…。おれ、逃げなきゃって、思って…。
船…商人の船に、乗り込んで。とにかく、遠くに行かなきゃって…。
んで…色々と…荷物に紛れて…この国まで来て。そし、て……」
「………命…?」
「……………」
穏やかな寝息が聞こえてくる…寝たか。
逃げるって…何から?いや、誰から…?なんか予想以上に、命も大変な生活をしていたみたいね…。
静かに扉を閉めると…ヨミが小声で話し掛けて来た。
「グラスなんだけど。触れた時ちょっと調べてみたら…魔術で記憶を封じられているみたいだよ」
「…へ?そうなの…!?」
詳しい話を聞く為に急いで部屋に戻り、鍵を掛けてから続きを促す。
「うーん…人間にしては高度で厳重な魔術だ。鍵が無ければ決して封印は解けないようになっている」
「鍵…どこにあるか分かる?」
「ううん…そもそも鍵と言っても、扉とかの通常の鍵じゃないと思う。どんな形かも分からないけど。
他の方法で無理矢理こじ開けようとしたら…グラスの精神か記憶が壊れるよ」
そんな…。
どうにかして鍵を見つけないと!と言ってもヒントが無さすぎる!!どうしたもんか…と頭を抱えていたら。
ふと…思い出さないほうがいいのかな?と考えてしまった。
封じられるという事は…忘れたほうがいい記憶なのかもしれない。
今の命…グラスが幸せならば。そっとしておくべきなのかな…?分からない…。
「…いや。僕が決めていい問題じゃないよね…。
明日、グラスに全部話そう。その上で彼も記憶を取り戻したいと願うのなら…全力で手伝おう!」
そう決意した僕は、布団に潜り目を閉じる。
しかし忙しい1日だった…。少那の告白には驚いたけど、逃げるように帰っちゃったし。明日…ちゃんと話そう。
そんで…グラスにも話をして…ああ、明日も大変そうだなあ、と思いながら。
僕は夢の世界に旅立つのでした…ぐう。
応援ありがとうございます!
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