親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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理想の一条優

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「あの、明翔。購買でおにぎり買ったんだけど、食わねえ?」

おずおずとおにぎりを差し出すと、無表情ながら明翔が受け取ってくれた。

良かった、やっぱ明翔には食いもんだな。

「ゆりー! 深月からのプレゼント! おにぎり食う?」
「深月から?! 食べる!」

どうぞ、ありがとう、と明翔と仲直りしたくて選んだ明太マヨがゆりの手に渡ってしまう。

……めちゃくちゃ怒ってる……。
食いもんでもビクともせんほどに……。

……あー……なんで俺、髪の色くらいで明翔を一条と間違えてしまったんだろう。
明翔の顔を見る前には明翔だってちゃんと分かってたのに……。

俺、本当に神に誓って今は一条に特別な気持ちは一切ない。

たしかに、小学生の時は大好きだった。
ただ見てただけで、勇気が出なくて一度も話しかけたことはない。
近付く度胸すらなくて、遠巻きに眺めるだけで満足してた。

友達に囲まれて笑ってる一条を見ながら、きっと、明るくて優しい良い子なんだろうなって、いつも思ってた。

……大ハズレだったけどな。

俺が一条に一目惚れした小1にはすでに一条は立派な腐女子だったし、自分自身が男になって男とBLしたいがために男として転校するようなヤツだとは微塵も思ってなかった。

俺に勇気があって一条に話しかけてたら、あんな長いことズルズル初恋を引きずることもなかっ──

あ……そっか。そういうことか。

頭ん中グルグルしてたら、やっと分かった。
俺、めちゃくちゃ明翔が好きなんだ。

チャイムが鳴り、こちらを振り向きもせず明翔がカバンを担いだ。
すかさず明翔の手首を握る。

「……何」
「うち来るだろ、明翔」
「今日は行かない。行きたくない」
「ダメ。来て」

手首を握ったまま歩き出すと、特に抵抗されることなく明翔がついて来てくれてホッとする。
本気で振りほどかれたらたぶん勝てん。

家に入ると、いつもアニマルトレーナーのように両手を広げて2匹の猫を体にくっつける明翔だが、うつむいて静かに靴を脱ぐ。

ナア、と孤高の美猫ツンが柔らかくしなやかに体を明翔の足にこすりつけると、おねだりに負けた明翔がツンを抱っこした。

ツンが明翔のほっぺを舐める。

ツンは普段はツンツンだが、体調不良の人間にだけはデレる。
心のしんどさまでツンには見えるのか。

「明翔、本当にごめん。俺が悪かった」
「別に……俺が優に似てるのが悪いんだし」
「そんな言い方すんなよ。どっちがどっちに似てるなんて言えないって分かってんだろ」

プーイと明翔がそっぽを向いてしまう。
いかん、更にすねすねを拡大させてしまった。

「……分かってるよ。好きって気持ちをコントロールなんてできない。深月が俺の優に似てる見た目だけでも好きで付き合ってくれるなら、それでもいいって──」
「違う! 俺は明翔が一条に似てるから付き合ってるんじゃない」

顔は背けられたままだけど、やっと明翔が俺の目を見てくれた。

「見た目は好きだよ。明翔も一条も。よく似てるとも思う。でも、好きなのは明翔だけだ」

小学生の時の、俺が見つめ続けてた一条優がそのまま高校生になったような黒髪の明翔に、いつもと違うドキドキが大きくなる。

「明翔は、俺の理想の一条優なんだ」
「……え?」
「俺、小学生の時遠くから一条を見ながらきっとこんな子なんだろうなって、想像ってか空想ってか妄想ってか、頭ん中で膨らんでて。その、一条のイメージってみたいのが」

勝手に完成に近付いていってたんだと思う。俺の中で理想の一条優が。
俺が付き合いたい理想像。

「でも、現実には一条は違った。俺が思い描いてた一条じゃなかった。明翔だったんだ」

あー、伝わってなさそう。
お願いだから俺の語彙力増えて!

「明翔が一条に似てるから好きなんじゃない。明翔に似た一条を見ながら俺の中でできていってた理想が明翔そのものだったの」
「……理想……って、絶対嘘でしょ。俺、気まぐれだし大食いだしそんなん理想なわけない」
「理想越えてきた。明翔の気まぐれなとこかわいいし、うまそうに食うの見てて気分いい。俺は明翔が好きだから付き合ってるんだよ」

明翔が泣きそうに顔をくしゃくしゃにする。
でも、亡きじいちゃん父ちゃんの教えを守り、明翔は泣かない。

「ごめんな、俺馬鹿だから自分の気持ちすらリアルタイムに把握できてなくって……今日ずっと明翔のことばっか考えてて、やっと自分でも理解できた感じで」
「……ははっ。深月ってちょいちょい俺のことばっか考えるよね」

明翔がキュッと抱きついてきて、涙目で見上げる。

「ごめん、俺すぐすねちゃって、かわいげないことした……ほんとは、俺が明太子好きなん分かってくれてんだって、嬉しかった」

ノールックで譲ってたように見えたけど、ちゃんと見てたんだ……。

「いいよ。俺、明翔がすぐすねるとこも好きだよ」
「うん! だから安心してすねられる!」

コイツ……ズルいなー、マジで。
これからも俺、明翔にすねられるの確定じゃん。

「ねえ、シャワー借りていい? スプレー落としたい」
「いーよ。トイレの横が風呂」
「分かんない。ついて来てよ」

明翔が俺のシャツの裾をギュッとつかむ。
え? ……えっ?

「明翔さん、なんか企んでます?」
「一緒に風呂入ろーとか企んでねーよ?」
「いや、無理だって!」
「何がー? 企んでねえって言ってんのに」

もー、コイツは……俺を振り回し、かき乱すために生まれてきたのか、お前!
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