親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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高崎塔夜との対決

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週に2回の体育を俺は楽しみにしている。
小学校の時から体育だけは5、あとは聞くなな成績だった俺は絵に描いたような運動だけできる男子である。

今はサッカーだからなおさら楽しい。

「呂久村、PKのテスト俺と組まない?」
「俺、明翔とやるから無理」
「その明翔を賭けて俺と勝負しない?」
「俺がするする~って言うとでも思ってんの? いいよ」
「は? どっち?」

やってやってもいいよと言っている。

今日は最高気温が16度だっけか。
よく晴れてるけど、半袖短パンの体操服ではちょっと寒い。

タカトゥーは長袖のジャージである。

「負けた方は一生明翔としゃべらない、でいい?」
「えらい大きい賭けしようとしてんな。そこまでは呂久村がかわいそうだからいいよ」
「お前俺が負ける前提でしゃべっとんな」
「勝った方が明翔とデートね」
「おい。俺にメリットねえじゃねえか」

彼氏なめんな。
まあいい。デートなんて絶対させない。

タカトゥーは自信ありげだが、俺も相当自信ある。
5本中5本決める気しかないし、5本中5本止めてやる気しかない。

「高崎塔夜、1本目!」
「はい!」

タカトゥーがボールから1歩下がり、軽くリズムを取って踏み込むと足を振り上げる。

速い!

完全に油断してた。
タカトゥーがこんなサッカー経験者の動きを見せるとは思ってなかった。そう言えば、俺コイツのことろくに知らないんだった。

「はい、〇~」
「っしゃあ!」

だが、この俺が本気になれば止められないボールなどない。
初めの1本こそ決められてしまったが、あとは全部止めてやった。

「2本決めれば俺の勝ちだ。余裕すぎる。もうちょっと決めさせてあげれば良かったかなあ~」
「俺の蹴り見てまだ自信たっぷりとは、できる子ねえ」

集中して、ボールとの距離を計る。タカトゥーがやや左にいるから、右上を狙う。

力を込めてボールを蹴ると、狙い通りに真っすぐ飛んだがストレートすぎたのか止められてしまった。

「手ぇ痛っ」
「くっそ!」

ムカつくー。生意気に止めてんじゃねーぞ。

俺は運動神経には自信があるが、精神的に幼稚なところがあると認めざるを得ない。
イライラがボールに表れるかのように思った通りの動きをしなくなる。

4球目なんか意図せずカーブがかかってタカトゥーの左足首を猛スピードのサッカーボールが直撃した。

「痛ってえ!!」
「ごめん!」

タカトゥーが崩れ落ちた。うわ、痛そう。本当のマジでわざとじゃない。

再びタカトゥーが立ち上がり、構えた。

「呂久村、ラスト!」
「はい!」

ボールに全神経を集中させる。
高まった、と感じたところで踏み込んで右足を振り上げる。

左隅を狙った通りにボールがゴールネットを揺らす。

「っしゃあ!」

全ミスだけは避けられた。1本でも決まって、率直に嬉しい。タカトゥー、めっちゃサッカーうまい。

「すごい! 深月! タカトゥー、幼稚園からサッカーやってて中学の時に全国行ったらしいよ」
「あいつガチじゃねーか!」

体育でしかやったことない素人に勝負持ちかけてんじゃねえ。

「なんでサッカー部じゃねえの? うちサッカー部強いのに」
「1年の時に事故で足首が変に折れちゃったから辞めたんだよ。踏ん張れないから思うように動けなくなっちゃって」
「事故?」
「バイトで脚立乗って窓拭いてたら落ちたんだって。入学早々悲惨~つって」
「新人バイトに危ねえ仕事させんじゃねーよだな」
「事故きっかけでバイトもやめて、本格的に留学生選抜対策始めてたな」

ふーん。入院しただろうし、時間ができて自分を見つめ直した、ってやつかな。

「呂久村、やるじゃん。自信は伊達じゃねーのな」
「あ。タカトゥー、足首折れたんてどっち?」
「左」
「マジか。悪い、ボール直撃しちゃって。大丈夫?」
「超いってえ。再骨折した」
「大丈夫そうで良かった」

冗談言う余裕があるなら平気だろう。

「マジで痛いっつの」
「しゃあねえな、保健室行くのついてってやるか」
「元凶の言い分か、それ」
「俺も行くー」

体育教師に声をかけ、保健室行きの許可をもらう。
明翔、タカトゥーと3人で校舎へと入った。

「あーあ。勝負は引き分けだな」
「サッカーで引き分けなら俺の勝ちでいいだろ」
「いや、足負傷して引き分けだから俺の勝ちでいっか」
「勝負って?」

明翔が首をかしげる。かわいい仕草するな、まじ。
タカトゥーが明翔の肩につかまるフリをしながら肩を抱く。

「俺が勝ったら明翔とデートできたのになー」
「デート? 勝負なんかしなくても普通にみんなで遊びに行こうや」
「みんなでじゃねえんだよなー」

タカトゥーって、どこまで本気なんだろ?
冗談言ってるだけにも見えるし、それにしてはこの絡みしつこい気もする。

「ボールぶつけたのは俺だから、俺が肩貸してやるよ」
「呂久村じゃ肩高すぎて余計しんどいわ」
「遠慮すんなや、タカトゥー」

無理矢理明翔の位置に俺が入ると、自分と同じくらいの背のやつは珍しいから変な感じ。

「こんなんやだあー」
「人の親切はありがたく受け取れ!」

保健室に入ると、ゆりが白衣の先生によって手首に包帯を巻かれていた。

「手ぇどしたん」
「バスケしてたらねんざしちゃって」
「手首ねんざって器用な」
「ちょっとベッドで座って待ってて」
「はーい」

先生の指示に従い、3人横並びでベッドに腰かける。
タカトゥーを真ん中に、ちょうど左側にいる俺がタカトゥーのジャージの裾を引っ張り上げてみる。

「足どない。うっわ、けっこー腫れてんぞ」
「痛そうー。塔夜、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。今日明翔ん家に泊めて。そんで風呂で背中流して」
「俺も泊まってって俺が背中流してやるよ」
「やだ、こんなデカいムサい男と風呂とか」
「明翔はいいのかよ」
「明翔はかわいいからいい」

ふと視線を感じて顔を上げると、ゆりがひざをガクガクさせ興奮を隠しきれてない様子で我らを指差す。

「ダブル高崎と深月の三角関け――」
「ない! 勝手に脳内で始めるな!」
「やっぱないかー。ハイエナと女ったらしだもんね」
「たらし言うな」

そしてガッカリすんな。

ゆりの措置が終わったようで、先生がタカトゥーの足を診始めた。
入り口で上靴を履いているゆりへとサッと駆け寄る。

「お前、こないだタカトゥーに何かされた? あのハイエナに」

コソッと耳打ちすると、ゆりは笑った。

「ないない。ハイエナなんて噂だよ。ただ話聞いてくれるの。それだけ」
「話?」
「うん。話聞いてもらっていっぱい泣いたらめちゃくちゃスッキリしちゃって」

泣いたんか……ちょっと胸が痛む。

「あ、気にしないでね。タカトゥーがいい雰囲気作ってくれるものだから、ここ泣いとくべきかなで泣いたって感じ」
「あー、うん」
「私も言ったんだよ。変な噂立てられて迷惑だろうから、私が事実を語ってあげる! って。でも、気にしてないから言わなくていいよって」
「ふーん」

変なヤツだな。誤解は解いた方がいいだろうに。だいぶ不名誉だぞ、ハイエナって。

ベッドへと戻ると、ギューギューと包帯で足首を締め上げられているタカトゥーが明翔を抱きしめていた。

「痛ってえええ!!」
「がんばれ、塔夜。もうちょっとだから」
「がんばれ、タカトゥー! 俺につかまれ!」
「こんなゴツいのやだあー。痛みが倍増するぅ」

またしても明翔のポジションに俺が入ると、タカトゥーは悲鳴を上げた。
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