38 / 177
幕間デート?:真白 みなと編
『泡の向こうに、君がいた』
しおりを挟む
大学の昼休み、講義の終わったキャンパスの中庭。私は芝生に座ってイヤホンをつけたまま、ぼんやり空を見上げてた。
「よっ、みなと」
「ん、コウ?」
声の主は、同じ大学の男子――天城コウ。Vの裏側じゃ、あんなイケボでみんなを虜にしてるくせに、リアルじゃふつーの大学生してる。
……いや、ふつーよりは、ちょっとだけ、カッコよすぎるかも。
「この前の配信、助かった。ほんとありがとな」
「べ、別に? あたしも楽しかったし」
って、ちょっと待って。なに急に改まってお礼とか。顔、見られたくない。今、ぜったいニヤけてる。
「でな、なんかお礼したくて。何がいい?」
「――え」
……やば。言うチャンスきた。ずっと前から、これを言おうか迷ってて、でも勇気出なくて、でも今逃したら一生後悔するってやつじゃん。
「えーと、その……お台場の、ナイトプール。行ってみたいなーって……」
「プール?」
「……ダメ?」
コウはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに笑った。
「いや、いいよ。じゃあ週末、行くか」
その返事を聞いて、私はイヤホン外すのも忘れて、心の中でガッツポーズした。
──やった。ついに、ふたりで、お出かけ。
週末。お台場のシティホテル。
ルーフトップのナイトプールは、想像以上にロマンチックだった。
ライトアップされた水面、ゆらめく照明、静かな音楽……まるで映画の中の世界。
「……おまたせ」
私が選んだのは、ちょっと大胆すぎるかもしれないビキニ。ホルターで背中がぱっくり開いてて、ウエストも思いきって出してみた。
鏡の前ではめちゃくちゃ悩んだけど、でも――
(見てほしい。……コウに)
「お、おお……」
その反応、悪くない。ていうか、目そらした?
(え、照れてる? かわい……いや違う違う、私なに考えてんの)
「似合ってる」
小さな声でそう言ってくれたその一言で、胸の奥がきゅっとなった。
プールサイドでしばらく足を水につけて話したあと、ふたりでジャグジーに入った。
泡がぽこぽこと音を立てて、視界が柔らかく曇っていく。
コウの隣に座ると、ちょっとだけ肩が触れる。
それだけで、鼓動が跳ねた。
(近い。……やば、どうしよう)
「静かだな」
「うん。でも……なんか、こういうのもいいかも」
コウと話してると、いつもより素直になれる気がする。配信とか、Vの話とか、どんな悩みでも、彼にはつい話しちゃう。
だから今日も、ちょっとだけ本音を言ってみた。
「ねえ、コウ。こういうの、またやってもいい?」
「うん。俺も楽しいし」
(ズルいなぁ、そういうとこ……ちゃんと返事くれるから、もっと期待しちゃうじゃん)
そして、事件は起きた。
ジャグジーの泡が一瞬強くなったなって思った、その瞬間――
「え、あ、やば……!」
背中のホルターが、外れた。
ビキニの上が、ずるっと下がる感覚。
パニックになって、反射的にコウの胸に飛び込んだ。
「わ、ちょっ……!」
「み、見ないでっ!! おねがい、ほんと、やばいから!!」
泡の中で、胸を押し付けたまま抱きついてるって状況に気づいて、顔が一瞬で真っ赤になる。
(なにやってんの私っっ!!)
でも、コウは動かず、穏やかな声で言った。
「大丈夫。見てないし……動かないから」
その言葉が、静かに胸に染みた。
(……ほんとに、ズルい)
ふるえる声で、私は言った。
「……このままでも、いい?」
「……うん」
泡の音が、耳の奥で遠くなる。
こんなふうに人と寄り添ったの、初めてかもしれない。
ドキドキして、息もできなくて、でも逃げたくなかった。
(もっと、そばにいたいって思った。もっと、知ってほしいって思った)
更衣室を出て、ロビーのソファに座った。
夜景がきらきらして、現実じゃないみたいだった。
「……今日は、ありがとね」
私がそう言うと、コウはいつもの調子で「こちらこそ」と笑った。
なんか、ずるいな、ってまた思った。いつも通りで、優しくて、だけどこっちの気持ちには気づいてない。
でも――だからこそ、言ってみた。
「今度また来るときはさ。……ふたりじゃないとヤだ」
言いながら、手のひらが汗ばむ。
「じゃあ、またふたりで来ようか」
その返事を聞いたとき、私の中で何かがぽとりと溶けた。
(泡の中で隠した気持ちが、ちゃんと届いた気がした)
立ち上がる彼の背中を追いながら、小さく呟く。
「今日のこと、夢ってことにしてもいいけど……次の夢も、あんたと一緒がいい」
その声が届いたかどうかはわからない。
でも、コウはふり返って、ほんの少しだけ微笑んだ気がした。
「よっ、みなと」
「ん、コウ?」
声の主は、同じ大学の男子――天城コウ。Vの裏側じゃ、あんなイケボでみんなを虜にしてるくせに、リアルじゃふつーの大学生してる。
……いや、ふつーよりは、ちょっとだけ、カッコよすぎるかも。
「この前の配信、助かった。ほんとありがとな」
「べ、別に? あたしも楽しかったし」
って、ちょっと待って。なに急に改まってお礼とか。顔、見られたくない。今、ぜったいニヤけてる。
「でな、なんかお礼したくて。何がいい?」
「――え」
……やば。言うチャンスきた。ずっと前から、これを言おうか迷ってて、でも勇気出なくて、でも今逃したら一生後悔するってやつじゃん。
「えーと、その……お台場の、ナイトプール。行ってみたいなーって……」
「プール?」
「……ダメ?」
コウはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに笑った。
「いや、いいよ。じゃあ週末、行くか」
その返事を聞いて、私はイヤホン外すのも忘れて、心の中でガッツポーズした。
──やった。ついに、ふたりで、お出かけ。
週末。お台場のシティホテル。
ルーフトップのナイトプールは、想像以上にロマンチックだった。
ライトアップされた水面、ゆらめく照明、静かな音楽……まるで映画の中の世界。
「……おまたせ」
私が選んだのは、ちょっと大胆すぎるかもしれないビキニ。ホルターで背中がぱっくり開いてて、ウエストも思いきって出してみた。
鏡の前ではめちゃくちゃ悩んだけど、でも――
(見てほしい。……コウに)
「お、おお……」
その反応、悪くない。ていうか、目そらした?
(え、照れてる? かわい……いや違う違う、私なに考えてんの)
「似合ってる」
小さな声でそう言ってくれたその一言で、胸の奥がきゅっとなった。
プールサイドでしばらく足を水につけて話したあと、ふたりでジャグジーに入った。
泡がぽこぽこと音を立てて、視界が柔らかく曇っていく。
コウの隣に座ると、ちょっとだけ肩が触れる。
それだけで、鼓動が跳ねた。
(近い。……やば、どうしよう)
「静かだな」
「うん。でも……なんか、こういうのもいいかも」
コウと話してると、いつもより素直になれる気がする。配信とか、Vの話とか、どんな悩みでも、彼にはつい話しちゃう。
だから今日も、ちょっとだけ本音を言ってみた。
「ねえ、コウ。こういうの、またやってもいい?」
「うん。俺も楽しいし」
(ズルいなぁ、そういうとこ……ちゃんと返事くれるから、もっと期待しちゃうじゃん)
そして、事件は起きた。
ジャグジーの泡が一瞬強くなったなって思った、その瞬間――
「え、あ、やば……!」
背中のホルターが、外れた。
ビキニの上が、ずるっと下がる感覚。
パニックになって、反射的にコウの胸に飛び込んだ。
「わ、ちょっ……!」
「み、見ないでっ!! おねがい、ほんと、やばいから!!」
泡の中で、胸を押し付けたまま抱きついてるって状況に気づいて、顔が一瞬で真っ赤になる。
(なにやってんの私っっ!!)
でも、コウは動かず、穏やかな声で言った。
「大丈夫。見てないし……動かないから」
その言葉が、静かに胸に染みた。
(……ほんとに、ズルい)
ふるえる声で、私は言った。
「……このままでも、いい?」
「……うん」
泡の音が、耳の奥で遠くなる。
こんなふうに人と寄り添ったの、初めてかもしれない。
ドキドキして、息もできなくて、でも逃げたくなかった。
(もっと、そばにいたいって思った。もっと、知ってほしいって思った)
更衣室を出て、ロビーのソファに座った。
夜景がきらきらして、現実じゃないみたいだった。
「……今日は、ありがとね」
私がそう言うと、コウはいつもの調子で「こちらこそ」と笑った。
なんか、ずるいな、ってまた思った。いつも通りで、優しくて、だけどこっちの気持ちには気づいてない。
でも――だからこそ、言ってみた。
「今度また来るときはさ。……ふたりじゃないとヤだ」
言いながら、手のひらが汗ばむ。
「じゃあ、またふたりで来ようか」
その返事を聞いたとき、私の中で何かがぽとりと溶けた。
(泡の中で隠した気持ちが、ちゃんと届いた気がした)
立ち上がる彼の背中を追いながら、小さく呟く。
「今日のこと、夢ってことにしてもいいけど……次の夢も、あんたと一緒がいい」
その声が届いたかどうかはわからない。
でも、コウはふり返って、ほんの少しだけ微笑んだ気がした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる