イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第7章『《るる☆るん!》の初恋研究レポート』

『原宿レポート、大ピンチ!?』

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わたしの名前は白瀬るる、小学六年生。

キッズV事務所《PiyoPiyo Production》に所属する、小学生Vtuberのトップエース!

漢検一級、理論派、でも見た目は小動物系うさ耳アバター――それが、わたし《るる☆るん!》なのだっ!



「……いいよいいよ、今のめっちゃ映えてた!るるちゃんの笑顔、サイコー!」



「えへへ……でしょ? るるは角度まで計算してきたんだからっ!」



今、わたしたちは原宿・竹下通りの大人気店「CANDYA☆GO☆GO!」の前にいた。

店内のカラフルなお菓子の前で、「動物マシュマロ串食べ比べ企画!」の事前ロケ。

マネージャー抜き、キッズ同士だけのチャレンジ。機材も自前。

だけど、そんなの関係ない!

だって――



「撮れてるよね? ちゃんと動いてるよね?」



「うんうん、バッチリ!るるちゃん、ほんとプロっぽい!」



「えへへっ、やった~♪」



うさ耳ヘッドホンを押さえながら、ぴょんと跳ねる。

心が弾む。見てくれる人に、もっとるるの“素”を届けたい。

賢いだけじゃない、ちゃんと、楽しさとか、可愛さとか……“全部のるる”を。



「それじゃ次は、“うさぎマシュマロ”にかぶりつくとこ、いくよー!」



「よーい、アクション!」



ぱくっ。



「……うんっ! もっふもふ~! お砂糖の雪が口の中でとけていく~! これはもはや、食べられる雲ッ……!」



即興でセリフが口からこぼれていく。この感覚、大好きだ。

きっと、これも“伝わる”。



でも――



「……あれ?」



「ん? どうしたの、ちかちゃん?」



スマホを持ってくれてる友達が、眉をひそめて画面をタップしてる。



「……ごめん、なんか動いてないっぽい。画面フリーズして……え、うそ……えええ!?」



「…………えっ?」



「え、これ、録画止まってる!? ちょっと待って、再起動……あれ、できない! なんで!? キャッシュ、飛んでないよね……?」



わたしの笑顔が止まった。



「……もしかして、さっきのデータ、全部……撮れてないの?」



「……ご、ごめん……」



頭が真っ白になった。



何時間も考えて、準備して、リハもして……この一瞬に、全部かけてたのに。

せっかく、事務所に内緒で、自分たちだけでやってみようって決めたのに。



「やだ……なんで今なの……」



唇が震える。涙が出そうになる。

でも、ここで泣いたら「やっぱり子供」って思われる。事務所にも、みんなにも。

わたしは、ちゃんと“自分の力で”やりたかったのに。



「……るる、大丈夫?」



ちかちゃんの声が遠く聞こえる。わたしは、首をふることもできなかった。



「……あの、ごめんなさい。ちょっと通ってもいいですか?」



その時、やわらかくて低い声が、わたしたちの横から聞こえた。

振り向くと、背の高い男の人と、女の子が並んで立っていた。



男の人は黒髪で、落ち着いた雰囲気。でも偉そうじゃない、なんだか優しそうな感じ。

女の子は、茶色のセミロングにぱっちりした丸い目。……なんか、アイドルみたいに可愛い。



「……あの、スマホ、調子悪いの?」



「…………はい……」



わたしは小さくうなずいた。声も出なかったのに、男の人はすぐに察してくれて、



「ちょっと見せてもらってもいいかな?」



って、膝をついて、目線を合わせてくれた。

その距離が、なんだか――安心できた。



「わ、わたしの……友達のなんですけど……映像が……」



「うん、見てみるね。……ああ、これ、アプリごとフリーズしてるっぽいな。記録は残ってると思う。裏からログを抜けば……たぶん、復元できるはず」



指がすごく速くて、でも丁寧だった。スマホの中を、魔法みたいに操作していく。



「セーフモードで立ち上げて……あ、あった。ここにキャッシュ、残ってる」



「…………え、ホント……!?」



「うん。まだ全部じゃないけど、さっきのうさぎマシュマロのとこまでならいけるよ」



「す……すごっ……!」



ぽろぽろっと、涙がこぼれた。嬉し涙。

なんか、よくわかんないけど……あったかくて、安心して、悔しくて、でもすっごく、助けられた気持ちで。



「……ありがと、ございます……っ」



その時、女の子のほうが心配そうにのぞきこんでくれて、



「機材トラブル、最悪だよね。気持ち、めっちゃわかる。うちもよくあるし……」



「う、うち……?」



「あっ、いや、うちは……趣味で動画とか、ちょっと、ね?」



「あ、そっか……!」



(なんか、なんか今、怪しかった気がするけど……!?)



でも、あたしはそれどころじゃなくて――



「……お礼したいです。どこかで、お茶でも、ご一緒できませんかっ!?」



「えっ?」



二人同時に目を丸くする。わたしも、我ながら驚いてた。

でも、どうしても……もう少しだけ、近くにいたかった。



「助けてくれて……本当に嬉しかったから……お礼、したいんです」



しばらく沈黙のあと、男の人が優しく笑ってくれた。



「じゃあ、近くにいいカフェあるよ。案内するね」



「うん。いこう、るるちゃん」



るるちゃん――。

この子、初対面なのに、名前で呼んでくれた。

なんか……すごく、いい響きだった。



(……もしかして、今日は“とびきりの日”になるかも――)



そう思いながら、わたしは二人と一緒に、にぎやかな原宿の雑踏を歩き出した。
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