小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶

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四章◆繋がるご縁◆

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それについて、雄大にはずっと考えていたことがあった。
ただ、言っていいものか、琴葉の気持ちを踏みにじったりしないだろうかと思案してなかなか伝えることができなかったのだが、何となく今なら勢いで言える気がした。

「そのことなんだけど、この家ももう築30年くらいだから、リフォームするのはどうかな?」

「リフォーム?」

「もちろん強制はしない。この家は琴葉の大事な思い出が詰まった家だから琴葉の意見を尊重する。俺の意見はひとつの案だと思って…。」

話の途中で琴葉が何かを閃いたかのようにはっとなって、前のめりになった。

「あのね、それだったら、リフォームじゃなくてリノベーションをしたいの。」

「リノベーション?それだとほとんど建て替えのようなものだけどいいの?」

リフォームとリノベーション、似ているが少し内容が違う。
一般的にリフォームとは、古くなった建物を新築の状態に戻すことを指し、リノベーションとは今ある建物に大規模な工事を行い、住まいの性能を向上させるものだ。
とは言うものの、どちらも同じような意味で使われることが多く、雄大としては琴葉が“リフォームとリノベーションの違い”を知っていることのほうが驚きだった。
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