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1巻
1-3
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やっぱり妖怪なのか……。自分で聞いといてなんだが、まさか本当に妖怪だとは。
これが夢オチってことはないよな?
試しに頬をつねってみるが、普通に痛かった。
「夢じゃない」
俺はへなへなとしゃがみ込む。
正直、夢オチの方が良かった。だって、こんなことを他の人に話したら、頭を心配されるレベルだろ。
しゃがんだ俺に小鬼が近寄って来て、心配そうに見上げる。
「あ、いや、別に体調悪くなったわけじゃないから。大丈夫だよ」
俺が言うと、小鬼は「なら良かった」と言わんばかりにコクリと頷いた。
……俺は今、妖怪と意思疎通が出来ている。
頭の痛い事態だが、とりあえず小鬼に質問してみた。
「えっと、さっきここまで道案内してくれたのは、君だよね?」
小鬼はコクリと頷く。
「そうなんだ。困ってたから助かったよ。ありがとうね」
そうお礼を言うと、小鬼は照れた様子でもじもじと体を揺する。それから、小鬼は自分と俺を交互に指さし、自分の右手と左手を合わせて握手をした。
俺は首を傾げて、その意味を考える。
「……俺と仲良くしたいってこと?」
自信はなかったがそう推測して言うと、小鬼は嬉しそうに大きく頷いた。
俺はその無邪気な小鬼に笑って、手を差し出す。
「じゃあ、仲良くしよう」
小鬼はにこにこと笑って、俺の指を両手でキュッと掴んだ。
人間の友人を作るのには時間がかかるのに、数分前に出会った妖怪と友達になってしまった。あり得ない状況に、我ながら可笑しくなる。
「君はどこから来たの? このお屋敷に住んでるの?」
そう聞くと、小鬼は小さく首を振った。そして中庭を指さす。
俺は小鬼を抱き上げて、ガラス戸越しに中庭を見る。
「外から来たってこと?」
すると小鬼は首を振って、再度中庭を指さす。それは中庭にある蔵を指していた。
「蔵?」
俺が眉を寄せて尋ねた時、ふと誰かの気配がした。振り返ると、自分のすぐ真後ろに結月さんが立っていた。
「ゆ、結月さ……」
こんなに近くに来ていたのに、足音一つ聞こえなかった。気配もたった今気が付いたくらいだ。
一歩下がった俺の背に、ガラス戸が当たる。結月さんは静かな声で言った。
「蒼真君。こんな夜更けに、ここで何をやっているんだい?」
そう尋ねられ、俺はゴクリと喉を鳴らし慌てて説明する。
「そ、その。約束を破るつもりはなかったんです。トイレに行って、自分の部屋に戻る時に、寝ぼけてこっちまで来ちゃって……」
俺の言い訳に、結月さんは小さな声で「そう」と呟く。
その短い相槌は、いったいどう解釈したらいいのだろうか。落胆してるのか、それとも怒ってるのか……。
「結月さんこそ、どうしてここに?」
「蒼真君の声が聞こえたからね。何かあったのかと思って、駆け付けたんだよ」
あ……そっか、さっき小鬼に驚いた時、大声で叫んだのだった。
そう思った辺りで、今更ながらに手の中の小鬼を抱き込む。
結月さんが妖怪が見える人なのかわからないうちは、隠しておくべきだと思った。
俺はチラリと結月さんの表情を窺う。
「まず段階を踏んで、ちゃんと説明をしてからと思っていたのだけれど……、もう会っちゃったんだね」
結月さんは、俺の手をジッと見つめてそう呟く。
明らかに俺の手の中に、何かがいるとわかっている口ぶりだ。
小鬼は俺の指を押しのけて顔を出すと、結月さんに向かってシュンと頭を下げた。
「蒼真君との接触は、時が来るまで待ちなさいと言ったよね?」
小鬼と視線を合わせ窘める結月さんに、俺は口をポカンと開ける。
見えているどころか、もしかしてこの小鬼と知り合いなのか?
「結月さんは、この小鬼と知り合いなんですか? この小鬼はいったい……」
俺が尋ねると、結月さんは手を挙げて制止のポーズをとった。
「順を追って話すよ。まずは座って、落ち着ける場所に移動しよう。長い話になるからね」
優しく微笑んで、裏屋敷の奥へと歩いて行く。俺は小鬼を抱えたまま、その後をついて行った。
俺が通されたのは、裏屋敷の一室だった。
結月さんが障子を開け、部屋の隅にあった行燈に火をつける。
その部屋は十畳ほどの和室だった。うすぼんやりと明るくなった室内を見回して、この部屋には電灯さえないのだと気付く。真ん中に座卓があって、向かい合う形で座布団が敷いてあった。
結月さんが片方の座布団に座り、視線で促されて俺はもう片方の座布団に腰を下ろす。ついでに手の中の小鬼を机の上に下ろすと、小鬼は俺の前にちょこりと座った。
「蒼真君は、その小さいものは何だと思う?」
「妖怪……ですよね? この小鬼に確認しました」
すると、少し驚いた顔をされたので、途端に自分の答えに自信がなくなった。
「あれ? 違いました?」
「いや、確かにそれは小鬼だよ。異形、妖怪、あやかしと呼ばれるものの類だ。私が驚いたのは、蒼真君が直に確認したことにさ。普通、別世界のものは恐ろしい存在だろう?」
苦笑されて、俺は彼が驚いた理由に納得した。
「はぁ……確かに、初めは少し怖かったですけど。見ていたら、悪そうな生き物に見えなかったので」
そう言って小鬼の頭を撫でる。小鬼は少し照れた顔で、大人しく撫でられていた。結月さんはそんな俺達を微笑ましそうに見つめる。
「さっき私に見つかった時も、小鬼を隠して守っていたものね。君はそういうところが昔と変わらない。とても心の優しい子だ」
そう言って、懐かしそうに笑う。
それは結月さんに遊んでもらった幼い俺と、今の俺を比べて言っているのだろうか。褒めてもらうのはありがたいけれど、記憶にないのでどこか他人の話を聞いているみたいだ。
「褒められても、当時のことは記憶にないのでピンときませんが……」
俺が自嘲気味に言うと、結月さんは真っ直ぐ俺を見据えて言った。
「君は幼少の記憶がないようだけれど、それには理由があるんだよ」
「理由? 俺の記憶に?」
ただ記憶力が悪いせいじゃないのか?
俺が眉根を寄せると、結月さんは薄く微笑んだ。
「君は妖怪を見たのを、今日が初めてだと思っているかもしれないが、実は小さい頃も妖怪が見えていたんだ」
「え! じゃあ、俺はもともとそういったものが見える性質だったってことですか?」
衝撃の話に俺は目を見開き、動揺して視線を彷徨わせる。
「で……でも、今までおかしなものを見たという記憶はないですけど……」
地味で平凡な人生を歩んできた俺としては、にわかには信じがたい話だ。
小鬼という物的証拠が目の前にあるので、妖怪の存在まで否定するつもりはないが、自分にそんな力があると言われても実感がわかない。
結月さんは俺を落ち着かせるためか、優しく静かな声で言った。
「見えていなかったのは当然だよ。君の目を……異形のものを見る力を、ずっと封印していたからね」
封印って……、小説や映画に出てくるあの封印?
「どうして封印を?」
俺が首を傾げると、結月さんは表情を曇らせた。
「蒼真君が幼かった頃、君は友達に妖怪のことを話したんだ。だけどその子には妖怪が見えなかったから、蒼真君のことを嘘つきだと言った。蒼真君が傷ついたことに妖怪達が怒って、その友達に怪我を負わせてしまったんだ。かすり傷程度で済んだけれど、その友達は怖かったのか、蒼真君を避けるようになってしまった」
「そうなんですか……」
全然覚えてないけど、俺がコミュニケーションが苦手なのって、その辺りのトラウマが残ってるからなのかな。
自分のせいで友人に怪我をさせたって、子供にとっては結構ショックな出来事だ。人との関わり合いに、臆病になってしまったのも頷ける。
「そういった出来事があって、葵さんと相談し、私が君の見える力を封印することにしたんだよ」
「ばあちゃんは、俺が見えることを知っていたんですね。両親も?」
「いや、君のご両親は当時海外に行っていたし、日本に戻った時はすでに力を封印した後だったから、知らないよ。君のおばあさんの葵さんは、蒼真君と同様に妖怪が見える人だった。君の母方の先祖には陰陽師や巫女がいたというから、おそらくその気質が強いんだと思う」
「ばあちゃんも見える人だったんですか? 母方ってことは、母さんも?」
驚いて思わず机を揺らすと、小鬼が小さく浮き上がった。ビックリする小鬼に、俺は「あ、ごめん」と謝る。
いや、だって。あの祖母や天然な母さんにも秘められた力があったのかと、動揺したのだ。一言も聞いたことがなかったし、そんな素振りもなかった。
特に母さんは嘘がつけない性格だから、見えてたら絶対に言いそうなのに。
すると、結月さんは小さく噴き出して首を振った。
「いや、お母さんの藍さんは破魔の力……悪いものを寄せ付けない力は強いようだけど、見ることは出来ないみたいだよ」
破魔の力。そう言われてみれば、母さんには事故に遭ってもかすり傷さえ負わなかった過去がある。それが破魔の力によるものかはわからないが、跳ね返すパワーは強そうだ。
俺は妙に納得して、大きく頷いた。
「俺にも破魔の力があるんですか?」
悪いものを寄せ付けない力があれば、見えていても多少安心出来る。
俺が期待して尋ねると、結月さんは困った顔をした。
「いや、むしろ君は、妖怪を引き寄せる力があるんだ」
「引き寄せる!?」
俺が顔をこわばらせると、結月さんは慌ててフォローする。
「確かに妖怪が寄ってくるのは、人間の蒼真君にとって困ることかもしれないけど、それは悪いばかりの能力ではないんだよ。妖怪に好かれやすいという意味でもある」
俺は机の上の小鬼を見下ろした。小鬼は机に載せていた俺の手に、キュッと抱きついていた。その様子からは、俺に対する好意が感じられる。
嫌われるよりは、好かれた方が良いけれど……。
そのまま小鬼をあやしていた俺は、ふと疑問が浮かんだ。
「って、あれ? 封印されたのに、何で今は小鬼が見えているんですか?」
尋ねると、結月さんは静かに息を吐く。
「その封印は、十五歳くらいまでのもの。誕生日きっかりに解けるとは思わなかったが、すでにその封印は、解けてしまっている」
俺はあやしていた手をピタリと止め、結月さんへと視線を上げた。
「……今の俺は、見える力も引き寄せる力も解放状態ってことですか?」
「まぁ、そうなるね」
結月さんに肯定され、俺は愕然とする。
え、つまりこれから、妖怪が見える生活がはじまるということか?
他人が見えないものを見えると言って回るほど、子供ではないけど。
妖怪に反応した姿や、話す姿を見られたりしたら、かなり怪しい奴だと思われるよな。
小鬼は可愛いが、恐ろしい妖怪だっているだろうし……。
そんな引き寄せ体質では、普通の生活は見込めないのではないだろうか。
「あ、あの……もう一回封印することって、出来ないんですか?」
俺がおそるおそる尋ねると、彼は困り顔で深いため息を吐いた。
「十年程度であれば、出来なくはないよ。だけど前回の封印の後、君の記憶に支障が出ている。記憶喪失が、封印によるものだとすると……」
「また記憶を喪失する可能性が、あるってことですか?」
小さく頷く結月さんを見て、俺は頭を抱える。
であるなら、再度の封印は出来ない。
子供の時の記憶喪失と、今の段階での記憶喪失じゃレベルが違う。小・中・高の人間関係や、受験で詰め込んできた知識だってある。
その中には思い出したくない黒歴史もあるけれど、都合よく悪い記憶だけを消すなんて出来ないだろう。
だいたいそんな思いまでして封印したとしても、十年経ったらまた記憶喪失だろ? 失うものが大きすぎる。
「君をここに居候させようと思ったのも、そろそろ封印が解けると思ったからなんだ。ここなら、何かあっても私が手助けすることが出来る。それに、妖怪との付き合い方も知ってもらえると思ってね」
「付き合い方……ですか」
とんでもないことになってきた。よもや、妖怪と付き合う方法を学ぶ日がこようとは……。
「正直、自信ないんですが……」
俺が躊躇いがちに言うと、結月さんはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫だよ。段階をふんで教えていこうと思っているし、蒼真君は妖怪達と仲が良かったんだから」
……妖怪達と仲良く。それって封印前の話ですよね? というか、俺ってどんな幼少時代を送っていたんだ。
俺は顔を少し引きつらせて、結月さんから小鬼へと視線を向けた。
小鬼は俺と目が合って、キョトンと首を傾げる。その姿は、とても可愛かった。
そりゃ、こんな妖怪ばかりだったら、俺だって仲良くしていきたいけどさ。
それにしても……と、俺は結月さんに視線を戻した。
「結月さんって何者なんですか?」
妖怪が見えるし、妖怪達との付き合い方を知っていて、尚且つ封印する術も使えるなんて、ただの人間とは思えない。
答えを待ってジーッと見つめる俺に、結月さんは薄く微笑んだ。
「私が何者か、蒼真君は知っているよ。今は忘れているかもしれないけどね。封印が解けた今、昔のことも少しずつ思い出すはずだ」
「…………つまり、今は教えてくれないってことですか?」
「私のことを思い出して欲しいからね」
そう言って軽くウィンクする結月さんは、美形も相まって嫌味なくらい様になっていた。普通の人がやったら、きっと気障すぎてドン引かれるだろう。
「じゃあ、あの中庭の蔵はなんですか? 小鬼が、あそこから来たみたいなことを教えてくれたんですけど」
そう言って、俺は中庭の方向を指さす。結月さんはそちらに目を向けて言う。
「あれは、あやかし蔵だよ」
「あやかし蔵?」
名前からして、怪しげな。
「表向きは蔵だが、重要なのは蔵の扉でね。あの扉を通じて、妖怪や異形の者などが行き来するんだよ」
「じょ……冗談ですよね?」
思わず笑ってしまった俺に、結月さんは視線を戻した。結月さんの瞳は、至極真面目なものだった。
「もちろん冗談じゃないよ。古の時代から、人の世とあやかしの世は表裏一体。人の恐れ、嘆き、憎しみ、怒り、楽しみ、喜び、驚き……様々な感情とともに、異形のものは生まれてきた。それは今の世も同じことだ。彼らは名を変え、姿を変えて、いつの時代も人の傍にいる」
「それが……蔵の扉から出入りするんですか?」
俺が息を呑むと、結月さんは静かに頷いた。
「そう。扉は日本各地に大小あるが、あの蔵は出入り口の中でも古く、重要な扉だ。私が管理をしている」
「扉を管理?」
聞き返す俺に、結月さんは小鬼を一瞥して言う。
「そこにいる小鬼などは、取り立てて害はない妖怪だ。けれど、たまにヤンチャな子もいてね。扉に呪をかけて、危険なものを通さないようにはしているが、何かあった時には対処出来るよう、私が管理しているんだよ。気性の荒いタイプは、その気がないとしても加減知らずだから」
そう言って、結月さんは困り顔でため息を吐く。
……不安だ。俺、やばい所に居候しちゃったんじゃないか?
結月さんはビビる俺に気が付いたのか、にっこりと微笑んだ。
「安心して。私が責任を持って君を守るから。その小鬼のように、人に好意を抱いて寄り添いたいと思う妖怪はたくさんいる。蒼真君にはここで、そういった妖怪を知っていってもらいたいんだよ」
普通に無難に生活したい俺は、遠慮したい気持ちでいっぱいだ。しかし、封印が解けた俺にとって、結月さんの助けを借りる以外の選択肢はなさそうだった。
「……おはようございます」
次の日、俺が居間の障子をそーっと開けると、結月さんが焼き鮭の載ったお皿を食卓に並べていた。
「おはよう、蒼真君。今起こしに行こうと思っていたんだよ」
そう言ってにっこり笑うので、俺は部屋に入って頭を下げる。
「すみません、寝坊して。朝ご飯作らなきゃいけなかったのに」
居候の条件には食事を作ることも含まれていたのに、起きたら八時を過ぎていた。今日が学校じゃなくて、本当に良かった。
すると結月さんは、お味噌汁を置きながら言う。
「絶対作らなきゃいけないことはないよ。居候の条件は、あくまで君を預かる口実みたいなものだ。私は不規則な生活だが、作れる時は作るよ。蒼真君は学生なんだから、まず学業を優先して」
何て優しいお言葉。けれど、家賃や食費や光熱費をも免除してもらっている身としては、結月さんに甘えすぎてはいけない。明日からは気を引き締めて朝食を作ろうと、固く決心をする。
俺は感謝の意味を込めてもう一度頭を下げ、結月さんの手伝いを始めた。
「昨日、よく眠れなかったのかな?」
心配そうにチラリと視線を向けられ、俺はその問いを否定出来なかった。
あれから部屋に帰って寝ようと思っても、色々なことが頭をよぎって眠れなかったのだ。聞いた話があまりに突拍子もなさすぎて、今朝起きた時も全部夢だったのではないかと思ったほどだ。
「やっぱり……、夢じゃないんですよね。昨晩の妖怪の話」
「まぁ、そうだね。そこに証拠もいるし」
結月さんに言われて食卓を見ると、小鬼が箸を抱えて歩いていた。どうやら朝食の準備の手伝いをしているらしい。長い箸を運ぶのはバランスをとるのが難しいのか、その足取りは見ていて危なっかしい。
箸置きまで運んだ小鬼の頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をする。
夢であったら良かったが、実際にこうして見て触れるのだから否定も出来ない。
「ですよね」
息を吐くと、結月さんは小さく笑って席に座った。
「とりあえず、朝食にしよう」
「あ、はい。いただきます」
慌てて席に着いた俺は、パンッと手を合わせる。
結月さんの作ってくれた朝食は和食で、ご飯にほうれん草と油揚げのお味噌汁、おかずは塩鮭に納豆にお漬物といった内容だった。シンプルだけど、どれも美味しそうだ。俺も朝はご飯派だから、こういった朝食は嬉しい。
これが夢オチってことはないよな?
試しに頬をつねってみるが、普通に痛かった。
「夢じゃない」
俺はへなへなとしゃがみ込む。
正直、夢オチの方が良かった。だって、こんなことを他の人に話したら、頭を心配されるレベルだろ。
しゃがんだ俺に小鬼が近寄って来て、心配そうに見上げる。
「あ、いや、別に体調悪くなったわけじゃないから。大丈夫だよ」
俺が言うと、小鬼は「なら良かった」と言わんばかりにコクリと頷いた。
……俺は今、妖怪と意思疎通が出来ている。
頭の痛い事態だが、とりあえず小鬼に質問してみた。
「えっと、さっきここまで道案内してくれたのは、君だよね?」
小鬼はコクリと頷く。
「そうなんだ。困ってたから助かったよ。ありがとうね」
そうお礼を言うと、小鬼は照れた様子でもじもじと体を揺する。それから、小鬼は自分と俺を交互に指さし、自分の右手と左手を合わせて握手をした。
俺は首を傾げて、その意味を考える。
「……俺と仲良くしたいってこと?」
自信はなかったがそう推測して言うと、小鬼は嬉しそうに大きく頷いた。
俺はその無邪気な小鬼に笑って、手を差し出す。
「じゃあ、仲良くしよう」
小鬼はにこにこと笑って、俺の指を両手でキュッと掴んだ。
人間の友人を作るのには時間がかかるのに、数分前に出会った妖怪と友達になってしまった。あり得ない状況に、我ながら可笑しくなる。
「君はどこから来たの? このお屋敷に住んでるの?」
そう聞くと、小鬼は小さく首を振った。そして中庭を指さす。
俺は小鬼を抱き上げて、ガラス戸越しに中庭を見る。
「外から来たってこと?」
すると小鬼は首を振って、再度中庭を指さす。それは中庭にある蔵を指していた。
「蔵?」
俺が眉を寄せて尋ねた時、ふと誰かの気配がした。振り返ると、自分のすぐ真後ろに結月さんが立っていた。
「ゆ、結月さ……」
こんなに近くに来ていたのに、足音一つ聞こえなかった。気配もたった今気が付いたくらいだ。
一歩下がった俺の背に、ガラス戸が当たる。結月さんは静かな声で言った。
「蒼真君。こんな夜更けに、ここで何をやっているんだい?」
そう尋ねられ、俺はゴクリと喉を鳴らし慌てて説明する。
「そ、その。約束を破るつもりはなかったんです。トイレに行って、自分の部屋に戻る時に、寝ぼけてこっちまで来ちゃって……」
俺の言い訳に、結月さんは小さな声で「そう」と呟く。
その短い相槌は、いったいどう解釈したらいいのだろうか。落胆してるのか、それとも怒ってるのか……。
「結月さんこそ、どうしてここに?」
「蒼真君の声が聞こえたからね。何かあったのかと思って、駆け付けたんだよ」
あ……そっか、さっき小鬼に驚いた時、大声で叫んだのだった。
そう思った辺りで、今更ながらに手の中の小鬼を抱き込む。
結月さんが妖怪が見える人なのかわからないうちは、隠しておくべきだと思った。
俺はチラリと結月さんの表情を窺う。
「まず段階を踏んで、ちゃんと説明をしてからと思っていたのだけれど……、もう会っちゃったんだね」
結月さんは、俺の手をジッと見つめてそう呟く。
明らかに俺の手の中に、何かがいるとわかっている口ぶりだ。
小鬼は俺の指を押しのけて顔を出すと、結月さんに向かってシュンと頭を下げた。
「蒼真君との接触は、時が来るまで待ちなさいと言ったよね?」
小鬼と視線を合わせ窘める結月さんに、俺は口をポカンと開ける。
見えているどころか、もしかしてこの小鬼と知り合いなのか?
「結月さんは、この小鬼と知り合いなんですか? この小鬼はいったい……」
俺が尋ねると、結月さんは手を挙げて制止のポーズをとった。
「順を追って話すよ。まずは座って、落ち着ける場所に移動しよう。長い話になるからね」
優しく微笑んで、裏屋敷の奥へと歩いて行く。俺は小鬼を抱えたまま、その後をついて行った。
俺が通されたのは、裏屋敷の一室だった。
結月さんが障子を開け、部屋の隅にあった行燈に火をつける。
その部屋は十畳ほどの和室だった。うすぼんやりと明るくなった室内を見回して、この部屋には電灯さえないのだと気付く。真ん中に座卓があって、向かい合う形で座布団が敷いてあった。
結月さんが片方の座布団に座り、視線で促されて俺はもう片方の座布団に腰を下ろす。ついでに手の中の小鬼を机の上に下ろすと、小鬼は俺の前にちょこりと座った。
「蒼真君は、その小さいものは何だと思う?」
「妖怪……ですよね? この小鬼に確認しました」
すると、少し驚いた顔をされたので、途端に自分の答えに自信がなくなった。
「あれ? 違いました?」
「いや、確かにそれは小鬼だよ。異形、妖怪、あやかしと呼ばれるものの類だ。私が驚いたのは、蒼真君が直に確認したことにさ。普通、別世界のものは恐ろしい存在だろう?」
苦笑されて、俺は彼が驚いた理由に納得した。
「はぁ……確かに、初めは少し怖かったですけど。見ていたら、悪そうな生き物に見えなかったので」
そう言って小鬼の頭を撫でる。小鬼は少し照れた顔で、大人しく撫でられていた。結月さんはそんな俺達を微笑ましそうに見つめる。
「さっき私に見つかった時も、小鬼を隠して守っていたものね。君はそういうところが昔と変わらない。とても心の優しい子だ」
そう言って、懐かしそうに笑う。
それは結月さんに遊んでもらった幼い俺と、今の俺を比べて言っているのだろうか。褒めてもらうのはありがたいけれど、記憶にないのでどこか他人の話を聞いているみたいだ。
「褒められても、当時のことは記憶にないのでピンときませんが……」
俺が自嘲気味に言うと、結月さんは真っ直ぐ俺を見据えて言った。
「君は幼少の記憶がないようだけれど、それには理由があるんだよ」
「理由? 俺の記憶に?」
ただ記憶力が悪いせいじゃないのか?
俺が眉根を寄せると、結月さんは薄く微笑んだ。
「君は妖怪を見たのを、今日が初めてだと思っているかもしれないが、実は小さい頃も妖怪が見えていたんだ」
「え! じゃあ、俺はもともとそういったものが見える性質だったってことですか?」
衝撃の話に俺は目を見開き、動揺して視線を彷徨わせる。
「で……でも、今までおかしなものを見たという記憶はないですけど……」
地味で平凡な人生を歩んできた俺としては、にわかには信じがたい話だ。
小鬼という物的証拠が目の前にあるので、妖怪の存在まで否定するつもりはないが、自分にそんな力があると言われても実感がわかない。
結月さんは俺を落ち着かせるためか、優しく静かな声で言った。
「見えていなかったのは当然だよ。君の目を……異形のものを見る力を、ずっと封印していたからね」
封印って……、小説や映画に出てくるあの封印?
「どうして封印を?」
俺が首を傾げると、結月さんは表情を曇らせた。
「蒼真君が幼かった頃、君は友達に妖怪のことを話したんだ。だけどその子には妖怪が見えなかったから、蒼真君のことを嘘つきだと言った。蒼真君が傷ついたことに妖怪達が怒って、その友達に怪我を負わせてしまったんだ。かすり傷程度で済んだけれど、その友達は怖かったのか、蒼真君を避けるようになってしまった」
「そうなんですか……」
全然覚えてないけど、俺がコミュニケーションが苦手なのって、その辺りのトラウマが残ってるからなのかな。
自分のせいで友人に怪我をさせたって、子供にとっては結構ショックな出来事だ。人との関わり合いに、臆病になってしまったのも頷ける。
「そういった出来事があって、葵さんと相談し、私が君の見える力を封印することにしたんだよ」
「ばあちゃんは、俺が見えることを知っていたんですね。両親も?」
「いや、君のご両親は当時海外に行っていたし、日本に戻った時はすでに力を封印した後だったから、知らないよ。君のおばあさんの葵さんは、蒼真君と同様に妖怪が見える人だった。君の母方の先祖には陰陽師や巫女がいたというから、おそらくその気質が強いんだと思う」
「ばあちゃんも見える人だったんですか? 母方ってことは、母さんも?」
驚いて思わず机を揺らすと、小鬼が小さく浮き上がった。ビックリする小鬼に、俺は「あ、ごめん」と謝る。
いや、だって。あの祖母や天然な母さんにも秘められた力があったのかと、動揺したのだ。一言も聞いたことがなかったし、そんな素振りもなかった。
特に母さんは嘘がつけない性格だから、見えてたら絶対に言いそうなのに。
すると、結月さんは小さく噴き出して首を振った。
「いや、お母さんの藍さんは破魔の力……悪いものを寄せ付けない力は強いようだけど、見ることは出来ないみたいだよ」
破魔の力。そう言われてみれば、母さんには事故に遭ってもかすり傷さえ負わなかった過去がある。それが破魔の力によるものかはわからないが、跳ね返すパワーは強そうだ。
俺は妙に納得して、大きく頷いた。
「俺にも破魔の力があるんですか?」
悪いものを寄せ付けない力があれば、見えていても多少安心出来る。
俺が期待して尋ねると、結月さんは困った顔をした。
「いや、むしろ君は、妖怪を引き寄せる力があるんだ」
「引き寄せる!?」
俺が顔をこわばらせると、結月さんは慌ててフォローする。
「確かに妖怪が寄ってくるのは、人間の蒼真君にとって困ることかもしれないけど、それは悪いばかりの能力ではないんだよ。妖怪に好かれやすいという意味でもある」
俺は机の上の小鬼を見下ろした。小鬼は机に載せていた俺の手に、キュッと抱きついていた。その様子からは、俺に対する好意が感じられる。
嫌われるよりは、好かれた方が良いけれど……。
そのまま小鬼をあやしていた俺は、ふと疑問が浮かんだ。
「って、あれ? 封印されたのに、何で今は小鬼が見えているんですか?」
尋ねると、結月さんは静かに息を吐く。
「その封印は、十五歳くらいまでのもの。誕生日きっかりに解けるとは思わなかったが、すでにその封印は、解けてしまっている」
俺はあやしていた手をピタリと止め、結月さんへと視線を上げた。
「……今の俺は、見える力も引き寄せる力も解放状態ってことですか?」
「まぁ、そうなるね」
結月さんに肯定され、俺は愕然とする。
え、つまりこれから、妖怪が見える生活がはじまるということか?
他人が見えないものを見えると言って回るほど、子供ではないけど。
妖怪に反応した姿や、話す姿を見られたりしたら、かなり怪しい奴だと思われるよな。
小鬼は可愛いが、恐ろしい妖怪だっているだろうし……。
そんな引き寄せ体質では、普通の生活は見込めないのではないだろうか。
「あ、あの……もう一回封印することって、出来ないんですか?」
俺がおそるおそる尋ねると、彼は困り顔で深いため息を吐いた。
「十年程度であれば、出来なくはないよ。だけど前回の封印の後、君の記憶に支障が出ている。記憶喪失が、封印によるものだとすると……」
「また記憶を喪失する可能性が、あるってことですか?」
小さく頷く結月さんを見て、俺は頭を抱える。
であるなら、再度の封印は出来ない。
子供の時の記憶喪失と、今の段階での記憶喪失じゃレベルが違う。小・中・高の人間関係や、受験で詰め込んできた知識だってある。
その中には思い出したくない黒歴史もあるけれど、都合よく悪い記憶だけを消すなんて出来ないだろう。
だいたいそんな思いまでして封印したとしても、十年経ったらまた記憶喪失だろ? 失うものが大きすぎる。
「君をここに居候させようと思ったのも、そろそろ封印が解けると思ったからなんだ。ここなら、何かあっても私が手助けすることが出来る。それに、妖怪との付き合い方も知ってもらえると思ってね」
「付き合い方……ですか」
とんでもないことになってきた。よもや、妖怪と付き合う方法を学ぶ日がこようとは……。
「正直、自信ないんですが……」
俺が躊躇いがちに言うと、結月さんはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫だよ。段階をふんで教えていこうと思っているし、蒼真君は妖怪達と仲が良かったんだから」
……妖怪達と仲良く。それって封印前の話ですよね? というか、俺ってどんな幼少時代を送っていたんだ。
俺は顔を少し引きつらせて、結月さんから小鬼へと視線を向けた。
小鬼は俺と目が合って、キョトンと首を傾げる。その姿は、とても可愛かった。
そりゃ、こんな妖怪ばかりだったら、俺だって仲良くしていきたいけどさ。
それにしても……と、俺は結月さんに視線を戻した。
「結月さんって何者なんですか?」
妖怪が見えるし、妖怪達との付き合い方を知っていて、尚且つ封印する術も使えるなんて、ただの人間とは思えない。
答えを待ってジーッと見つめる俺に、結月さんは薄く微笑んだ。
「私が何者か、蒼真君は知っているよ。今は忘れているかもしれないけどね。封印が解けた今、昔のことも少しずつ思い出すはずだ」
「…………つまり、今は教えてくれないってことですか?」
「私のことを思い出して欲しいからね」
そう言って軽くウィンクする結月さんは、美形も相まって嫌味なくらい様になっていた。普通の人がやったら、きっと気障すぎてドン引かれるだろう。
「じゃあ、あの中庭の蔵はなんですか? 小鬼が、あそこから来たみたいなことを教えてくれたんですけど」
そう言って、俺は中庭の方向を指さす。結月さんはそちらに目を向けて言う。
「あれは、あやかし蔵だよ」
「あやかし蔵?」
名前からして、怪しげな。
「表向きは蔵だが、重要なのは蔵の扉でね。あの扉を通じて、妖怪や異形の者などが行き来するんだよ」
「じょ……冗談ですよね?」
思わず笑ってしまった俺に、結月さんは視線を戻した。結月さんの瞳は、至極真面目なものだった。
「もちろん冗談じゃないよ。古の時代から、人の世とあやかしの世は表裏一体。人の恐れ、嘆き、憎しみ、怒り、楽しみ、喜び、驚き……様々な感情とともに、異形のものは生まれてきた。それは今の世も同じことだ。彼らは名を変え、姿を変えて、いつの時代も人の傍にいる」
「それが……蔵の扉から出入りするんですか?」
俺が息を呑むと、結月さんは静かに頷いた。
「そう。扉は日本各地に大小あるが、あの蔵は出入り口の中でも古く、重要な扉だ。私が管理をしている」
「扉を管理?」
聞き返す俺に、結月さんは小鬼を一瞥して言う。
「そこにいる小鬼などは、取り立てて害はない妖怪だ。けれど、たまにヤンチャな子もいてね。扉に呪をかけて、危険なものを通さないようにはしているが、何かあった時には対処出来るよう、私が管理しているんだよ。気性の荒いタイプは、その気がないとしても加減知らずだから」
そう言って、結月さんは困り顔でため息を吐く。
……不安だ。俺、やばい所に居候しちゃったんじゃないか?
結月さんはビビる俺に気が付いたのか、にっこりと微笑んだ。
「安心して。私が責任を持って君を守るから。その小鬼のように、人に好意を抱いて寄り添いたいと思う妖怪はたくさんいる。蒼真君にはここで、そういった妖怪を知っていってもらいたいんだよ」
普通に無難に生活したい俺は、遠慮したい気持ちでいっぱいだ。しかし、封印が解けた俺にとって、結月さんの助けを借りる以外の選択肢はなさそうだった。
「……おはようございます」
次の日、俺が居間の障子をそーっと開けると、結月さんが焼き鮭の載ったお皿を食卓に並べていた。
「おはよう、蒼真君。今起こしに行こうと思っていたんだよ」
そう言ってにっこり笑うので、俺は部屋に入って頭を下げる。
「すみません、寝坊して。朝ご飯作らなきゃいけなかったのに」
居候の条件には食事を作ることも含まれていたのに、起きたら八時を過ぎていた。今日が学校じゃなくて、本当に良かった。
すると結月さんは、お味噌汁を置きながら言う。
「絶対作らなきゃいけないことはないよ。居候の条件は、あくまで君を預かる口実みたいなものだ。私は不規則な生活だが、作れる時は作るよ。蒼真君は学生なんだから、まず学業を優先して」
何て優しいお言葉。けれど、家賃や食費や光熱費をも免除してもらっている身としては、結月さんに甘えすぎてはいけない。明日からは気を引き締めて朝食を作ろうと、固く決心をする。
俺は感謝の意味を込めてもう一度頭を下げ、結月さんの手伝いを始めた。
「昨日、よく眠れなかったのかな?」
心配そうにチラリと視線を向けられ、俺はその問いを否定出来なかった。
あれから部屋に帰って寝ようと思っても、色々なことが頭をよぎって眠れなかったのだ。聞いた話があまりに突拍子もなさすぎて、今朝起きた時も全部夢だったのではないかと思ったほどだ。
「やっぱり……、夢じゃないんですよね。昨晩の妖怪の話」
「まぁ、そうだね。そこに証拠もいるし」
結月さんに言われて食卓を見ると、小鬼が箸を抱えて歩いていた。どうやら朝食の準備の手伝いをしているらしい。長い箸を運ぶのはバランスをとるのが難しいのか、その足取りは見ていて危なっかしい。
箸置きまで運んだ小鬼の頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をする。
夢であったら良かったが、実際にこうして見て触れるのだから否定も出来ない。
「ですよね」
息を吐くと、結月さんは小さく笑って席に座った。
「とりあえず、朝食にしよう」
「あ、はい。いただきます」
慌てて席に着いた俺は、パンッと手を合わせる。
結月さんの作ってくれた朝食は和食で、ご飯にほうれん草と油揚げのお味噌汁、おかずは塩鮭に納豆にお漬物といった内容だった。シンプルだけど、どれも美味しそうだ。俺も朝はご飯派だから、こういった朝食は嬉しい。
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